KVC Tokyo  やり直し硬派英語塾

英語長文読解 短期集中 個別指導 

                             




塾長コラム記事




英語塾開設のご挨拶

2019年4月1日
















 塾長のコラム (随時掲載版)

2020年1月〜6月分 (テキストのみ)



*時系列でそのまま上に追記しています。 

*PCサイトの、塾長コラム一覧リストより、フルバージョンの記事にアクセス出来ます。どうぞご覧ください。

* ソフトのバグに拠り、単語同士がくっついてしまう問題が発生しています。フルバージョンの記事をご参照ください。








思考連結詞@



2020年6月20日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 思考の流れをつなぐ表現の内の接続詞としての機能を持つ言葉について扱います。

 文章と文章とを円滑に、段差無く繋ぐ為の言葉として、1987年に Deborah Schiffrin 女史が Discourse markers 談話標識なる概念を提出しましたが、これは言語学と社会学との学際的な考究に立つものでした。その後に、より言語学に近い立場の考究が他の者らにより引き継がれて来ていますが、本コラムではその様な一群の言葉のなかでも特に明確な意思の方向付けを示す言葉を思考連結詞の名の下に扱う事にします。これらは後ろの方の文章全体に掛かる独立した性格の強い一種の副詞的接続詞とも言えるでしょう。日本語でも、<従って、ところで、そんな塩梅で、こういう訳で、更に>などの接続句を用いて文章或いはスピーチの流れを相手に対して分かり易く明瞭に或いは円滑なものとすることが出来ます。<次に私が述べることは思考の流れの中で斯く斯く然々となります>、とワンクッション入れる誘導役の表現ですね。適宜この様な言葉を利用する事で、明確性以外にも文章やスピーチを引き締まった緊張感有るものに仕上げることが出来ます。これまで扱った、原因、理由、目的を表す表現も実は思考連結詞と言えます。逆に、この様な言葉を利用せずに文章を続けると意味を把握するために読み手側に余計な負担を掛けると同時に誤解を招く事態にもつながりかねません。木に竹を接いだ様な連続性の悪い文章となってしまいます。数学のような厳密な証明的論考の中で、∴ゆえに、などの記号を用いますが、これも思考連結詞と言えるでしょう。

 女流のエッセイストなどが、文章中からこの様な一種の接続詞を排除することが文章作成の要などと主張しますが、塾長にしてみれば、そんな背骨の通らない文章作成を最初から勧めるから相手に対して明確な意思表示が出来ず、外交関係でも相手に言いくるめられてしまうのだがと反論したくなります。<ええっと>などは省略しても構いませんが、話の筋や展開を明確に示す論理接続語までカットする事は良くありません。その手の文章は「雰囲気」だけの散漫な文章になりがちです。学究生活や文筆生活などを通じて明確且つ informative な和文作成の経験を既に積んだ者は推敲の末に「多すぎる」接続詞を省略しても問題ないとしても、心に思い浮かんだままを作文させる様な、意志薄弱な文学もどきの低レベルの作文を、子供達に書く事を許すと確実に頭が悪くなります明確な論理の思考様式が頭の中に育たないからです。まぁ、大仰に言えば日本の国力低下に繋がります。教員の趣味で児童に綴り方コンクールに応募させる様な意味不明のことは直ちに止めさせた方が良いでしょう。

 優れた文学作品とは、実は明確性を内包しつつ、表現技法を通じて芸術としての新たな精神的境地を読者に誘い得るものです。鴨長明や兼好法師は別格として、凡庸な者が<筆のおもむくまま>に文章をしたためても主張の焦点のぼやけた単なる雑文以上の価値は持たないでしょう。

 英語に於いてもこれは然りで、話の流れの分かり難いダラダラした文章を書いたり話したりするのは良いことではありません。思考の流れに明確性や円滑性を与える表現を知っておくと、英文解釈上また英作文上大きな力となります。何よりも自分の思考活動を見直し、主張内容が深まる大きな利点があります。




思考の流れをつなぐ表現



 思考の流れを円滑にし、また思考の方向性を示すための単語やイディオム(慣用表現)としては、例えば以下のサイトを参照して下さい。


https://dictionary.cambridge.org/ja/topics/language/connecting-words-joining-words-or-phrases-with-similar-or-related-meanings/


Linguistics: connecting words joining words or phrases with similar or related meanings


 詰まりは基本は順接の意味で繋ぐ語ですが、<ええっと>等の、話題をスタートする為の表現も含まれています。


   and and/or anyhow anyroad anyway anyways  consequently ergo hence hereby I mean idiom indeed ipso  facto less let mean moreover much/still less idiom  nay never never mind idiom now now then idiom  OK  so  sure sure enough idiom that is to say ... idiom the thing is idiom thenthere thereby therefore therein  therein  lies idiom thing thus well  what's more idiom  with that idiom


 など多数が挙げられますが、次回から5回に分けて一通り見て行きましょう。<あのぉ、これに対し、にも拘わらず>などの逆説的な接続用語に関しては、後日、<対照概念を表す表現>のコラムにて扱う予定です。


 また特に学術論文等で多用される<論理接続詞>−思考連結詞の中のエッセンス−については後日例文と共に一括してリストアップする予定です。


 これは、transition words 或いは transitions (転換語)と呼称されるもので、


Additive transitions

  情報を付加する表現(付け加え、紹介、参照、類似、明示)

Adversative transitions

  対立、強調、譲歩、却下、代替えの表現

Causal transitions

  原因、結果、目的、影響を示す表現

Sequential transitions

 順序、余談、話題の再開、要約を明示して文章の流れを明確にする表現


 に分類されています(この分類並びに内容自体、まだ検討の余地がある様に塾長は感じています)が、論拠を立ててなにゆえ自分がその様な考えを持つに至ったかを筋道を立て出来るだけ濁り無く明確に示す文章、詰まり論文を執筆の際には大いに役立つと思います。









理由と原因を表す表現D



2020年6月15日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 理由と原因の表現について5回に分けて扱います。第5回目の最終回です。



for the sake of sth/ for sth's sake

=because of, or for the purpose of something  〜のゆえに、〜の為に


cf. on account of , for sth's account が理由を述べるのに対し、こちらは目的、利益の為の意味を強めます。


Let's not disagree for the sake of (= because of) a few  dollars.

 僅か2、3ドルの(得失の)ことで反対するのは止めないか。(ケチケチせずに2,3ドル出せよ。)


Let's say, just for the sake of argument/ for argument's sake (= for the purpose of this  discussion), that  prices rise by three percent this year.

 議論の為に(議論を深めるために、議論のネタとする為に)言わせて貰うが、今年は価格が3%上昇しているのだ。


You're only arguing for the sake of arguing (= because you like arguing).

 君は討論する為に討論しているだけだ (=君は論争するのが好きなだけだ)



・ in order to help or bring advantage to someone  〜を助ける為に、〜を有利にするために

Please do it, for David's sake.

 デイビットのため(を助けるため)にそれをしておくれ。

= Please do it, in order to help David.


Their parents only stayed together for the sake of the children.

 子供たちの為に両親は一緒に過ごしていただけだ。


I hope for both our sakes that you're right!

 我々の互いの助けとなるべく君が正しくあることを望む。




since

=because; as, inasmuch as

誰でも理解出来る明確な理由を提示し、だからそう結論、考察するのは当然だ、との意味合いを持ちます  まぁ、歴然たる理由の提示ですね。


Since we've got a few minutes to wait for the train, let's have a cup of coffee.

 列車まで2、3分あるからコーヒーでも呑もうじゃないか。


I'm afraid I'm not a very good advertisement for the diet since I've actually put on weight!

 悪いが私はダイエットのあまり良い宣伝とはなっていないな。実際体重が増えて仕舞ったし!


She stands a good chance, since only two people are contesting the seat and the other  candidate is very  unpopular.

 彼女は(勝利の)見込みがある。と言うのは、僅か2人が席を巡って競争しているだけでもう一人の方は全然評判が良くないからだ。

= She's likely to win, ...


cf. stand a chance of  〜の見込みがある


I can testify to the foregoing since I was actually present when it happened.

 それが起きたときに私は実際現場に居たので、前言を証明できる。


cf. testify to sth 〜を証言する、証明する

cf. testify that 〜だと証明する、証言する


There's no point hypothesizing about how the accident happened, since we'll never really  know.

 事故が如何にして発生したのかについて仮説化するのは意味が無い、と言うのは我々はこの先も本当のことは何も知らないだろうから。


cf. There is  no point doing sth

〜するのは意味が無い

cf. There is no use doing sth

〜するのは無駄である

It is no use crying over spilt milk. 覆水盆に返らず。


I presume that they're not coming, since they haven't replied to the invitation.

  彼らは来ないだろうと私は推定する。なぜなら招待に返事も寄越してないからだ。




so

=and for that reason; therefore 〜と言うわけで、それゆえ


My knee started hurting so I stopped running.

 膝が痛み始めたので、走るのを止めた。


I was lost so I bought a street map.

 迷子になったので街路地図を買った。


She was ill so I sent her some flowers to cheer her up.

 彼女は病気だったので元気づける為に花を贈った。


I felt a bit chilly so I put on  a jacket.

 少し肌寒かったのでそれでジャケットを羽織った。


*so 以下の文章は時間的に後のことを表しますので、文の先頭には置けません。because, since, as とは文章の主従関係が逆転します


I felt a bit chilly so I put on a  jacket.

= Because I felt a bit chilly, I  put on a jacket.


cf. put on

服を着る

put on one's clothes .

= wear one's clothes


〜のふりをする.

put on an innocent air  無邪気な様子を装う (=本当は無邪気では無い、偽っている)

= pretend to be innocent





cf.  so  that

〜である様なとても〜の状態だ

→とても〜なので〜だ

to such a great degree; very:


He’s so stupid that he’d believe anything you  tell  him.

= He’s stupid to such a great degree that  he’d  believe  anything  you tell him.

 君が彼に話すことを全部信じるだろうほどに彼は愚かです。

*that は関係代名詞であり to such a great degree が省略されたもの、と考えても良いでしょう。

→彼はとても愚かで(愚かなので)君が彼に話すことを全部信じるだろう。


*本来、程度が強いことを表現する文章ですが、理由(原因)と結果を示す様に訳出することも可能です。

*しかしこの so は理由を表す so とは異なることにご注意下さい。


He's so busy that he can't sleep well.

彼は十分に睡眠が取れないほど忙しいです。

→彼は忙しくて十分に睡眠が取れません。

= He's too busy to sleep well.


*この too は more than enough 有りすぎる、を意味する副詞です。

〜するには〜過ぎる

→〜なので〜出来ない


The water was too cold to swim in.

 その水は泳ぐには冷たすぎる。

→その水は冷たすぎて泳げない。


Two hours is too long to wait.

 2時間は待つには長すぎる。

→2時間なんて待てないよ。


cf. enough

*2つの意味があります:

・as much as is necessary; in the amount or to  the  degree  needed:

必要を満たすだけの


Do you have enough money to pay for your  train  fare  and  taxis?

 あなたは鉄道代金とタクシーを支払うお金を持っていますか?


Is this box big enough for all those books?

 この箱はそれらの本が全部入る大きさですか?


・as much as or more than is wanted:

 望む以上の


I've had enough of your excuses (= I want them to  stop).

 君の釈明はもう十分受けたよ(もう止めて欲しい)。





thanks to sb/sth  

idiom

=because of:  〜のお蔭で


Thanks to Sandy, I found this great apartment.

 サンディのお蔭でこの凄いアパートを見つけられた。




for one thing (and for another)   

・used to introduce a reason for something:  1つには〜だから、もう1つは〜だから


"Why won't you come to New York with me?" "For one thing, I don't like flying, and for another, I can't afford  it."

 どうして私と一緒にニューヨークに行かないの?

 理由の一つはとしては飛行機が嫌いだしもう一つはお金がないからさ。




by virtue of  

formal

=because of; as a result of:


cf. virtue は美徳、長所の意味ですが、by virtue of にこの意味は無く、単純に because of  に置き換えられます。


She succeeded by virtue of her tenacity rather than her talent.

 才能と言うよりは、寧ろ粘り強さで彼女は成功した。

≒才能ではなく、粘り強さで彼女は成功した。


cf. A rathet than B ≒ not B but A  BではなくA

 rather は、どちらかと言えば、ではなく〜だ、などの意味の曖昧性を含んでいます。A とB 2つのものをじっくり比較検討した結果、どちらかと言うとBよりAの要素が勝っているとの解釈になりますが、BではなくAであると断言する訳出で支障ないと考えます。この和訳の場合でも、彼女に才能が無いとはどこにも表現はしていません。2つの要素を比べた場合、成功の理由は粘り強さだったと主張しているだけです。この点から「寧ろ」は省略して良いでしょう。




what with   

idiom informal

・used to talk about the reasons for a particular situation, especially a bad or difficult situation:  〜やらで

悪い結果をもたらした原因、理由を示す。口語表現ゆえ formal な文章には使えません。


I'm very tired, what with travelling all day yesterday and having a disturbed night.

 ふぅ〜っ疲れたぜ。昨日は1日旅行したり夜は騒ぎだったりしたからなぁ。




with

・because of or caused by someone or something: 〜の理由で


He winced with pain.

 彼は傷みで顔をしかめた。


I was trembling with fear.

 恐怖でブルブル震えていた。


She's been at home with a bad cold for the past week.

 過去一週間彼女は風邪が悪化して家に籠もっている。


I can't work with all that noise going on.

 このやかましい騒音が続いていて仕事が出来ない。


Hopes were dashed in the war-torn capital with the news that no aid would be arriving that week.

 その週には救援が届かないだろうとのニュースで戦争に引き裂かれた首都に希望は打ち砕かれた。


With exams approaching, it's a good idea to review your class notes.

 試験が近づいているのだから、君が自分の授業ノートを見直すのは良いアイデアだ。

*理由を示す分詞構文ですね。


(What) with all the excitement and confusion, I forgot to say goodbye to her.

 興奮と混乱とで彼女にさようならを言うのを忘れた。


cf. forget to do 忘れて〜しない    (未遂)

   forget doing したことを忘れる (既遂)




 以上5回に分けて理由を表現する語句をリストアップしましたが、いずれもbecause of ,  as a result of などの語で、ニュアンスは消失しますが、書き換え可能です。

 英文の文意を迅速に得るには、例えば  in the  light ofを 〜に照らして、などと訳さずに、〜ゆえに、とさっと脳内変換すると良いでしょう。修辞的な表現に惑わされず、まずは第一に英文の論理構造を読み取ると英文解釈がすっきりと効率的に進みます (これが正直英文解釈のキモであり、或いは同時通訳などにも利用出来るでしょう)ので頭に入れておいて下さい。









理由と原因を表す表現C



2020年6月10日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 理由と原因の表現について5回に分けて扱います。その第4回目です。




in doing

・used to show when doing one thing is the cause of another thing happening:

あることが次のことの原因となることを示す。 〜した結果、次に  〜したがゆえに


In refusing (= because she refused) to work abroad, she missed an excellent job opportunity.

 海外で働くことを拒否したので、彼女は素晴らしい仕事をする機会を失った。


The government banned tobacco advertising and, in doing so (= because of this), contributed  greatly to the nation's health.

 政府はタバコの宣伝を禁止したが、これを行ったがゆえに、国民の健康に多大の貢献をした。





*以下理由を示すthat 節の用法です。


in that (formal)

= because:


This research is important in that it confirms the link  between aggression and alcohol.

 この研究は攻撃性(敵意)と飲酒との間の関連を確かめるものであるがゆえに重要である。



cf. now (that)

・You use now that to give an explanation of a new situation:

 新しい状況を迎えたことの説明を与える。今や〜なので、今や〜と言う次第で


Now that I live only a few blocks from work, I walk to work  and enjoy it.

 今や仕事場から僅か2,3ブロックのところに住んでいるので、徒歩で仕事に出掛けそれを楽しんでいる。


Feeling better now that we're through

 あんたと破局して気分がいいわ。(Linda Ronstadt の You’re  No Good の歌詞の一節)




以下はいずれもフレーズ詰まりは口語表現になります。formal では別の明確な表現を用いて下さい。

*it は漠然たる周囲の状況を表す it と考えるのが妥当でしょう。


it is that

 (今述べた事は)〜と言う理由からです。〜と言う訳です。



it's just that

*自分が言ったことが相手を悩ませるものではないと説明、釈明、提示する時の表現です。


I'm sorry I shouted at you. I didn't mean to. It's just that I was so mad.

 怒鳴ってしまってごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんだ。ついカッとなってしまって。


Your hair is all right; it's just that you need a haircut.

 あなたの髪は大丈夫; ただ、散髪が必要なだけよ。


it's not simply/just that

*〜だけの理由ではない、〜との理由だけでは無い (=他にも理由が有る)


It's not that I didn't want to be with my family.

 家族と一緒にいたくなかったわけではない。


It's not just that a gulf exists in living standards?there's a psychological ravine.

 生活水準に差があるというだけでなく、心理的な谷間がある。




in the light of UK

in light of  US

(idiom)

= because of something  〜のゆえに

= as a result of something: 〜の結果として


In the light of recent incidents, we are asking our customers to take particular care of  their  personal belongings.

最近発生している事件を鑑みて(最近事件が起きているので)、我々は顧客に身の回りの品に特別注意するよう要請しています。


cf. ask someone to do 〜する様に要請する、頼む


In light of problems we're having, we have no choice but to close the business.

 我々の抱えている問題が原因で、我々はビジネスを中止せざるを得ない。




in view of sth (idiom)

・because of a particular thing, or considering a particular fact:

特別な理由ゆえに、特別な事情を考慮すると、特に考慮すると


In view of what you've said, I think we should reconsider our proposed course of action.

 君が言ったことを特に鑑みるに、我々は提案された行動指針を再考した方が良さそうだ。




inasmuch as

・used to introduce a phrase that explains why or how much something described in  another part of the sentence is true:

 文の他の部分に述べられていることが何故に或いはどれほど本当であるかを説明する用法

〜だから、〜である限りは・・・当然だ

 

Inasmuch as you are their commanding officer, you are responsible for the behaviour of  these men.

 君は彼らの指揮官なのだから、彼らの行動に責任があって当然だ。




of

・used to show the cause of something:

 原因、理由を示す of の用法


He died of a heart attack.

 彼は心臓発作で亡くなった。


Penny is frightened of spiders.

 ペニーはクモに驚いている。


I’m tired of all this criticism.

 これだけの批判を受けたことが原因で私は疲れている。

→こんなに批判を受けてしまい嫌気が差している。

→このような批判にはうんざりだ。




out of


I took the jobout of necessitybecause we had no money left.

必要ゆえに職に就いた。なぜならもう一銭もなかったからだ。


You might like to come and see what we're doingout of interest(= because I think you might be interested).

 ひょっとしてあなたが興味を持って我々が何をしているのか見に来てくれるといいのですが。


We didn't publish the details,out of consideration forthe victim's family.

犠牲者の家族を考慮して詳細については出版しなかった。


She decided to call her ex-boyfriendout of curiosity.

 彼女は好奇心から(=どうしているのかと思って)元カレに電話することにした。


He only went to see herout of duty.

 義務感から彼は彼女に会いに行っただけだ。


Justout of interest, how old is your wife?

  ホンの好奇心から聞きますが、奥さんのお歳は幾つですか?


She finished with him and,out of revenge, he told her husband about their affair.

 彼女は彼に別れを告げたが、彼は仕返しに彼女の夫に二人の関係をバラした。

cf. love affair 情事、浮気




owing to

= because of:


The concert has been cancelled owing to lack of interest.

関心が集まらない(興味を引かず集客出来ない)のでそのコンサートは中止されたままです。





over

良くない原因により起こされる、良くないことに関連して、〜を巡り


The women were making a fuss over nothing.

 彼女たちは何でもないことで大騒ぎしていた。


Staff at some air and sea ports are beginning to protest over pay.

 一部の航空・海上港の職員が給与をめぐって抗議を始めている。


They had already begun fighting over her.

 彼女を巡る彼らの争いはすでに始まっていた。





by reason of  (formal)

= because of


He's always asked to these occasions by reason of his position.

地位ゆえに彼はいつもこれらの行事に出るよう頼まれる。


cf. reason to do,  reason for,  for reason 日常的に頻用される表現です

 

I see no reason for us to depart from our usual practice.

 我々がいつもの練習から離れる何らの理由も見えない。


Car exhaust is the main reason for the city's pollution.

 排ガスは都市汚染の主たる原因である。

 

I go to church for weddings but not for any other reason.

  私が教会に行くのは結婚式のためで、他の理由は全く無い。


For some reason the story caught the imagination of the public.

 何らかの理由で、その物語は公衆の心を捉えた。


For this reason, the use of an antagonist is unnecessary.

 このような理由から、拮抗薬の使用は不要である。


cf. capture (catch) the imagination of

 〜の心を捕える


We made this decision purely for financial reasons.

 我々は純粋に財政上の理由からこの決定を行った。



*理由を文章で述べる場合は reason why  〜と言う理由、となります。


 I don't know (the reason) why she left school..

彼女がどうして退学したのか理由が分からない。

= I don't know the reason for her withdrawal from school.









理由と原因を表す表現B



2020年6月5日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 理由と原因の表現について5回に分けて扱います。途中、和文英訳のコラムを急遽押し込みましたが、また元に戻します。その第3回目です。




dint

by dint of sth (formal)

・as a result of something  〜の結果


She got what she wanted by dint of pleading and threatening.

 あの女は泣き落としと脅しで欲しいものを手に入れた。





due

due to

= because of

 意図的では無い原因(天候、状況、病気)を示します。


A lot of her unhappiness is due to boredom.

彼女の不幸の多くは倦怠に由来する。


The bus was delayed due to heavy snow.

大雪のためにバスが遅れた。


The game has been cancelled due to adverse weather conditions.

 不都合な天候状態ゆえに試合はキャンセルされました。


The problems might be due to a shortage of disk space

 問題はひょっとするとディスクの空き容量の不足に拠るかもしれません。


Due to computer problems, the checks will be late.

コンピュータートラブルのため会計は遅れます。


He is the first to admit that much of his success is due to his good looks.

 成功の多くは自分がハンサムだからと彼は真っ先に認めた。


cf. Scott was the first man to reach the pole.

 スコットは極点に到達した最初の人間だった。

  Scott was the last man to reach the pole.

  スコットは全く極点に到達しそうもなかった。

= スコット以外の全人類が極点に到達して彼が最後に到達する。

She had five days off work due to illness.

 病気のため彼女は仕事を5日離れた。


Due to injury, the team captain was forced to withdraw from the match.

 怪我のため、チームの主将はその試合への不参加を余儀なくされた。



cf. due

・expected to happen, arrive, etc. at a particular time:

 特定の時に起きる事が期待される


The next meeting is due to be held in three months' time.

 次の会合は3ヶ月後となっています。


Their first baby is due in January.

 2人の最初の赤ん坊は1月の予定です。


cf.  in due course(formal)

・at a suitable time in the future: 未来の適当な時に、その内


You will receive notification of the results in due course.

 結果の通知はその内届きます。




for fear that/of sth

・because you are worried that a particular thing might happen

 ある特定のことがひょっとして起きるのではないかと心配するゆえに、〜をおそれて


They wouldn't let their cat outside for fear (that) it would get run over.

逃げ出すといけないからとの理由で彼らはネコを外に出そうとはしなかった。


I didn't want to move for fear of waking her up.

彼女を起こすとマズいので動きたくなかった。


I didn't say anything for fear of (= because I was frightened of) offending him.

 彼を立腹させるのを恐れ、私は何も喋らなかった。




for

preposition 前置詞として

= because of  〜のゆえに、〜だから

= as a result of something: 〜の結果として

理由を手短に述べるのに便利な用法です。


I'm feeling all the better for my holiday.

 今日は休暇だからなおさら快適だ。


"How are you?" "Fine, and all the better for seeing you!"

 ご機嫌はどうですか? いいよ。君に会えたからますますいい。


She did 15 years in prison for murder.

 殺人を犯した結果(殺人を犯したゆえに)、彼女は15年刑務所で過ごした。


I don't eat meat for various reasons.

 様々な理由から私は肉食はしません。


I couldn't see for the tears in my eyes.

 涙で目が見えなかった。


He's widely disliked in the company for his arrogance.

 傲慢故に彼は会社で広く嫌われている。


She couldn't talk for coughing (= she was coughing too much to talk).

 咳が出て彼女は話すことが出来なかった。


Scotland is famous for its spectacular countryside.

 スコットランドは壮大な田園風景で有名だ。


He's best remembered for his novels.

 彼は執筆した小説のお蔭で良く名が知られている。



conjunction

(理由、根拠の従属節を付け加える)接続詞 として

= seeing that; since 

Introducing a detailed proof 詳細な根拠を付け加える

= This is because 〜

(前に述べたことの理由、根拠を示す) と言うのは〜だからだ、〜と言うことを鑑みると


This is no party question, for it touches us not as Liberals or Conservatives, but as citizens.

 これは党派的な問題では全然無い。と言うのは、それは自由党員とか保守党員としてでは無く市民としての我々に関与する問題だからである。


*過去の大学入試問題の英文を見て怪訝に感じたのですが、前文を受け、新たな単独の理由文を立てて For --. と言うのは〜だからだ、とする例は通常の英文では見ません。理由を表す従属節を単独の文章として使う事は破格(なぜですかの疑問文に答える場合は別)であることに加え、for は前置詞としても多様な意味を持ちますので、意味が取りにくくなります。新たな文で前文内容の理由を述べたいのであれば、This is because 〜これは〜だからだ、In  other words 換言すれば、That is (to say) 即ち、などの明確な記述をすべきでしょうね。入試問題だからと言ってまともな英文である保証はありません。




from

不幸、幸福になった原因、理由を示す。


He was rushed to hospital but died from his injuries.

彼は病院に担ぎ込まれたが怪我が元で死んだ。


She made her money from investing in property.

彼女は資産(不動産)に投資して金を稼いだ。


He made a fortune from sales of the book.

彼はその本が売れて財を成した。


You could tell she wasn't lying from the fear in her voice.

その怖がっている口調から彼女が嘘を言ってないことが君は見分けられただろう。


cf. can tell that or sth 〜と言う事が分かる、見分けられる


Wearing the correct type of clothing will reduce the risk from radiation

正しいタイプの被服を着用すれば放射線被爆を低下出来るだろう。


The number of deaths from road accidents continues to rise.

交通事故が原因の死者数が増大し続けている。








入試和文英訳D 2020東北大学




2020年5月20日  (動詞 claim について 20200923 に加筆)


 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 和文英訳の問題を<解読>してみよう、のコラムの第5回目です。

 入試英文添削の時と同じく、完成形?に至る塾長の考え、迷いなど思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。

以下参考サイト:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/


誰もまだ到達したことのない未知の世界を究めてみたい、美術、音楽などの芸術の世界から芸能の世界まで、そんな純粋な要求が文化を支えている。サイエンティストと呼ばれる一群の人々は、この知の限界に挑戦することを楽しむ人々である。その成果だけではなく、知の限界への挑戦のプロセスそのものを含めて、それが「文化」なのだ。「文化」には役に立つ、立たないの区別は意味を持たない。

 (東北大2020年前期 )




和訳の基本戦略】


*サラリと書かれた感じの一見伸びやかに見える日本語であり、平易な表記ながらも知性が感じられます。但し、各々の文章内容の連続性が悪く、次の文章に行く度に思考の相転移が起き、ぶっきらぼうな雰囲気も多少覚えます。これはのちに触れますが、階調 gradation の伴わない、悉無的表現、断定が続く硬い文章だからです。


*美術などの「世界」に於いて誰も到達したことの無い「世界」を究めるならば、それは自分たちが所属する「世界」とは別の「世界」となります。ここでは自分たちが属する世界の中で到達したことのない領域に踏み込みたい、到達したいとのことでしょう。この様に、煮詰まっていない記述が含まれています。まぁ、感覚的には言いたいことが分かるものの、細部を詰めるとほころびが出る文章ですね。推敲の不足するエッセーですが、この様な思いつくままに述べる内容でしたら1日に原稿用紙数十枚はサラリと書けるだうと想像もします。但し、この程度では後世の人達からは忘れ去られるでしょう。


*エッセー風の和文によく見られる事象ですが、日本語固有の通りの良いエエカッコシ文化人用語が配列され、持論が展開されるのですが、吟味すると正確には何を表現したいのかの曖昧性を含み、雰囲気で他人を引きずって行こうとのレベルのものが多いと感じます。この意味で<解読>に難儀するゆえ、この様なレベルのエッセー或いは評論もどきが、和文英訳の問題に好んで多用されるのでは、と思います。


*主張する内容は月並みで新奇性novelty は有りません。逆に言えば、その様な月並みな主張のパターンを、英文解釈であれ和文英訳であれ一定程度頭の中にインプットすれば受験はスイスイ行けそうです。

 塾長のコラム 2019年9月15日  『lost in translation 』  

 https://www.kensvetblog.net/column/201909/20190915/

で触れましたが、上田敏の訳詩に際しての覚悟の様な高度な技能は求められません。所詮は入試問題なのですから。実力のある方はセンスの良い受験参考書を入手して自己演習に励めば相当の実力は涵養出来ると想います。基本、勉学にはゼニを掛けずに頭そのものを使え、です。


*和訳出来る箇所からさっさか直訳風に作成し、仕上がった荒削りな文章に、試験の時間配分を考えながらせっせと鉋掛けし語句の断片を糊付けする方針で行きましょうか。得点/時間のコストパーフォーマンスを考える事が入試では大切です。




【和文の大意】


*<芸術、芸能、科学の分野を問わず、非功利主義的に自分が興味を抱く未知の分野を究めたいとの欲求が文化を形作る。





【英語化し易い和文への変換】


*英語風な表現に変換すると


「美術、音楽などの芸術や芸事の世界に於いて、誰もまだ到達したことのない領域を追い求めたいとの純粋な欲求がそれらの文化を支えている。実は科学者と呼ばれる一群の人々も知の世界の限界を追及することを楽しむ人々である。科学的成果を得ることだけでなく、知の限界を追い求める過程そのものが科学の文化を形作る。そこでは実用的かそうでないかは問題にならない。」





【英文化の要点】


 おさらいとなりますが、


*大意を掴んだ平易な英文をまず作り、今度は日本語の文意に正確に近づけるべく、英語の表現を練っていきます。


流れとしては、


 @和文の修辞、日本語固有の表現をはぎ取り論理的且つ平易な文章に直す

 A自分の知っている平易な英語にさっとひとまず英訳(これでそこそこの配点は得られる)

 B和文原文のもつ意味合いに修整、推敲(時間的余裕があれば)


 となります。




【塾長の解答1】


In the worlds of fine art, music, and  performing  arts,  the pure desire to explore the area where no one has ever reached  helps maintain their culture. A group  of  people  called  scientists also enjoy pursuing the limit of the world of knowledge.  The  scientific results they obtained  and  the  process  of pursuing this limit itself constitute the culture of science.Whether  to be useful or not can be out  of  the  question.


「芸術、音楽、芸事の世界に於いて、誰も到達していない領域を探索したいとの純粋な欲求がそれらの文化を支える。科学者と呼ばれる一群の者達もまた、知の世界の限界を追及することを楽しむ。彼らが得た科学的成果と、この限界を追い求める過程そのものが、科学の文化を構成する。役に立つ立たないは問題外となり得る。」




*日本語の言葉通りに和訳してみました。ややごてごてした英文になりました!


*from A to B で、AをスタートとしてBに至る場所、時間の範囲等を表す副詞句(動詞を修飾する句)として機能し得ます。

 例えば、The train runs from Tokyo to Osaka. その列車は東京から大阪まで走る。


しかし上記表現のケースでは、時間要素 A から B まで、from  cradle  to grave 揺りかごから墓場まで、或いは場所要素 from Tokyo to Kyoto を扱うのではなく、芸術、芸事などの対等な種目(本質的に序列は無く、どこが始まりでどこが終わりかもない)について述べる訳ですから、 日本語そのままを受けて from toで括るのもどうかと言うところです。芸術関係の分野を網羅したいとの意味と思いますが、単に科目を並べるだけで良い様に思います。勿論、純粋芸術から大衆芸能まで、との序列を強調したいのであれば、In the  worlds  of  from  fine art, music and to  performing arts と表現出来ます。


*In the world of art including fine art, music,  and  performing arts  美術、音楽、芸事を含めた芸術の世界では、としても良いでしょう。including を  such   as 〜と言った、に置き換えてもOKです。



*<誰も到達した者のいない未知の世界を追い求める>、ですが、到達して居なければ未知ですので冗語表現です。そこで<未知>を削り、<誰も到達していない領域を探索する>とします。


*日本語で頻用される<世界を追い求める>、の表現は意味不明です。<私は日本在住ですが日本を追い求めたい>とは言わず<私は日本在住ですがまだ行っていない日本の地方を探訪したい>の正確な表現から考えて下さい。そこで、その世界の中の未知の領域を探索する、に置き換えます。限界を追い求める、との表現はまぁ OKでしょう。


*<限界に挑戦する、挑む>も頻用される日本語表現ですが、オレの方が強い、正しいはずだと敵に挑んで相手を制圧しなぎ倒そうとするのが<挑戦>ですので、限界を相手に戦うとの用法は適当ではありませんし、to  challenge  the limit と英語に直訳すると、限界をなぎ倒したい、となり意味不明となります。日本語では雰囲気的に多用される言葉 challenge ですが、典型的な<躍る日本語>表現と感じます。challenge  を利用する時にはその前に<対象がなぎ倒すべき相手かどうか>一度考えて下さい。この相手は勿論既成概念でも自分の心の殻でも構いません。それを打ち破りたいとの気持があれば challenge は使えます。




cf. challenge:  n 挑戦、挑戦すべき課題、挑戦したくなる課題、やり甲斐

a challege to humankind  人類に向けた挑戦すべき課題 (人類に対する挑戦ではありません!) 


cf. to challenge   vt.

・なぎ倒そうとする(実際になぎ倒したのか、なぎ倒されたのかは不明)、

 敵、課題にそれを凌駕すべく挑戦する、


・疑義を挟む、異議を唱える

= to call in question, dispute

We disputed the death sentence passed on  his  case.

 我々は彼の裁判に下された死刑判決に疑義を提起した。


・(法律用語) to take formal objection to (a  prospective juror)

 (陪審員候補者が不適切だと)公的に意義を唱える、反対する

 

・(反対意見がある中で)〜と主張する to claim




cf. to claim この動詞も challenge と同様、日本人には理解しにくいですね。

・to state to be true, especially when open to question;  assert or maintain:

 (特に反対、反論がある中で)自分は正しい、〜だと主張する、〜だと自説を維持する


*名詞 claim の意味は、A demand for something  as  due;  an  assertion of a  right to something. 

〜が自分に当然の権利があるとの主張、要求、の意味です。


to lay claim to

= to assert one right to, claim

自分に権利があると主張する、〜が有って(持って、得て)当たり前だと主張する


He claimed he had won the race.

(反対にも拘わらず)彼は自分が競争に勝ったのだと主張した。


 a candidate claiming many supporters.

 自分には多くの支援者が居て当然だと主張する(=選挙運動員を沢山寄越せと要求する)候補者

= a candidate who are asserting that he has  many  supporters as due

  (as due = 当然のものとして)

≒ a candidate who reqires many supporters as due

 立候補するんだから当然運動員を付けてくれと要求する候補者



・to deserve or call for; require

 There are many problems that claim her  attention.

 彼女の注意を必要とする問題が沢山ある。

 (動詞 claim には他にも用法がありますが、後日、<日本人には分かり難い意味の動詞>でコラムを立てたいと考えて居ます)




cf. maintain their cultute  

 support their culture とすると、他の culture ではなくそれらの culture を応援するとの意味にもなります。この場合の<支える>は、凹まないように維持させる、ですので、より明確に maintain としました。他に、raise  their  culture,  develop their cultute 文化を育てる、発展させる、なども可能ですが  maintain     or sustain でよいでしょう。



cf. desire to do  〜したいとの欲求、希望、欲望  ここでは「要求」ではなく「欲求」ですね。

demand は、金銭を要求するなどのシーンで使います。



in fact  それどころか本当は  

≒ as a matter of fact  本当のことを言うと、ぶっちゃげた話

 

similarly は、全く同様に (文全体を修飾する用法)の意味ですので、これは使わない方が良いでしょう。



cf as well:   also  〜もまた 

芸術家連中が誰も到達していない領域を探検したがる、科学者<もまた>知識の限界を追い求める



cf. constitute:  to compose, form 構成する、形作る

B, C and D constitue A          B, C, 及び D は A を構成する

A consists of B, C, and D        A はB, C, 及び D から成る

A is composed of B, C,and D    A はB, C, 及び D から成る (やや硬い表現)



cf. out of the question 問題外だ、問題の外にある、問題として扱われない、相手にされない

 科学者自身が役に立つ立たないかは問題では無いと考えても、資金を出す世間側は何か現実世界に役に立つのかの視線で見ますので、can be として、その様な(=有用性を問題にされない)場合もあり得る、としました。或いは<科学者>を明確に主語に据えて

 where scientists regard it to be  unimportant  whether  to  be  useful or not とする手もあります。


beyond question 疑いなく、確かに、は誤用になります。

be open to  question 疑問へのドアが開かれている→誰でも質問して良い→未解決の問題だ

= the question is not yet solved



cf. whether A or B   A か Bか (ここでは名詞句扱い) 

   whether to do A (or not)      Aすべきか否か  

  whether to do A or to do B   AすべきかBすべきか


To be or not to be: that is the question.

生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ(ハムレットの台詞)  that は前文内容を示します。

=  whether to be or not to be: that is the question.

→ It is a question whether to be or not to be.


cf. https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/f_00076.html

<43種類も存在する「ハムレット」の有名な台詞“To be, or not to be, that is the question.”の日本語訳><訳文を調べ上げ、42種に及ぶパターンを検討した後、翻訳者・劇作家として教授が到達したのが、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」(『新訳ハムレット』角川文庫・2003年)でした。いまではこれが定番となっていますが、実は教授以前にこの表現を使った翻訳は存在しませんでした。>とあります。河合教授以前に「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題か」の訳は無かったと強調していますがそれは果たして大げさに語るべきものなのでしょうか?塾長は2003年以前にも同様な訳は聞いたことが確かにあるのですが。また、カトリックとプロテスタントとの鋭い対立がこの様な精神的緊張を生む背景となっているとの考えですが、日本でも太平記などを目通しすると凄まじいまでの生き死にの場面の記述に圧倒されます(因みに塾長の母方の先祖に関する記述もありました)。英国に於いてもその様な戦乱或いは動乱に明け暮れた時代趨勢も確かにあったでしょう。しかしながら、塾長としては生物学徒として、主人公のハムレットを精神病理学的に捉える論考を矢張り支持します。これは1つには、動乱の世に在っては、carpe diem 今日を掴め、即ち、今が楽しきゃいいだろう、と享楽化する者も一方で現れるからです。




【塾長の解答2】


In each scene of fine art, music,  performing  arts,  and so on,  the pure desire to pursue novelty helps sustain its culture.In  the academic world as well,  scientists  enjoy  exploring their intellectual horizons. Not only obtaining the scientificresults  but also pursuing the limit  itself  forms  the  culture of science. Whether to be practical or not is unimportant  there.


「芸術、音楽、芸能その他のおのおののシーンで、新奇性を追い求めたいとの純粋な欲求がそれらの文化を支える。学問の世界でも同様に、科学者達は自分たちの知の限界を探求することを楽しむ。科学的成果を得ることのみならず限界を追い求めることそのものが、科学の文化を形作る。そこでは現実に役立つ役立たないかは重要では無い。」




*music scene ミュージックシーン、音楽界などと普通に表現されます。world はちょっと大仰かもしれないと考え、scene としてみました。


*<サイエンティストと呼ばれる一群の人々> 実は意味を持たない日本語の修辞です。一群の表現で pure science や medical science など広義の科学の世界に関与する科学者と言いたいのかと受け取れますが、そうすると医学などの応用科学分野では、役に立つことが大切な価値観ですので、あとの文章が矛盾して続かなくなります。単に<科学者たち>と表記すれば良いでしょう。


* enjoy doing 〜することを楽しむ


cf. intellectual horizons :  horizons 複数形で(思考・知識などの)範囲,限界; 視野(of,in)

 

*to enlarge the intellectual horizons 知の水平線を拡大する、と日本語で頻用されますが、<水平線>は拡大など不可能ですので<今見えている領域の限界線、境界線を更に先に押し進める>の意味から、知の<領域>を拡大する、の日本語表記を当てるのが適当でしょう。因みにもともと horizon は境界線の意味です。


https://www.etymonline.com/word/horizon

horizon (n.)

late 14c., orisoun, from Old French orizon (14c.,  Modern  French  horizon), earlier orizonte (13c.), from Latin horizontem (nominative horizon),  from   Greek horizon (kyklos) "bounding (circle),"  from  horizein "bound, limit, divide, separate," from horos "boundary, landmark, marking stones."  The h -  was restored in English 17c. in  imitation  of  Latin.  Old English used eaggemearc ("eye-mark") for "limit of view, horizon." Theapparent  horizon  is distinguished from the celestial or  astronomical  horizon.


 境界線、地面に置いた石の目印、円周、詰まりは自分の土地の限界、境界線から。目で見える限界の境界であれば地平線、水平線となりますね。to enlarge  the intellectual horizons とは知の領域の限界線を拡大して知の領域を拡大するとの意味に他ならず、知の水平線を拡大するとの意味不明の訳を当てては適当では無いでしょう。


cf. the process は不要と考え削除します。


*the limit = the intellectual horizons 知的限界



cf. practical 現実生活に役立つ、実用的だ 

 科学的成果の中には宇宙の進化が分かったとか、テナガザルがどのようにして<ぶら下がり移動>を開始したのか推測した(塾長の本業!)、などが含まれますが、これらは学問的には valuable だろうと思いますが、工業面での発明などと異なり、useful or practical とは世間は認めないでしょう。ここでは useful のままでもOKです。useful to our daly lives 我々の日々の暮らし、人生に役立つ、との意味です。


cf. utilitarianism 功利主義

the ethical doctrine that virtue is based on  utility,  and  that  conduct  should be directed  toward  promoting the greatest happiness of the    greatest number of persons.

役に立つことを美徳の基盤に置き、最大数の者が最大幸福を得られる様に指揮推進する倫理教義。

 (from Random House Webster's Unabridges Dictionary)

   it is beyond utilitarianism.功利主義を超越している、で正しいですが、この哲学用語は思いつかなくて当然です。


*beyond calculating  profit and loss 損得の計算を超えて、だと商行為の方に絞られすぎるでしょう。


cf. not important = umimportant 重要では無い 

 真の意味で実利性が問題とされない科学分野は理学 Science ですが、話が前後しますが、ここではその様な pure science の世界の話だと解釈するしかありません。なんとなれば、工学や医学では自分の研究テーマが如何に現実の役に立ち得るのか、科学研究費補助金を獲得しまた自己のポストを守る為には、常にアピールしなければならないからです。詰まりは人間生活に役に立つ(成果を挙げる)ことが常に鋭く問われる世界です。


*まぁ、儲かることや役に立つ事ばかりを考える(功利主義)のではなく、追い求めることそれ自体が学問芸術の根幹だとの主張です。勿論、得られた成果をアピールして軍資金(=対価ではなく飽くまで寄付金、協賛金の形)を沢山得るに越したことはありませんが。


* there = in the academic world  

  there を、 for them 彼らにとっては、としても良いでしょう。




 和文英訳の問題に接して感じますが、悉無的表現に階調 gradation を添えてまともな日本語をまずモノして欲しいと、注文したくなる様な日本語が多いですね。英文和訳の入試問題のコラムで書いたことですがこれまた見た事も無い奇矯な英文が出たりで、受験生を意図的に誤解に誘導する意地の悪さを含ませているのかと感じもします。こんな按配で塾長も入試英語に接すると正直疲れを覚えることが多いです。奇妙な出題文に対して、まず英−英変換、日−日変換に頭脳パワーを浪費させられるからです。何故低レベルの説教臭い三流評論もどきの内容を、塾長が過去30年一度も見たことも無い様な妙な文章で記述し、受験生側の迷いを生むような真似をするのかと甚だ残念に感じています。パズルを解かせる方針なのでしょうか?しかし語学がパズルであるとすれば哀しい話です。

 今回採り上げた和文英訳の問題で一番伸びやかでそれでいながら受験生の英語力を問う好出題が京都大学のものと感じました。敢えて分かり難い、言語表現として稚拙な問題文を掲げる大学は、出題する英語担当教員(英文科所属?)の精神が時代錯誤的 (anachronic) なのではと塾長は率直に考えます。戦前の旧制高校での教養科目の授業が非常に優れていたと聞きますが、この様な英語の出題傾向は、その中の、排除すべき悪しき因習部分をひょっとして引きずっているものかなどと想像もしています。

 この様な事を考えると、大学入試の英語科目は適宜廃止し、公平性と客観性が担保されればですが、他の英語資格の成績点数で代えるのも合理的かなと思います。

 受験生の方々は入試英語とはこんなものだと割り切って入試をくぐり抜けてしまい、早く大学生になって羽ばたくのが最善です。当塾としても大学生以上の方、社会人の方に対して英語指導を行うことを旨としており、入試英語指導を直接のターゲットにはしていません。



 入試の英作文は相手側が出した課題を上手く和訳する操作に過ぎず、受け身での英文作成ですが、自身がオリジナルな内容を和文で作成しそれを英語に変換しようとする過程で(勿論、最初から英語で執筆し始めるのも OK)、英語の実力が真に自分の血肉となる様に思います。自分が言いたいことが本当に英語で誤解無く十分に表現し得ているか、それが native に大きな違和感なく読んで貰える内容か、などと一語一句から推敲する必要がありますが、それを通じて力が付く訳です。最終的に rewrite  を依頼する native (勿論教養水準の高い相手)との間で、本当は斯く斯く然々のことをこの点で表現したいがより適切な表現はあるかなどと遣り取りすること自体が書き言葉としての英語力を高めてくれます。

 世には受験産業として医学部専門予備校などが沢山有り(学費は年間数百万はザラです)、そこでの英語担当は過去の予備校勤務にて合格実績が豊富な者がより集められているものと推測しますが、相手(大学)が出した問題を受け身的に対応し、入試動向に合わせた知識の切り売りをし、生徒の尻を叩き医学部に送り込むのが職責です。入試までの時間も限られ、また他の科目との兼ね合いもありますので、じっくり英語の本格的な指導を行いたくとも行う事は不可能です。入試動向に照準を合わせ、エッセンスを効率よく指導するのでしょうね。尤も、彼らの努力で希望する学部に押し込んで呉れ、人生への道を開いて呉れますので、明確性の低い授業をダラダラ続ける高校英語教師よりは予備校講師の方が遙かに感謝されるのは事実でしょう。但し、指導を受けて技術的に英語の得点は取れる様になり目出度く大学に入学を果たし得ても、英語に苦手意識を抱いたままの者が日本にごまんと存在するのが現実です。入試英語は一度忘れてしまい、最初から英語をじっくり学び直すべきですが、その様な場は大学にはありません。東大や医学部に入学しようが英語圏で  moderate  scientist と呼称される者 (教養として Nature や Science の内容が読み取れるクラス)が普通に読みこなす英語論文がスラスラ読めませんし、ましてや論文執筆など出来ません。これらは自前で経験を重ねて実力を身に付ける他はなく、例外は除き指導はされません。お困りの方は高度な教養レベルの指導者がコーチする当塾を是非活用戴ければと思います。

 これまで過去5回に亘り、英訳の問題を解き明かしましたが、これらは英文を作成するに際しての推敲過程そのものを例示します。詩歌の翻訳でもありませんので常にこの様な時間を掛けての検討は不必要ですが、塾長の遣り方を参考にじっくり改訂する<入試英語後の>プロセスを一度経験しておくと良いと思います。まぁ精読ならぬ精訳ですね。この様な自分なりの思考過程を身に付けておき、将来ご自身がオリジナルな中身を持った際には、それを世界に向けて意図が正しく伝わる様に発信して下さい。必要は成功の母と言いますが、脂汗、冷や汗を流し、赤っ恥をかきながらでも確実に英語力が身に付くはずです。

 全5回の 2020年入試和文英訳のコラムは今回で終わり、次回からまた、主に大学入学後の方々を対象とする英語表現のコラムに戻ります。









入試和文英訳C 2020大阪大学U



2020年5月15日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 和文英訳の問題を<解読>してみよう、のコラムの第4回目、引き続き阪大の入試問題を紐解きます。

 入試英文添削の時と同じく、完成形?に至る塾長の考え、迷いなど思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。

以下、参考サイト:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/




(B)(イ)

本を読むときも、著者の考えをそのまま無批判に受け入れ、その内容について自分では考えないで他の人に伝えるのでは本を読む意味は有りません。大切なことは、読書を通じて、自分のそれまで持って居た考えや生き方を振り返って吟味し、さらには、自分の生き方を見直すということです。


(ロ)

歴史上の事実について書く事は傲慢なことだ。ペンを持つ人間は、既にすべてが終わっている特権的な場所から、実際には見ていないことをまるで見てきたように書くのだから。


(阪大2020年前期 外国語学部以外)




【和訳の基本戦略】


日本語に特に勿体ぶった修辞語句を加えたり衒学趣味的に漢語を用いたりはしておらず、極めて普通の日本語です。但し、逐語的に英訳すれば奇妙な英文となりますので、最初に行うべき事は、論理的表現且つ平易な日本語に置換する操作となります。


*前回指摘したのと同様、(B)(イ)の最初の文は、頭の内容を整理せずに物事を主張する時の、言わばポッと出しの口語の様な体裁の文章です。どこが主語(主題)でそれに対応する述語がどれなのか、文章の構造がどうなっているのか、その意味内容としては今ひとつ明確性に欠けるところがあります。文章の土台である述語部の<本を読む意味がありません>に対する付帯状況・修飾語 (主題、主語含む) の配列がスマートに整理されておらず混乱している様に見えます。英訳する前に明確性の高い日本語に rewrite しないと訳せません。


日本語では話し手が一番叙述したいカナメの部分が文末に来て、一方英語ではカナメな部分を最初に持ってくる特徴を考え、<逆転法>で英文を作成する割り切りも有効だろうと思います。戦後まもなく出版された英語の教科書の Revised Jack and Betty 用の参考書(塾長の父親が使っていました)では、確か、漢文の返り点を付けるような文章理解の解説が為されていましたが、これには一定の合理性があります。(B)(イ)では<本を読む意味はありません>を英語の文頭で延べ、次いでその内容を順次継ぎ足していくとの単純明快な割り切りでも良いと思います。2番目の方は、<〜は大切です>を英語の文頭に持って来て文章を拵えますが、ここでは日本語の強調表現で、もともと文頭に置かれていますね。


*(B)(ロ)の方ですが、<既にすべてが終わっている特権的な場所から>が意味不明です。<既にすべてが終わっている過去に対し、特権的な立場から>と解釈すべきでしょう。まぁ、推敲の足りない、よく見られる類いの悪文を入試にぶつけて来ましたが、普段から日本語の文章の改訂(これには絶対的な経験量が必要ですのでトシの功が矢張りモノを言います)には手慣れていない若き受験生泣かせの問題とも言えそうです。しかし、傲慢、特権の日本語が躍っています。もっと平易で適切な語の採用を考えたいところです。



(B)(イ)の最初の文をカッコで括ると、


(本を読むとき)も、{(著者の考えをそのまま無批判に受け入れ、その内容について自分では考えない)で他の人に伝える}のでは(本を読む意味は有りません)。


 とでもなりましょうか。まず、頭の中では本を読むときの内容を採り上げようと、<本を読むときも>と第一声を発し、次に言いたいことの内容を述べ、最後にその様なことをしていると読書する意味がなくなります、とまた付け加えるように本音を述べています。第一声で注意を喚起する訳ですが、文章としては<本を読む>が重複しています。

 まぁ、耳から時間的にリニアに聴いて理解する口語では、文章の一番最後に言いたいことのキモが配列する日本語の構造ゆえ、<今はこのテーマで話しています>の主題の提示を言葉を変えながら繰り返して差し挟んでいくことは極めて普通のことであり、活字化する時は重複を消し去ると良いでしょう。文章内での言葉の稚拙な重複は別として、科学論文などて相手に理解が難しいと思われることを記述する場合は、別の文章でくどいぐらいに(表現を変えて)言葉を繰り返して明示性を増す操作を加えますが、これは情報の重畳(ちょうじょう)性と呼び、意図して行うものです。




【和文の大意】


(B)(イ)

*<批判的に読書し、自分の見解を伴い内容を相手に伝えることが大切だ>、<読書を通じて自己の来し方を振り返り人生の軌道修正を行うことが大切だ>ですね。


(B)(ロ)

*<歴史家は、変えることの出来ない、自分が経験もしていない過去を、好きな様に論評する点で傲慢だ>




【英語化し易い和文への変換】


*英語風な表現に変換すると


(B)(イ)

「著者の考えをそのまま批判せずに受け入れたり、内容をそのまま他人に報せるのでは読書の意味は無い。本を読み自分の過去を振り返り、今後の生き方を再考することが大切だ。」


「著者が言うことを批判せずに本を読み、或いは自身でレビューすることなく単に中身について他人に知らせるならば時間の無駄になる。読書を通じて過去にいかに生きたか、未来になにをすべきかを君は再考すべきだ。」


「著者が主張することを批判して読書し、中身を自分なりに批評して他人に伝えることが大切だ。それは、自分の過去を振り返り、将来を考えるのを助けるだろう。」


(B)(ロ)

「歴史について書く事は傲慢だ。なぜなら、動かせない過去、実際には自分が見ていない過去を、まるで見てきたように特権的に書くことだから。」


「歴史家は自分勝手だ。というのは、変えられない、経験し得ない過去の真実をあたかも見てきた様に自由に書くからだ。」


*塾長はワープロを使いながらこのコラムを書いている訳ですが、文章の順序を入れ替えたり語句を品詞変換して移動したりが容易に出来ます。ワープロも利用出来ない受験会場では日本語−日本語変換も楽では無さそうですね。


*前回も述べましたが、阪大の和文英訳は、日本語の交通整理をするのに時間が喰われてしまうと改めて感じます。




【英文化の要点】


 おさらいとなりますが、


*大意を掴んだ平易な英文をまず作り、今度は日本語の文意に正確に近づけるべく、英語の表現を練っていきます。


流れとしては、


 @和文の修辞をはぎ取り論理的且つ平易な文章に直す


 A自分の知っている平易な英語にさっとひとまず英訳(これでそこそこの配点は得られる)


 B和文原文のもつ意味合いに修整、推敲(時間的余裕があれば)


 となります。




【塾長の解答1】


(イ)

You will surely waste time if you read a book without criticizing what the author says or if you only inform others of its contents without  reviewing on your way.  

You must reconsider how you lived in the past and what you should do in the future when reading books.


「もし著者が述べていることを批判することなく本を読んだり、或いはその中身を君自身の遣り方の評価なしで単に他人に報せるだけであるなら、君は確実に時間を無駄にするだろう。過去にどの様な生き方をしたのか、未来に何を為すべきかを、本を読む時に君は再考せねばならない。」



cf. say 書いてある  The  book  says...その本に書いてある


cf. to inform someone of  人に〜のことを知らせる




(ロ)

I think it is arrogant to write about history. That is because to write about history is to deal in a favorite manner with past events that cannot bechanged nor experienced.


「僕は歴史について書く事は傲慢だと思う。なぜなら、歴史について書く事は、変えることの出来ない、また経験することも出来ない過去の出来事をお気に入りの遣り方で扱うことだから。」


cf. deal with 扱う


cf. not A nor B   A でも B でも無い



*arrogant 傲慢な、の単語を思いつかない場合は、selfish 自分本位だ、自分勝手だ、自分のことしか考えない、自分のことばかり優先する、とする手もあります。

 I think the historians are selfish because.... となりますが意味は通じます。


*<特権的>の表現が浮いている様な気がしました。見てきた訳でも変えられる訳でもない過去を好きに解釈して述べるのですから in a favorite manner 気に入った遣り方で、としてみました。freely 自由に、willfully 勝手に、気ままに、でもよいでしょう。


cf. experience は経験の名詞の他、他動詞として経験する、経験を通じて学ぶ、の意味を持ちます。

= to have experience of; meet with; undergo; feel

= to learn by experience.


*deal with を interpret 解釈する、understand 理解する、に置き換えても良いでしょう。



そうすると、以下に書き換えられます:


I think historians are selfish because writing about history is equal to interpreting freely past events that cannot be changed nor experienced.


「僕は歴史家は自分勝手だと思う。なぜなら、歴史について書く事は、変えることの出来ない、また経験することも出来ない過去の出来事を勝手に解釈することに等しいからだ。」




【塾長の解答2】


(イ)

It's no use reading a book without criticizing it or just informing others of its contents without reviewing by yourself. You must reconsider howyou lived in the past and what you will do in the future through reading books.


「批判することなく読書したり、自分で批評せず単に本の中身を他人に知らせたりするのは無駄である。過去にどの様に過ごしたかまた未来に何をするのかを読書を通じて君は再考すべきだ。」


cf. It is no use doing  〜するのは無駄だ、止めた方がいい


cf. do sth by oneself  自分(一人)で〜する。独力で〜する



*〜しないのはけしからん、無駄だ

→〜する事はとても大切だ、  と否定的表現を反転し、肯定文にする手もあります。


すると、


You must read a book critically and inform your friends of its contents with your review. That will surely help you think about how you lived in thepast and what you should do in the future.


 「批判的な遣り方で読書し、また友人には君の批評を伴い中身を伝えねばなりません。そうすると、君が過去にどう過ごしたか、そして今後どう過ごすべきかを考えるのに必ず助けとなるでしょう。」


と、ほぼ中学で習った英語でスッキリ作文が出来てしまいました。


cf. help someone (to) do  人が〜するのを助ける、助けとなる





(ロ)

I regard the historians to be arrogant. Because the truth in the past cannot be changed nor experienced, writing about history as if they haveseen it seems to be their privilege.


「僕は歴史家を傲慢と見倣す。過去の真実は変えることも経験することも出来ないゆえに、歴史についてあたかも彼らがそれを見てきた様に書く事は彼らの特権の様に見える。」


cf. as if あたかも〜の様に 上の場合は as if it was actually  seen の省略型です。


cf. regard Ato be B A を B とみなす

 = regard A as B

 = consider A to be B

 = condider A B


*privilege 特権、の語が頭に出てこないと辛いですね。特権とは上から目線で好きな判断が許される、との事ですから、これも傲慢の表現同様に selfish 自分勝手だ、に置き換えることは可能です。但し、その場合は人間、詰まりは歴史家を主語に持ってくる必要があります。


そうすると、


I consider historians selfish because they freely write about history as if they have seen the truth in the past that cannot be changed norexperienced.


「僕は歴史家を自分勝手と考える。なぜなら彼らは、変えることも経験することも出来ない過去の真実についてあたかも実際に見てきた経験が有るかの様に、自由に歴史について書くからだ。」


*<傲慢>と<特権>の単語を知らずとも書けなくはないということですが、解答1に近い文になりました。




皆さんなりの英文を作成してみて下さい。自分が知っている単語、語句、

構文を用いて書いてみて下さい。1つの問題をじっくり研究し繰り返し

何度も演習を積めばコツが掴めて来る筈です。英文読解と英作文は

表裏一体であり、語彙、構文など含め英語の実力、総合力が如実に

反映される分野だと改めて認識出来るのではないでしょうか。








入試和文英訳B 2020大阪大学T




2020年5月10日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 和文英訳の問題を<解読>してみよう、のコラムの第3回目です。今回と次回の2度に分けて阪大の問題にトライします。

 基本的なアプローチとしては、和文英訳とは与えられた日本語の表現を論理的に考え直し、高校卒業程度の英語のフレーズを利用して易しく置き換える、との操作になります。即ち、実は日本語の出題文の方を添削する作業になります。出題側も、高校卒業程度の語彙レベルでの解答以上のもの、例えば文章の風格など、は期待していませんので、自分の知り得る平易な単語、フレーズ、構文を引っ張り出して兎に角解答を埋めることが大切であり、それでそこそこの点数は取れる筈です。入試英文添削の時と同じく、完成形?に至る塾長の考え、迷いなど思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。

以下、参考サイト:

https://dictionary.cambridge.orgdictionary/english/




(A)

過去の哲学者がどの様な問題に向き合い、どのように考えたかを知る事は、とりもなおさず、私たち自身が、当時の人間と同じような過ちを再び繰り返すことのないよう、高い費用を払って得た教訓を学ばせてもらうという側面があります。


(阪大2020年前期 外国語学部以外)




【和訳の基本戦略】


日本語に特に勿体ぶった修辞語句を加えたり衒学趣味的に漢語を用いたりはしておらず、極めて普通の日本語です。但し、逐語的に英訳すれば奇妙な英文となりますので、最初に行うべき事は、論理的表現且つ平易な日本語に置換する操作となります。


*TVなどで通行人に街頭インタビューしている時に気が付くことですが、頭に思いつくままにダラダラと考えを述べ、次の言葉、語句を追加している内に主題と述語の明確な対応が外れて来てしまう例が頻繁に見受けられます。述語が饅頭の餡だとすると、主題(主語)やその他の要素を順序構わず回りに幾らでも付け足して饅頭の皮として被せて仕上げるのが日本語の特徴でもあり、口語的にはその様な会話の流れであっても最後に<何か適当な>〆の述語を持って来ればすべてヨシとなります。この作法で問題無く相手に通じて相手も納得してしまいます。阿吽の呼吸での曖昧性を許容してしまう言語とも言えそうです。或る意味、日本語は話すのは簡単だと言われる所以です。これを明確性を持つ文章に仕上げる際に教養の差が強く出る言語とも言えそうです。これに関しては、昨年6月15日附の塾長コラム、『主語の概念 A 膠着語と屈折語』 https://www.kensvetblog.net/column/201906/20190615/ の項を是非ご参照下さい。


*上の阪大の和文を見て、これは会話文そのままの発想だ、と感じました。「Aであることを知る事」は、「Bである」ことを学ばせてもらう側面がある、ですが、感覚的には理解出来て思わず頷いてしまいますが、どこが主語(主題)でそれに対応する述語がどれなのか、文章の構造がどうなっているのか、その意味内容としては今ひとつ明確性に欠けるところがあります。まぁ、立派な悪文です。詰まりは、英訳する前に明確性の高い日本語に rewrite しないと訳せません。


(A)の文をカッコで括ると、


{(過去の哲学者がどの様な問題に向き合い、どのように考えた)かを知る事}は、とりもなおさず、{私たち自身が、(当時の人間と同じような過ちを再び繰り返すことのないよう、<彼らが>高い費用を払って得た教訓)を学ばせてもらう}という側面があります。


 とでもなりましょうか。複雑な入れ子構造です。高い費用を払ったのはどうも当時の人々の様ですね。この阪大の問題は日本語を改訂する問題、との比重が非常に高い様に見受けられます。この改訂作業をさっさかこなす、或いは自分の中で把握した大意の通りに英語を仕上げてしまう、のが基本政略となります。




【和文の大意】


*和文が入れ子構造になっており、判ったような分からない様な構造の悪文ですが、簡単に言うならば、


<哲学書を読めば先人と同じ間違いせんための教訓をタダで得られてええで(大阪弁もどき?)>、ですね。




【英語化し易い和文への変換】


*複雑な構造の文章に加え、明確性の低い述語<という側面があります>と表記しています。<脳内日本語−日本語変換>で熱が出そうになります。文意を理解したのちに和文を分解して前後を入れ替えたり繋ぎ換えたりしてみます。


*英語風な表現に変換すると


「過去の哲学者がどの様な問題を扱い、それをどのように考えたかを知るならば(知る時)、当時の人たちが痛みを伴って得た、そして同じ過ちを犯すことから我々を遠ざけて呉れる教訓、を正に得ることが出来る。それは哲学書を読むことのもう一つの利点である。」


「過去の哲学者がどの様な問題を扱い、それをどのように考えたかを知る事には、当時の人たちが痛みを伴い得た、そして同じ過ちを犯すことから我々を遠ざけて呉れる教訓、を我々に与え得る別の利点がある。」


「哲学者が扱った過去のテーマとその考察を調べることに拠り、また我々は1つの教訓を学ぶ為のコストを正に理解出来るし当時の人々が犯したのと同じ過ちを避けることが出来る。」


*<哲学者>は<哲学>としても良いでしょう。





【英文化の要点】


 おさらいとなりますが、


*大意を掴んだ平易な英文をまず作り、今度は日本語の文意に正確に近づけるべく、英語の表現を練っていきます。


流れとしては、


 @和文の修辞をはぎ取り論理的且つ平易な文章に直す


 A自分の知っている平易な英語にさっとひとまず英訳(これでそこそこの配点は得られる)


 B和文原文のもつ意味合いに修整、推敲(時間的余裕があれば)


 となります。


*基本は英語の授業中に出て来たような表現、易しい単語、語句などを上手く利用して英語を組み立てる戦略です。




【塾長の解答1】


When we get to know what kind of subjects  philosophers  of  the past dealt with and how they discussed them, we can obtain the lesson people  of  those days learned with pain. It also  helps  prevent us  from  making the same mistakes as they did. That is the second benefit of reading  philosophy books.


「過去の哲学者がどの様な問題を扱い、それをどのように考えたかを知る時、当時の人たちが痛みを伴って習った教訓を得ることが出来る。それはまた彼らと同じ過ちを犯すことから我々を遠ざけて呉れる。それは哲学書を読むことのもう一つの利点である。」




*単語know は<知っている>状態を意味する言葉であり、言い換えれば、 to be aware of 〜に気づいているの意味です。何かを<知る>との状態変化つまりは動作を示すには、get (come) to know とします。或いは find out でも良いでしょう。

*be aware of を動作化するには get aware of 〜に気づく、とすれば良い訳です。


*哲学の問題は、problem 困りごと、ではなく、考えるべき対象テーマ、主題ですので、subject としました。これは thesis 或いは theme テーマと置き換えても良いと思います。主題についてあれこれ考えることから、discuss を用いています。

 ちなみに、困りごとを解決するのは solve a problem、疑問に答えるのなら answer the question ですね。


*とりもなおさず =正に just にですが、省いても問題無いでしょう。


cf. deal with a subject

 主題を扱う、論じる


cf. prevent sb from sth

 起こらないように防ぐ、妨害する、遠ざける 入試に頻出の表現です。



cf. make a mistake 間違える、間違いを犯す


cf. philosophy 哲学、phil (愛する)+sophy (智慧),  philosopher 哲学者

  thinker 思想家、物事を考える人

  philharmony ハーモニーを愛する、詰まりオケ


 反対語は phobia フォビア (〜嫌い、〜恐怖症)、言葉の末尾に添えます、a school fobia 学校恐怖症


cf. second 別の、もう一つの、第2の  

 名詞 benefit が不可算名詞なので another が利用出来ません。




【塾長の解答2】


Studying what thesis philosophers of the past  dealt  with  and how they discussed them gives us the second benefit of obtaining the lesson  people  of those days gained with pain. It  also h elps  prevent  us from making the same mistakes as they did.


「過去の哲学者がどの様なテーマを扱い、それをどのように考えたかを知る事は、当時の人たちが痛みを伴って得た教訓を得るとの別の利点を我々に与える。それはまた、同じ過ちを犯すことから我々を遠ざけて呉れる。




*読み方としては、英文の順序通りに、「過去の哲学者がどの様なテーマを扱い、それをどのように考えたかを知る事は、教訓となる別の利点を我々に正に与える。その教訓とは、当時の人たちが痛みを伴って得た、そして同じ過ちを犯すことから我々を遠ざけて呉れる教訓だ。」と理解します。


*getting to know とは studying 勉強することで得られる事ですから、studying でも問題ありません。


cf. obtain の意味上の主語は we です。

  obtain = get = gain = acquire 獲得する、手に入れる


*benefit = obtaining... 間の of は前後が等しいこと、同格を示します。of は、まぁ、等号=です。


cf. with pain (精神的)痛みを伴って,   with  difficulty 困難を伴って


*1つの文章にすると、主語自体が長い上に、which 以下の説明記述も長くなり、読み進めるのに息切れがしそうになります。従属節+主節の複文構成或いは細切れの文章の直列にした方が読み易い英文になりそうです。まぁ、文章は長いだけで悪文扱いされる傾向にあります。


次に<〜を知る事>部分を手段の従属節にして英文を作成してみます。




【塾長の解答3】


By studying the theme philosophers discussed  in  the  past,  we also feel the pain when people of those days learned a lesson.   Thus we can  avoid  making the same mistakes as those made by them.


「哲学者が考察した過去のテーマを調べることを通じ、我々はまた当時の人々が1つの教訓を学んだ時の痛みを感じることが出来る。斯くして彼らが犯したのと同じ過ちを避けることが出来る。」




*also の語で<哲学の理解そのものが深まる事に加えて他に>、<側面もある>の意味を持たせます。


cf. avoid doing  〜することを避ける


*真偽を問うべき命題とその考察のセットが有って初めて哲学と呼べますので、単に philosophical  propositions 哲学的命題、としても間違いではない筈です。




【塾長の解答4】


By studying the past propositions philosophers dealt  with,  we  also can deeply understand how people of those days learned a lesson and thus  avoid  making the same mistakes as they did.


「哲学者が扱った過去の命題を調べることを通じ、また我々は当時の人々が如何にして教訓を学んだかを深く理解し、斯くして彼らが犯した同じ過ちを避けることが出来る。」


*設問の和文が意味内容の曖昧性を含むものでしたので、英文も突っ込まれては却ってやぶ蛇とばかりに、そつなくクールに、粛々と書いてしまうのも手です。語数もだいぶ減ってスッキリしました。但し、これもやり過ぎると文の生彩が無くなり能面のようになってしまいますが。




皆さんなりの英文を作成してみて下さい。1つの問題をじっくり研究し

繰り返し何度も演習を積めばコツが掴めて来る筈です。

英文読解と英作文は表裏一体で、語彙、構文など含め

英語の実力、総合力が如実に問われる分野だと

改めて認識出来るのではないでしょうか?









入試和文英訳A 2020京都大学




2020年5月5日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 和文英訳の問題を<解読>してみようとのコラムの2回目です。

 基本的なアプローチとしては、日本語の表現を論理的に考え直し、高校卒業程度の英語のフレーズを利用して易しく置き換える、との操作になります。即ち、実は日本語の出題文の方を添削する作業になります。出題側も、高校卒業程度の語彙レベルでの解答以上のもの、例えば文章の風格など、は期待していませんので、自分の知り得る平易な単語、フレーズ、構文を引っ張り出して兎に角解答を埋めることが大切であり、それでそこそこの点数は取れる筈です。入試英文添削の時と同じく、完成形?に至る塾長の考え、迷いなど思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。


以下コラム作成の参考サイト:

https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/


https://ja.wikipedia.org/wiki/三幕構成

ここの記述が充実していて大変参考になります。


http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/tohohu4.htm

魯迅 『藤野先生』




お金のなかった学生時代にはやっとの思いで手に入れたレコードを擦り切れるまで聴いたものだ。歌のタイトルや歌詞も全部覚えていた。それが今ではネットで買ったきり一度も聴いていないCDやダウンロード作品が山積みになっている。持っているのに気付かず同じ作品をまた買ってしまうことさえある。モノがないからこそ大切にするというのはまさにその通りだと痛感せずにはいられない。

(京大2020年前期、抜粋)




【和訳の基本戦略】


*前回の東大の問題とはだいぶ趣が異なり、日本語に勿体を付ける修辞語句も見られず平易な日常的表現の文章です。自分が知っている、使いこなせる英文表現を利用して大きな語法・文法的間違いの無い和訳に仕上げれば得点出来ると想いますが、英語の基本的表現をしっかりと身に付けているかどうか(実はこれこそ本当の英語力でしょうね)を問われる伸びやかで質の良い設問であると塾長は感じます。


*和文の衣服をはぎ取り、コアを抽出し、それを英文に直し、次いで英語表現の衣服を纏わせ整える、との戦略で進めようにも、最初から裸のむき身の様な天真爛漫な?英文ですね。





【和文の大意】


*キモとなる最後の文章、つまり「モノが手に入らない時代には1つのモノを大切に利用し尽くしたが、モノが容易に手に入る時代ではモノを大切に扱わなくなった」ことをレコード vs.CD or  download music の対比で語ります。まぁ、そこらのオヤヂ (註:塾長含む) がしばしば口にする様な他愛も無い話ですね。魯迅先生を味方に加えれば、大概是物以希為貴罷(おそらく物は稀なるを以って貴しとなす、ということだ)、ですね。


*良くある英文読解の出題文と同様、過去 vs. 現在などの対立概念を、ははぁ〜ん、また出て来たぜ、と鋭く嗅ぎ分けてください。@過去は斯く斯く然々であった、Aしかるに現在は斯く斯く然々だ、B斯くして〜との結論だ、の構成です。芸道の序破急或いは演劇脚本の三幕構成設定  Set-up、対立  Confrontation、解決  Resolution,  SCR)の展開から成ると見抜いてください。


*最初の4文を粛々と素直に和訳し、最後の文章を間違えのないように和訳出来れば高得点は取れそうです。他の設問との時間配分を考えて、さっと手を動かして英文を書き始めてしまう姿勢が大切ではと思います。




【英語化し易い和文への変換】


*<擦り切れるまで聴いた>などの日本語に捕らわれず、<何度も何度も聴いた>の様な同じ意味を持つ易しい表現に置き換えます。


*英語風な表現に変換すると


「貧しかった学生時代にはレコードを何とか買い求めそれらを何度も何度も聴いたものだ。それでレコードの歌のタイトルや歌詞も全部覚えていた。これに対し今では、ネットで買ったが一度も聴いていない CDやダウンロード音楽を沢山持っている。一度買ったことを忘れて同じ音楽をまた買ってしまったことは稀では無い。手になかなか入らないゆえにモノは価値があるのだと強く感じざるを得ない。」


<大切にする>が曖昧表現で、本当にレコードが大切なら時々しか聴かずにおき、キズを付けたりしない様に慎重に扱うのが<大切にする>詰まりは<物理的に丁寧に扱う>ことと思いますが、磨り減るまで聴いていたとのことで、<取り扱いを大切にする>とは意味が違って来ます。聴くべきレコードが無かったのでそれを対象にエネルギーと時間を強く投射した訳で、愛聴した (loved  listening tothe record)、詰まりは中身の情報に価値が有った、価値を認めていた、との意味でしょう。デジタル時代には情報は磨り減らず(但し誤動作などで一瞬で消え去り得ますが)隔世の感が有ります。まぁ、大切だ=価値がある、です。




【英文化の要点】


*大意を掴んだ平易な英文をまず作り、今度は日本語の文意に正確に近づけるべく、英語の表現を練っていきます。


流れとしては、


@和文の修辞をはぎ取り論理的且つ平易な文章に直す


A自分の知っている平易な英語にさっとひとまず英訳(これでそこそこの配点は得られる)


B和文原文のもつ意味合いに修整、推敲(時間的余裕があれば)


 となります。




【塾長の解答1】


In my poor school days, I would manage to buy  records  and  listen to them many times. Thus I memorized all the titles and words of the music  they  had.  For now, I have a lot of  CDs and  downloaded  music  which I once bought through the internet web stores and have never tried. It's  not  rare I get the same piece of music again,  forgetting  having  bought it before. I can't help feeling that things become valuable because we  can  hardly get them.


「貧しかった学生時代には、何とかレコードを買い求め繰り返し聴いたものだった。それでレコードの曲のタイトルや歌詞は全て覚えていた。今や、一度ウェブショップで買ったはいいが一度も聴いていないCDやダウンロード音楽を沢山持っている。前に買ったことを忘れてしまい同じ曲を購入してしまったことは稀では無い。モノとはなかなか手にいれられないゆえに価値が出ることを感じざるを得ない。」


*お気づきかと思いますが、使っている動詞の殆どは、have, get,  listen, buy, feel などの中学レベルで学習する易しい動詞です。


*poor school days は貧しい学生時代だったのか可哀想な学生時代だったのか曖昧な表現ですが、文の後半でなかなかレコードが買えなかったと出てきますので、貧乏だったと理解して貰えるでしょう。


* all the titles and lyrics ですが each tltle and  lyrics でもよいでしょう。 lyrics は1つの曲の歌詞全体を差しますが、この意味では単複同形です。


*thus は formal で硬い言葉ですので、so の方が気軽な表現になりますね。thus の後ろにカンマを付けるべきかは揺れ動きが出るでしょう。



次に動詞を幾つか明確性の高い概念を持つものに換えて書き直すと




【塾長の解答2】


In my poor school days, I would manage to buy  records  and  listen to them repeatedly. So, I memorized each title and lyrics of the music they  contained. In contrast, I now hold a lot of CDs  and  downloaded  music that I once purchased through the web stores but have never tried. It's  not  rare I get the same piece of music again,  forgetting  having  bought it before. I can't help keenly realizing that things become valuable  because we  can hardly obtain them.


「貧しかった学生時代には、何とかレコードを買い求め繰り返し聴いたものだった。それでレコードの曲のタイトルや歌詞はそれぞれ覚えていた。今や逆に、一度ウェブショップで買ったはいいが一度も聴いていないCDやダウンロード音楽を今や沢山持っている。前に買ったことを忘れてしまい同じ曲を購入してしまうことは稀では無い。モノとはなかなか手にいれられないゆえに価値が出ることを鋭く認識せざるを得ない。」



 When I was a student, I didn't have  enough  money.  So  I  bought records with difficulty  and  would listen to them over and over again ....と素直に表現しても勿論良いと思います。

enought とは有り余るほど十分な、の意味はなく、丁度良く十分な、の意味です。not enough  money で水準より下の経済状態にあった、となります。




【塾長の解答3】


 When I was a college student, it was economically  not  easy  for  me to buy music records. I would listen to them repeatedly until they got  worn  out, and thus I memorized each title and  lyrics  of  the  music they contained. In contrast, I now hold a lot of CDs and downloaded music  that I  once  purchased through the web stores  but  have never tried. It's not even rare I get the same piece of music again, forgetting having  bought it  before. I know things are valuable because  of  their  low availability.


「学生の時はレコードを買うのが経済的に容易ではなかった。レコードが擦りきれるまで繰り返し聴いたものだしそれで中身の曲のタイトルと歌詞はどれも覚えていた。現在は対照的に、ウェブショップで求めた沢山のCDやダウンロードした曲があるが、一度も聴いていないものも多い。以前買い求めた経験があることを忘れてしまい同じ曲を再び買うことすら稀ではない。低入手可能性ゆえにモノには価値があるのだ、と本当に知った。」


it was economically not easy for me to buy  music  records

これを

it was not easy for me to afford music records としても良いでしょう。

*afford = have enought money to buy であり、また  economically は buy に対する冗語でもあるからです。




解説


cf. would do 〜良くしたものだ 〜したものだった(過去の習慣を表す)

= was (were) accustomed to  do 〜する習慣があった

= used to  

・Formerly and habitually or repeatedly, but possibly  no  longer  did.

以前に習慣的に或いは繰り返し行ったが、もはや遣っていない(可能性のある) 以前には良くやった


cf. be used to do,  be used to sth  〜に慣れている 習慣だ


I'm not used to cold weather.  僕は寒い天気には慣れていない。

They weren't used to getting up so early. 彼らはそんなに早く起きる習慣ではなかった。



cf.manage to do

 (困難がある中を)何とか〜する、なんとかやり遂げる  (苦労しながらも実際にやり遂げる)


 I managed to catch the last train. なんとか終電に乗れました。

= I was able to catch the last train although  with  difficulty. 困難を伴ったが終電に乗る事ができた。


cf. be worn out

擦り切れてボロになる


cf. in contrast これとは対照的に、鋭い対照性を表す表現ですが、科学論文ではよく利用されます。by contrast も同じ意味ですが in contrast の方が一般的です。


*on the contrary は前言に対する対照性をより強めた表現として使われ、<それどころか、全く逆に>と訳すとピッタリ来ます。前言(否定文であるのが普通です)に対して強く反論する(前言は事実では無い、本当は逆だ、と主張する)場合に多用されますが、勿論自分が述べた前言に対して用いることも出来ます。ここでは前言は過去の真実ですのでそれに反論して現在は〜だとの表現ではありません。と言う次第で、単純に対比として in contrast が良いでしょう。



cf. my CDs  歌手が自分の CDですと差し出す場合も This is  my  CD. となりますが、ここでは当然ながら私が所有するCD の意味です。


cf.not even rare = often  稀ですらない=〜すら稀では無い=しばしばある

rare は uncommon に置換可能です。


cf. forgetting having bought it before

以前既に買ってあった(以前に買った経験が有る)ことを忘れてしまって(理由を示す分詞構文)

= forgetting I have bought it before

= because (as) I forgot  having bought it before

  

forget doing 〜したことを忘れる (既遂)

forget to do 〜しようとするのを忘れる(未遂)


cf. can't help doing

= to not be able to control or  stop something:

 自然に起こる動作や言及、湧いてくる感情を自分では制御したり止めることが出来ない

 〜を禁じ得ない

= cannot controll  (stop)  sth  (doing)

"Stop laughing!" "I can’t help it!"

 笑わないでよ! 止まらないのよ!


*help = stop, controll と考えます。


cf. 過去からの一連のことが、最後の文章詰まりは結論に至った理由になっていることを主張したいのであれば、for those reasons  これらの理由から、こんな訳で 或いは That's why そんな訳で、を冠すると、文章にメリハリが出ます。三幕構成を明確にする作戦です。しかし文章がくどい感じにもなるのでカットしても良いでしょう。


*痛感する、は、強く感じる feel strongly、 深く理解する understand  deeply 、本当に分かっている(=本当に分かった、日本語では過去型表現になります)  really know、本当にそう思う think  really など、自分が知っている表現に置き換えればOKです。まぁ、心中に思い浮かぶことですので、困ったら最後は何でも  think を採用すればそれでパスするでしょう。易しい動詞+易しい副詞のセットに持って行く作戦です。<まさにその通り>=<本当に>、ですが、痛感する、の冗語ですので無視します。


cf. become valuable :  be valuable 価値がある、の動作型 価値が出る、価値を持つようになる、動作の動詞 get に合わせましたが、解答3の場合は be  valuable でもOKです。<得ようとしてもなかなか手に入らないゆえに価値が出る> vs. <モノが入手困難性ゆえに価値がある>、です。


*解答1,2の because  を if や when に変えても通じますが、アピールは弱くなります。


cf. hardly

 困難だ with pain or with difficulty の意味の他に、

 殆ど〜無い、殆ど見込みの無い、辛うじて〜の、日本語での否定の意味を含む語として多用されます。

=almost  not;  barely,  not  at  all,  scarcely,  with  little  likelihood 


 can hardly do で殆ど〜出来ない、なかなか〜出来ない、辛うじて出来る、の意

  (僅かには出来ている)となります。

 I've got lots  of  barely legal photos.  オレはギリギリ合法の写真わんさか持ってんだ。

 have got = have (口語)


cf. availability 手に入り易さ、入手可能性

 available 手許にあって利用出来る、すぐ手に入る

= suitable or ready for use; of use or service  at  hand

= readily obtainable; accessible




皆さんなりの英文を作成してみて下さい。1つの問題をじっくり研究し

繰り返し何度も演習を積めばコツが掴めて来る筈です。


グライダーの操縦と同じで離陸して自分で飛べるようになる

までは教官に手取り足取り指導して貰うと良いでしょう。


英文読解と英作文は表裏一体で、語彙、構文など含め

英語の実力、総合力が如実に問われる分野だと

改めて認識出来るのではないでしょうか?








入試和文英訳@ 2020東京大学




2020年4月20日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 理由を表す英語表現を2回まで掲載しましたが、連休にも入りますので−と言いますかコロナ禍で休校のままのところが多いと思いますが−急遽今春の大学入試和文英訳問題のコラムを割り込ませ5回シリーズで扱う事にします。解き方のコツをじっくり研究して戴こうとの考えからです。英語表現の残り3回分はそのあとで掲載しますね。

 さて、3ヶ月ほど前に大学入試の英文の<添削>を6回シリーズで掲載しました。今度は逆に和文英訳の問題を<解読>してみようと思います。基本的なアプローチとしては、英文和訳の過程と正逆で、日本語の表現を論理的に考え直し、高校卒業程度の英語のフレーズを利用して易しく置き換える、との操作になります。即ち、これは実は日本語の出題文の方を添削する作業にほかなりません。出題側も、高校卒業程度の語彙レベルでの解答以上のもの、例えば文章の風格など、は期待していませんので、自分の知り得る平易な単語、フレーズ、構文を引っ張り出して同じ意味を持つ英文を作成し、兎に角解答欄を埋めることが大切であり、それでそこそこの点数は取れる筈です。入試英文添削の時と同じく、完成形?に至る塾長の考え、迷いなど思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。


以下参考辞書サイト:

https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/




自信ばかりで押し切っては、やがていつかは他人を害する立場に立つ。自分たちは、いつも自分たちの信念がある程度までまゆつばものだということを悟り、かくて初めて寛容の態度を養うことができる。

(東大2020年前期、抜粋)




【和訳の基本戦略】


*<押し切る、立場に立つ、まゆつば、態度を養う>、などの語句は日本語に勿体を付ける修辞ですので、勿論直訳すれば奇妙な英語になります。易しい、自分が知っている表現に置換出来ないかさっと頭を捻ります。しかしごてごてした文章であり、日本語としては悪文ですね。そのアクに翻弄されずにクールに文意を取ることが肝要です。まぁ、それが問われている訳ですが。


*入試英文のコラムで、大した内容でもないことをゴテゴテした英文で表現し、下らぬ中身を勿体を付けて飾り立てて述べるのでは無く、平易な表現で高度な内容を述べるのが大切だ、と強調しましたが、これは日本語の文章にも当然当て嵌まります。


*つまり和文の衣服をはぎ取り、コアを抽出し、それを英文に直し、次いで英語表現の衣服を纏わせ整える、との戦略で進めます。




【和文の大意】


*<立場に立つ>とは、他人を害する側に立つ、他人を害する人間になる、ですから、

単に、他人に害を為す、で良いと思います。


*ばかり、いつも、或る程度まで、眉唾だ、との奇天烈な言葉の並び具合ですが、脳みそが攪乱されぬよう注意して下さい。ばかり、いつも、或る程度まで、は他の言葉に意味を含めてしまい、そのものは略してしまっても良いでしょう。


*この和文に奇妙さを覚えるのは、<ばかり、いつも>などとの悉無 (しつむ all or nothing) 的表現の言葉−感情を強める表現−を多用した暑苦しい文章の中に、一点、<ある程度>なる理性的な階調表現を交えていることです。まぁ、漢語的な堅い表現を使用していることも含め、一定の地頭はあるものの、感情失禁傾向のある、文章書きとしての教養の低い者が書いた、との出題設定でしょうか。この様な、いつも、ばかり、などの言葉は非論理的要素として無視して宜しいでしょう。また余談ですが、日常会話の中で、いつも、絶対、必ず、全て、などの言葉を多用する者が居れば、それは脳神経回路の配線が未熟か或いは老化で硬直化した<危ない>思考の持ち主ですので害を受けない内に離れた方が無難かと塾長は考えます。知性とは本来 gradation 階調を伴うものです。研究者とはその様な頭脳を持ちながら、黒か白かをギリギリまで煮詰めて論文化する者を言います。


*まず、言葉に捕らわれ過ぎずに、この文章で何を主張したいのか、書き手の意図を考えて平易な日本語の候補を思い浮かべてみます。


押せ押せで生きてるとそのうち他人様の迷惑とならぁ。自信なんてものは幻さ。自分の弱さを認めて初めて他人様に優しくなれるってもんさ。」或いは、<自分の考えが正しいと信じ込む事は、他人の別の考え方を無視しその存在を認めないことだ。><自分が完璧では無いと自覚すれば他人の見解も受け入れる事が出来、友達も出来るだろう。>


この様な大意でしょう。第1の文内容を第2の文で逆の視点から展開、説明します。




【英語化し易い和文への変換】


*英語風な表現に変換すると


「自信過剰の態度はやがては他人に害を為すことにつながる。君が自己の信念が幾らか疑わしいものだと認識した時、君は初めて他人を理解出来る様になる」


「自己肯定のみで生きて行くことは、遅かれ早かれ、他者を害することになる。この、自分が正しいとの信念が不確かであると知った時に、初めて他人を許す様になれる。」


*大意を掴んだ平易な英文をまず作り、今度は日本語の文意に正確に近づけるべく、英語の表現を練っていきます。


流れとしては、


 和文の修辞をはぎ取り論理的且つ平易な文章に

→自分の知っている平易な英語にひとまず英訳

→和文原文のもつ意味合いに修整(時間的余裕があれば)


 となります。




【塾長の解答1】


Overestimating yourself sooner or later leads to  cause  damage  to people.

When you realize your belief is not entirely  correct,  you  can  first  understand others.


「あなた自身を高く評価し過ぎると早晩他人を害することに繋がります。あなたが自分の信念が完全には正しいものではないと認識する時、あなたは初めて他人を理解出来るのです。」




cf. overestimate:

to estimate at too high a value, amount, rate, or  the  like

価値、量、比率その他を高く見積り過ぎる、評定し過ぎる


cf. sooner or lator

= at some time in the future, even if you are not  sure  exactly  when

いつかははっきりとは判らないが将来に於いて、早晩、遅かれ早かれ


cf. lead to do 〜することにつながる


cf. cause damage to 〜に害を与える

= do somebody harm = do harm to somebody

〜に害を為す、危害を加える

「害を為す」は具体性に乏しい記述ですが、例えば自信過剰でワンマン化して相手の立場や考えを潰すまでになれば確かに害を与える事にはなりますね。


cf. belief  信念、確信、信頼、信心、信仰


Random House Webster's Unabridged Dictionary では

1.something believed; an opinion or conviction: a belief  that  the earth is flat.

2.confidence in the truth or existence of something not  immediately  susceptible

to  rigorous  proof: a statement unworthy of  belief.

3.confidence; faith; trust: a child's belief in his  parents.

4.a religious tenet or tenets; religious creed or faith:  the  Christian belief.

 と confidence 自信の意味を含んでいます。


或る程度まで眉唾だ

→丸ごと正しいものと言う訳では無い

= not entirely 完全に〜と言う訳では無い(部分否定の意味)


*寛容の態度を養う、をそのまま直訳して

 cultivate a  tolerant attitude とするのはどうかと言うと、


cultivate = to develop or improve by education or  training;  train;  refine

教育や訓練に拠って発達させる、改善する、洗練させる、の意味がありますが、cultivate とは小さな苗を大きく育てるの意味ですので、この表現だと小さな  tolerant attitude があったがそれを大きくする、<more  tolerant  attitude より寛容な態度にする>、との意味になり、<初めて>の表現と矛盾してしまいます。


have a tolerant attitude to

寛大な態度を取る、の表現がありますのでこれを利用しましょう。


*寛大な態度を取る、ことは相手の立場を理解しての話ですから、<寛大>のベースとなる<理解>の表現で大まかに考えても悪くありません。この様に、自分が知らない英語表現が出て来たら、タガを緩めて大まかに似た意味を持つ中学レベルの基本単語に置き換えてしまうのが1つのコツです。それで確実に点が取れます。<寛容の態度を養う>→<理解する>で悪いところは一つもありません。


*巷では100語で英語を全て話せるなどと、あまり知性を感じさせない顔の男性の顔写真が伴う宣伝がしばしば目に入りますが、高度な概念の英語を学んだ者が、例えばラテン語系単語を排除しゲルマン語由来の単語のみで文章を作成するなどにはそれが可能でも、最初から100語しか知らない者が英文を作成すれば児戯に似たりのものとなってしまいます。入試の英作文では、日本語で意味の理解出来る高度な概念を平易な英単語を用いて確実に表現する<言葉の絞り込み操作>が大切で、すぐ上でも触れた様に、普段から言葉の系列、レベルに対する意識がモノを言う筈です。


*日本語特有の言い回しを文字通りに翻訳しようとすると相手側は却って理解出来なくなります。伝えようとしている意味内容を外れること無く訳せればそれが一番の正解となります。文芸や詩歌を翻訳する時には香気まで伝達せんとの工夫と心構えが必要であり、また技術翻訳では意味する詳細を間違いなく正確に伝えることが肝要ですが、入試レベルの誰でも思いつくような内容レベルの文言を字面通りに「正確」に訳す必要はありません。意味内容を伝える文章が作成出来れば点が採れます。


forgive は(自他のものを問わず)悪い対象、悪と考える対象を放免する、許す、の意味ですのでここでは利用出来ません。


tolerant = broad-minded 心が広い、もOKでしょう。


*自信過剰

 overconfidence




【塾長の解答2】


Overconfidence will sooner or later lead to  ignoring  other  people.

When you realize your belief is not entirely correct,  you  can  first have a broad-minded attitude toward others.


「自信過剰は早晩他人を無視することに繋がります。あなたが自分の信念が丸ごと正しいものではないと認識する時、あなたは初めて他人に寛大な態度を取ることが出来るのです。」




ignore を pay little attention to 他人にほとんど注意を払わない、に換えても良いでしょう。この場合、you を主語に書き直す必要が生じます。



【塾長の解答3】


If you are too highly estimating yourself, you  may  be  paying  little attention to others.

When you realize your belief is not entirely  correct,  you  can  first have a broad-minded attitude toward others.  


「君が自身を高く評価しすぎている時は他人にほとんど注意を払っていないかもしれない。自分の信念が丸ごとは正しいものではないと認識する時、君は初めて他人に寛大な態度を取ることが出来るのです。」


 特に動詞についてですが、日本語の言葉尻に捕らわれ、それに逐語的な訳を当てはめると、ズレた英語表現に陥る危険性があります。中学校程度の易しい、語感の理解に間違いの無い動詞を採用し、肩肘張らずに英文を作成すると良いでしょう。




皆さんなりの英文を作成してみて下さい。演習を積めばコツが掴めて来る筈です。









理由と原因を表す表現A



2020年4月15日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 理由と原因の表現について5回に分けて扱います。第2回目です。


because

= for the reason that 〜と言う理由で、〜と言う訳で、〜なので


"Why did you do it?" "Because Carlos told me to".

 なぜそうした? だってカルロスが遣れって言ったからさ。


We can't go to Julia's party because we're going away that weekend.

 その週末には我々は離れる予定なのでジュリアのパーティには行けない。


Where've you been, because (= the reason I am asking is that) we haven't seen  you recently?   (informal)

 お前どこに行ってたんだ?こう聞くのは近頃お前を見てないからさ


He hated being in the army because he had to obey commands.

 命令に従わねばならなかったので彼は軍隊生活を嫌っていた。


The journey was quite quick  because the road was clear.

 道路がガラ空きだったので旅行は極めて素速く進んだ


I didn't tell her that he was late because I didn't want to cause her any alarm.

 彼女の不安を呼び起こしたくは無かったので彼が遅刻したことを言わなかった。


Patients were discharged from hospital because the beds were needed by other  people.

 他の者がベッドを必要としたので患者等は病院から退院させられた。


cf. discharge

to relieve of a charge or load; unload: to discharge a ship.

 荷を下ろす、労役から解放する(=囚人を釈放する)、解放する、放電する


入院する enter (go into、be  admitted to) hospital

退院する leave  (the)  hospital



I almost missed my flight because there was a long queue in the duty-free shop.

 免税店で人が並んで居たのでもう少しで飛行機に乗り遅れるところだった。


cf. almost do 殆ど〜し掛ける、すんでの所で〜しそうだ (実際には行わない)




*because は口語と文章語両者に於いて as, since よりは一般的です。because を用いる時は理由に焦点を当てます


as と since は理由よりも結果により焦点を当てたいときに使います。because よりは、より formal です。主節のあとに since を使う時にはその前にコンマを入れます。


*because の従属節を主節の前に置くときは、その従属節の後ろにコンマを入れます。



because of

=  as a result of  〜の結果として


*cos, cause は because の短縮形ですが会話、電子メール、文書で普通の利用しますが、特に informal な状況で利用します。



Just because, simply  because

理由を強調します。


Just because I'm lending you my dress for tonight doesn't mean you can borrow  it  whenever  you want to.

 今夜私のドレスをあなたに貸しているからと言ってそれはあなたが必要なときにいつでも借りられると言うことではないの。

 (because 以下を名詞として扱う)




behalf

on behalf of

on one's behalf

= for the good of  or  because of  〜のために、〜のためを思って

= for the sake of  〜の爲に、〈利益〉〜のために


Please don't leave on my  behalf.

= Please don't leave for the sake of me.

 後生だから行かないで呉れ。

→あなたが去ってしまうと私が悲しむ、困るなどする訳ですね。


The executive of the health workers' union accepted the proposed pay increase  on behalf of  their members.

 医療従業員組合の長は給与引き上げの提案を組合員の為にと受諾した。


=The executive of the health workers' union accepted the proposed pay increase for  tha sake  of their members.


What a liberty, to refuse the invitation on your behalf, without even asking you!

 尋ねもせずに君の為を思ってと招待を拒否するとは何と勝手なことだろう。

 →この文章からだけでは君が招待する側なのかされる側なのか意味が取れません。


He's spending a lot of his time at the moment campaigning on behalf of the  Conservative Party.

彼はその時には保守党の為にと多くの時間をキャンペーンに費やした。


The company was set up to buy and sell shares on behalf of investors.

 その会社は投資家の利益の為、株の売買行為を共有するために設置された




cf.  on behalf of sb (US also in behalf of sb); (on sb's behalf);

(US also in sb's behalf)

= representing:


on behalf of , on one's behalf は、〜を代表して、〜を代理して、との別の意味を持ちますので、文意に応じてどちらの意味かを判断する必要があります。曖昧性を含んだ表現ですね。


He gave what amounted to an apology on behalf of his company.

 彼は会社の利益の為に(or 会社を代表して)、陳謝に足りる全額を供与した。


cf. amount to 〜に達する、等しい

cf. what = whatever = anything

= He gave anyting that amounted to an apology on behalf of his company.

= He gave all the money that amounted to an apology on behalf of his company.

 


On behalf of the entire company, I would like to thank you for all your work.

 全社を代表し、君のこれまでの全ての仕事に感謝したいと思います。


Unfortunately, George cannot be with us today so I am pleased to accept this  award on his behalf.

生憎とジョージは今日参加出来ず、それでこの賞を彼の代理として喜んで受けます。


cf. award 発音注意、アワード ではなく アウォード です。


She wasn't able to be present, so I signed the letter in her behalf.

彼女は顔を出せませんでしたので彼女の代わりに私が手紙にサインしました。


by right of

= because of


She spoke first, by  right of  her position as director.

指導者としての地位ゆえにまず彼女が発言の口火を切った。




in that case

because of the mentioned  situation: そう言うことなら


There's no coffee left? In that case I'll have tea.

 えっ?もうコーヒーはないの?そう言う訳ならお茶を貰おうか。



(just) in case

because of a possibility of something happening, being needed, etc.:

〜の場合に備えて


I don't think I'll need any money but I'll bring some just in case.

 自分にはこの先お金は全然要らないと思っているけど、何か起こらなとも限らないから幾らかは持って居よう。


Bring a map in case you get  lost.

 迷子になった時に供えて地図を持って行きなさい。

 迷子になると行けないから地図を持って行きなさい。

= Bring a map because of a possibility of  your getting lost.


I'll bring an umbrella in case  it rains.

 雨に供えて傘を持って行く。




courtesy

polite behaviour, or a polite action or remark 礼儀正しい行動、発言


(by) courtesy of

by permission of 〜の許しを得て

Jessie J appears courtesy of  Universal Records.

ジェシージェイはユニバーサルレコード社の許可(好意)で出演する。


because of

He got his black eye courtesy of a bloke he insulted at the bar last night.

昨夜バーで侮辱したヤツのお蔭で彼は青タン喰らったぜ。




 理由を表す英語表現はあと3回ありますが、次回からの5回は、2020年春の大学入試の和文英訳問題解説を挟み、コラムを進めて行きます。









理由と原因を表す表現@



2020年4月10日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 理由と原因の表現について5回シリーズで扱います。



理由や原因の意味を持つ単語やイディオム(慣用表現)としては、


https://dictionary.cambridge.org/ja/topics/language/connecting-words-which-introduce-a-cause-or-reason/

Linguistics: connecting words which introduce a cause or reason

   account, as, at, because, because of, behalf, by right of (idiom), case, cause, cos, courtesy, dint, due, fear, for, from, in, in the light of sth(idiom), in view of sth (idiom), inasmuch as, light, of, on sb's account (idiom), order, out of, owing to, reason, right, sake, since, so, thanks to sb/sth (idiom), thing, through, view, virtue, what with (idiom), with


など多数が挙げられますが、関連表現も含めながら一通り見て行きましょう。和訳から原文がスラスラ言えるようにしてください。実際に発声することが大切です。




account

on account of sth  (formal) 〜が原因で、〜の理由で

 = because of something


  He doesn't drink alcohol  on account of his poor health.

 健康状態が悪いので彼は酒は止めている。


   Dinner was somewhat delayed on account of David's rather tardy arrival.

 デビットが幾らか遅れて到着したため、ディナーの開始は少し遅れた。


   Please don't go to any  bother on my account.

 お願いだから厄介ごとはもう止めにしておくれ。


 on my account

= because of me  私を理由として→私の顔を立てて→私のために


   Both his first and second wife divorced him on account of his womanizing.

 女道楽が理由で最初の妻も二番目の妻も彼とは離婚した。


cf. womanize

他動詞:To give female characteristics to; feminize 男を柔弱にする、女性化する

自動詞: To pursue women lecherously 女性を好色に追い求める、女道楽する



cf. for the sake of,for one's sake

〜のためのに 目的・利益を表わす

  Please don't go to any  bother for my sake.

  後生だから厄介ごとはもう止めにしておくれ。

  for my sake

= 私の(健康、平穏、立場の)ためを思って


 *理由と目的は厳密には区別出来ないと述べましたが、on my account も for my sake も似た様な意味です。但し前者は本人は困っていないが立場を尊重してくれとの理由、後者は本当に困るから考えてくれと心情的に訴える、とのニュアンスの違いは有ります。表現する理性 vs. 感情の比率が違ってくるように見えます。


 for charity's sake 慈善の目的で.、慈善の利益のために




cf.  take sth into accout,  take into accout sth

 = take account of

to consider or remember something when judging a situation:

 状況を審査する際に考慮、頭に入れる


I hope my teacher will take into account the fact that I was ill just before the  exams  when she marks my paper.

 採点するときに先生が試験直前に私が病気だったことを考慮して呉れるといいけど。


A good architect takes into account the building's surroundings.

 良い建築家は建物の周囲を考慮に入れる。


The UK's tax system takes  no account of children.

 英国の徴税システムは子供達のことを全く考慮していない。


I think you have to take into account that he's a good deal younger than the  rest of us.

 彼が残りの者達よりもずっと若いと言う事を君は考慮すべきだと思う。


   There are three factors to take into account: firstly cost, secondly time, and   thirdly  staff.

 考慮に入れるべき3点がある。第一にコスト、第二に時間。そして第三に人材である。


  The jury must take into account any mitigating circumstances presented by  the   defense, such as previous good  character.

 陪審員は、以前には良い性格であったなどの抗弁で示される軽減事由を考慮に入れねばならない。




as

= because:

As it was getting late, I  decided to book into a hotel.

 日が暮れてきたのでホテルを予約することに決めた。


You can go first as you're  the oldest.

 一番年上だからあなたが最初に行って下さい。


I'd frayed the edges of my jeans as that was the fashion in those days.

 ジーンズの縁をすり切れさせたものです。当時のファッションでしたからねぇ。

      (that は前文の意味内容を示す代名詞)

 

I asked the teacher if I could be excused from football practice as my knee  still  hurt.

 膝が痛むのでサッカーの実習を休めるかどうか先生に尋ねた。

 

The ceasefire treaty was meaningless, as neither side ever had any intention  of  keeping  to it.

 休戦協定は意味が無かった。なぜならどちらの側もそれを遵守しようとの意図を全く持たなかったからだ。

 

Improved safety measures in cars can be counterproductive as they  encourage  people  to  drive faster.

 自動車の安全対策は改善されたが、乗り手に速度を更に上げさせる様に勇気づけてしまうので逆効果となり得る。


cf. encourage someone to do  〜する様に勇気づける、駆り立てる

 

This man is desperate and should not be approached as he may have a gun.

 この男は自暴自棄となっており、また銃を所持している可能性があり近づくべきではない。




*as には、様々な用法と意味があり、接続詞 (文章同士を連結する) としては例えば


A as B  <Bと同じ様にAだ>、

not A as B  <Bの様にはAではない> <Bと違ってAではない>


 の用法がありますが、後日、比較・様態を示す表現の項にて詳しく扱う予定です。


   He works hard, as does  his friend.

=  He works hard, as his  friend works hard.

=  He works hard like his  friend.

   友人が懸命に働くのと同じ様に、彼は懸命に働く。

  (この例では as の後の主語と述語が倒置)


   He doesn't work hard, as  does his friend.

=  He doesn't work hard, as  his friend works hard.

=   He doesn't work hard  unlike his friend .

   友人が懸命に働く様には、彼は懸命には働かない。

=  友人が懸命に働くのと違って、彼は懸命には働かない。


 まぁ、主節の方に not が付いて内容が対比されるかどうかで、<同じ>か<違う>かに分かれます。    as 以降は省略された元の文を「復元」すると理解し易いでしょう。


cf. He doesn't work so hard  as  does his friend.

 彼は友人が懸命に働くほどには懸命には働かない。

 not so A as B  A はB ほどではない、は単なる対比ではなく、程度の比較の念が入ります。


*理由を表す as と比較・様態の as とは、文意から区別は困難ではありません。




at

used to show the cause of something, especially a feeling:

 原因、特に感情を引き起こす原因を示す。


We were surprised at the  news.

 我々はそのニュースを聞いて驚いた。


I was quite excited at the  prospect.

 その予想に私は興奮した。

 

Why does no one ever laugh  at my jokes?

 どうして私の冗談に誰も全く笑って呉れないのだろう?


There was a chorus of  disapproval at his words.

 彼の発言に対し不賛成の合唱が起こった。

 

It was a courageous decision to resign in protest at the company's pollution  record.

 会社の汚染記録を知り抗議の辞職をするとは勇気のある決定であった。

 

He looked very disappointed at their decision, but did not argue.

 彼らの決定を聞いて彼は失望している様に見えたが異議は唱えなかった。


I cringed at the sight of  my  dad dancing.

 親父が踊っているのを見てドン引きしたぜ。








目的を表す表現B be to do



2020年4月5日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 目的を表す表現の第3回目です。

 目的表現+例文をリストアップしていきますので、<つべこべ言わずに>丸暗記して下さい。全く損はしないことを確約します。



その他の目的表現 番外編



前回で扱った

 in order (for sb/sth)  to  do sth    { sb=somebody, sth=something }

 in order that sth 

 so as to do sth

 so that sth

 with a view to doing sth (やや形式張った表現)


 以上の表現は、<〜をする目的で、〜をする為に>、を明確に表現するものですが、いずれも動詞に掛かる副詞或いは副詞節(副詞として機能する従節)扱いになります。

 <〜は〜する目的である>との表現としては 受験参考書には  be to do も挙げられています。しかし、これは強い意志でそうしたいとの人間が主体となる目的そのもの表現では無く、(未来には、将来的には)〜の役目がある、〜の責務がある、との意味になります。本質的な目的表現とはちょっとズレるものですが、本項にて詳細に説明します。




be to do sth  

 〜する役目がある、〜をする目的である、〜する必要性がある


 The positioning over the porch of statue and good luck symbols has been specifically  to  keep out bad elements  either human or supernatural.

 ポーチ(屋根付きの張り出し玄関)の上に像や幸運のシンポルを配置することは、人間であれ超自然的なものであれ悪い要素を遠ざけておく特別の役目があった。(北大入試英文を改編)


「役目」を「目的」、「必要性」と訳しても日本語の意味として全く問題ないと思います。


= The positioning of statue and good luck symbols over the porch has been playing a  specific role in keeping out bad  elements even if they arehuman or supernatural.

 ポーチの上に像や幸運のシンポルを配置することは、人間であれ超自然的なものであれ悪い要素を遠ざけておく特別の役割を果たしてきた。


cf. play a role in, play a part in

 〜に役割を果たす


cf. either A or B  AかBかのいずれか、ここでは名詞句ではなくAかBのいずれであったにせよ、の意味の譲歩節的な意味遣いです。


cf. over = on 、 離れて上の方に、ではなく、この文意では、接して上に、の意味です。


= People have been accustomed to position statue and good luck symbols over the  porch in  order specifically to keep  out bad elements even ifthey are human or  supernatural.

人々は人間であれ超自然的なものであれ悪い要素を明確に遠ざけておくため、ポーチの上に像や幸運のシンボルを配置することを習慣として来た。


 上記の書き換えた文は人を主語に据え人の意思に拠る目的性を強調した言い換えになります。


cf. specific

= particular 特別の、clear,  definite 明確な



be to do sth とは




Oxford English Dictionary (OED)での be の項目に以下の記述があります:


16. With the dative infinitive, making a future of appointment or arrangement; hence of  necessity, obligation, or duty;  in which sense have is nowcommonly substituted.

 間接目的の意味(〜に対して)の to 不定詞を伴い、未来の約束や手はずを表す。斯くして未来の必要性、義務或いは職務を示すがこの意味で現在では一般的に have に代用される


・a. 能動の to 不定詞を伴って

1742 Richardson Pamela III. 264, I am to thank you, my dear Miss, for your kind Letter.

 親愛なるお譲さん、あなたの親切なお手紙に私は有り難うと言うべきですな。


1814 Scott Wav. I. v. 55 Had he been to chuse between any punishment..and the  necessity.

 彼は何か罰を選ばねばならなくなったのですか?



・b. Hence, to be to seek: to have to seek, to be obliged to seek, to be in want or at a l oss.

 斯くして、to be to seek は to have to seek, to be obliged to seek, to be in want  or to be  at a loss に置き換えられる。


1832 Fair of May Fair III. ii. 278 It was excusable that a man having passed so large a   portion of those sixty years in  a  compting house, could besomewhat to seek in the  economy of his social system.

その60年間の大半を小ぎれいな家で過ごして来た男が人付き合いに幾らか倹約せねばならなかったろうことは納得が行く話だった。


=Taking into account that a man have passed so large a  portion of those sixty years in  a compting house, it was  excusable that he could besomewhat obliged to seek in the   economy of his social system.

一人の男がその60年間の大半を小ぎれいな家で過ごして来たことを考慮すれば、彼が人付き合いに幾らか倹約せねばならなかったろうことは納得が行く話だった。


( cf. could be to seek in economy of his social system

= could be obliged to seek in economy of his social system

= could be obliged to save money for his social system 


cf.could は〜することがあり得たの意、即ち、〜だったろう、と訳すと良いでしょう

(以上塾長追記)


・c. with inf. pass. 受動の to 不定詞を伴って


1869 Freeman Norm. Conq. III. xii. 145 Normandy was to be invaded on each side.

 ノルマンディは各方面から侵略される運命にあった。




 A is to do sth.で、


 @Aは〜する約束になっている、r.

〜する手筈となっている、することになっている、未来がそれに向けられている、手配されている、定まっていることを表現します。


The next meetingis to be held in  Wednesday.

= The next meeting  has been arranged forWednesday.

 次の会議は水曜日の手筈になっています。


Normandywas tobe invaded on each side.

≒ Normandywas fated tobe invaded on each side

≒ Normandywas destined tobe invated on each side

 ノルマンディは各方面から侵略される運命にあった。



 Aそれから派生して、

〜する必要がある  need to do

〜すべきである、せねばならない  have to do,  be obliged to do

〜する役務・役目がある  have a duty to do

の意味が出ました。be to do の be  動詞を need, have,  have a duty に置き換えれば良い訳です。


 基本的にこの2つの意味(@未来の定事 さだまりごと、A必要・役目)だと覚えてください。分からなくなったら、全て、〜に向かう、〜に向かうものだったと訳せば0点にはなりません。


上記の最初の文も、

 ポーチ(屋根付きの張り出し玄関)の上に像や幸運のシンポルを配置することは、人間であれ超自然的なものであれ悪い要素を遠ざける方に特に向かう(向けて)ものだった。


 と訳しても曖昧性はやや出ますが意味は通ります。点は取れます。


 上記OED の説明にも、必要性、義務の意味では be to do を have to do, be obliged to do (ねばならぬ)に置き換えられるとの記述があります。 be for thepurpose of 〜の為である、との目的を示す意味には何ら言及されていません。即ち、本質的に人間側が強く意図した目的を表す表現ではありませんね。客観的に(半ば必然的に)〜となる、〜の役目だ、必要だ、との意味です。





受験参考書を見ると、be to do の訳語として、予定・運命、義務・命令、に加え、可能(〜出来る)や意図(〜したい)を当てる記述がありました。


例えば、

The book was not to be found. <その本は見付けられなかった>

の説明ですが、これはその本が見つけられない運命、そう言う事になっていた、の意味ですので、 確かに見つけようとする人間の側に立てば We couldn't findthe book.となります。人間の側の営為を柔らかくして表現すべきですが、<その本はどうしても見付からなかった>の方がマシでしょう。


意図の説明としては、

If youare to passthe entrance examination, study harder.

もし入試に受かりたいならもっと勉強しなさい、とありますが、


こちらは意図<〜したい>として訳すのではなく、上記Aの説明のように be を need, have などに置き換えて考えるべきです。何となれば、be to do は主語の意志、意図を表す表現では無いからです。

従って

= If youneed to passthe entrance examination, study harder.

もし入試に受かる必要があるなら、もっと勉強しなさい

或いは、

= If youhave to passthe entrance examination, study harder.

もし入試に受からねばならないのであれば、もっと勉強しなさい


 と解釈するのがより正しいでしょう。


主語の人間側の意図を表さないと説明しつつ、意図の意味で訳すのは矛盾しています。OED などに当たって詳しい解説を参照することが大切であり、参考書やweb に掲載されている解釈や説明が真に適当なものであるとは限りません。be to do には5通りの意味があるなどと延べられていますが、却って混乱する危険性があります。上に述べた様に基本は2つの意味で成立しています。それを押さえて下さい。


cf. Who is to blame for the accident?  だれがその自己の責任を取るのだ?

意味的には

 Who has to be blamed for the accident?  だれがその事故の責めを受けねばぬらないのか?

ですが、慣用的表現として  be to blame for 〜(過失、過ち)の責任がある、となります。


他に、be to be expected 予期されることだ、当然だ、の慣用的表現があります。




 助動詞 should は助動詞 shall の過去型ですが、基本は単純未来〜だろう、未来への意志〜して遣る、の過去表現或いは婉曲な表現となります。


 未来の或る時点で、


 〜となっているだろう→ 〜となって見せてやる→ 〜すべきだ


 の意味の派生が should に有りますが、

 未来表現が意志、次いで義務表現に変遷・派生するのは、


be to do の、

〜することになっている→ 〜する義務・必要がある、


 の意味の派生に類似していて面白くも感じます。









目的を表す表現A




2020年3月20日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 目的を表す表現の第2回目です。

 目的表現+例文をリストアップしていきますので、<つべこべ言わずに>丸暗記して下さい。全く損はしないことを確約します。

以下参考サイト:

https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/


https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/lest

(20231213 lest の項追記)




その他の目的表現





 <何かを成し遂げる目的で> 


 with the aim of achieving something:

 with the intention of doing something

 を単純に表現するには、

 単純に to 不定詞を用いて to do とする表現がありますが、to 不定詞単独では様々な意味を持ち明確性が低い表現となります。目的であることをより明確に印象づけて表現するには、


 in  order  (for sb/sth)  to  do sth

 in  order  that  

 so  as  to  do

 so  that  

 with a view to doing sth (やや形式張った表現)

 lest


 の表現が用いられます。特に上の4つは日常的に頻用されます。


*so as to, so that の方が口語としては in order to, in order that よりはずっと普通の表現で、in  order  that は formal な表現となります。


* so that , in order that 共に、節の中では  can, would, will,  etc. などの助動詞がしばしば利用されます。


*in order to , in order that は文頭に置けますが、so as   to, so that は文頭に置けません。


*to 不定詞の意味上の主語は主文の主語に一致しますが for で別の主語を添えることも出来ます。




in order to

in order not to


I agreed to her suggestion  in order not to upset  her.

= I agreed to her suggestion  so as not to  upset  her.

 彼女を怒らせないよう私は彼女の提案に賛成した。


They've introduced all sorts of new elements to that programme in order to broaden its appeal.

 彼らは訴求力を拡大する為にあらゆる種類の要素をそのプログラムに導入した。


=They've introduced all sorts of new elements to that programme in order  that they  could  broaden its appeal.

=They've introduced all sorts of new elements to that programme  so that they could  broaden its appeal.


In order to make the company viable, it will unfortunately be necessary to  reduce staffing levels.

 その会社を潰さないで存続させる為には、残念ながら従業員員数を減らす必要があるだろう。


cf. viable

= capable of living., physically fitted to live,  able to live and grow,  having the ability to grow, expand, develop

 生きて行く力がある、成長する活力のある


The president took the unusual step of altering his prepared speech  in order to  condemn the terrorist attack.

 テロリストからの攻撃を強く非難する為に、大統領は前もって用意されたスピーチを差し替えるとの異例の手に出た。


cf. condemn

発音注意、末尾の n は発音しません。


Children need to feel secure  in order to  do well at school.

 子供は学校生活を上手く送る為には安心感を得る必要があります。

= Children need to feel secure if they hope to do well at school.

  子供は学校生活を上手く送りたいのなら安心感を得る必要があります。


He assumed a false identity  in order to escape from the police.

 警察から逃れる為に彼は偽のアイデンティティを身に纏った。

= He assumed a false identity  so as to escape from the police.

 警察から逃れるようにと彼は偽のアイデンティティを身に纏った。

= He assumed a false identity  because  he wanted to escape from the police.

 警察から逃れたかったので彼は偽のアイデンティティを身に纏った。




with a view to


We have established the institute  with a view to diffusing scientific knowledge.

 私たちは科学知識の普及を目ざしてその協会を設立した。

 (to は前置詞ですのでうしろに名詞相当語が付きます)

= We have established the institutefor the purpose of  diffusing scientific knowledge.

= We have established the institutein order to  diffuse scientific knowledge.  


We read the contract  with a view to (knowing) how it could be made to  appeal to   voters.

 投票者にアピールするためにどの様な工夫が為されているのかの視点で我々は契約書を読んだ。

 投票者にアピールしようとどの様な工夫が為されているのか知る目的で我々は契約書を読んだ。

→ We read the contract  in order to find  how it could be made to appeal to  voters.


We read the contractwith a view to  its renegotiation.

 再交渉するべく我々は契約書を読んだ。

→ We read the contract  in order to make its renegotiation.

 

  と書き換えることが出来ます。

with a view toのすぐ後ろに名詞や節が続く場合は適当な動詞を補って解釈すると文意が分かり易くなりますね。意味としては「〜したいので」となります




so that

*that 節内ではcan, could, will, would その他の法助動詞が用いられることが多いです。

 so は「直前に述べた文意に付加的な説明を与える語ですので、

I deliberately didn't have lunch so (that) I would be hungry tonight.

 オレは意図して昼飯を抜いたんだが、そんなで今夜は腹ぺこだろうよ。(結果を付加)


Leave the keys out so (that) I remember to take them with me.

 鍵を外に出しといて。そんでもって持って行くのを忘れない様にするつう塩梅。(目的を付加)


 などの様に幾らか曖昧性を含んでいます。まぁ、so as toso that目的+結果を合わせた様な表現ですね。それゆえ文頭には持って来れない訳です。日本語の口語の「そんでもって〜する訳さ」に近い様にも思います。口語の性質が強い表現ですので、formal な文書や formal な会話では、目的そのものをダイレクトに表す明確性の高い in order to (in order that )が、更にお堅いガチガチの文書では with a view to が良いでしょう。




lest

 接続詞

*後ろに取る節中には英国用法ではしばしば should  が添えられます。

*この should は感情表現の should であり、日本語には訳出出来ません、勿論〜すべきの意味はありません。


1. in order to prevent any possibility that something will happen:

 何かが起こる可能性を少しでも防ぐために、〜しないように


They were afraid to complain about the noise lest they annoyed the neighbours.

 彼らは隣人に迷惑をかけないようにと、騒音について苦情を言うのを怖れていた。

= They were afraid to complain about the noise in order not to annoy the neighbours.


2. for fear that:

 〜を恐れて、〜するのが心配で、気懸かりで

Gramps is too frightened to move, lest he disturbs the infant.

 おじいちゃんは 幼児を邪魔するのが気懸かりで怖くて動けない。

= Gramps is too frightened to move, for fear that he disturbs the infant.









目的を表す表現@



2020年3月15日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 過去暫くの間、言語学としての英語並びに歴史的背景を含めた英語の成立について詳述してきました。塾長は理系の出身であり、例えば大学の英文科でシラバス(講義・授業計画)としてどの様な講義科目と講義内容が配列するのかについて全く知識がありませんが、それらに類する講義が当然含まれるだろうとは想像しています。

 さて、今回から暫くは英語の取り得る各表現について触れて行こうと思います。まぁ、目的、日時、譲歩、仮定、などの記述に使われる表現となりますが、思考の流れを明確にし、意思を正しく相手に伝える助けとなる表現であり、英作文にも直接役立つものとなります。文語のみで使われる formal な畏まった表現から、informal な即ち日常的な口語表現まで説明出来たらと思います。

 その様な表現+例文をリストアップしていきますので、また<つべこべ言わずに>丸暗記して下さい。全く損はしないことを確約します。



 さて、目的とは何でしょうか?jまぁ、何かの行動を計画したり結果をもたらすことを頭の中に意図してイメージ或いはデザインしていることになります。文字通りの矢を射る時の「的」ですね。しかしそれには何らかの理由や動機が有っての意図となります。<矢を的に当てればオリンピックに出場できるから>などの理由です。

 例えば以下の日本語の文章は概念的にはほぼ同じものとなります。

 私は出世するために一生懸命勉学する。(目的

 私は出世したいので一生懸命に勉学する。(理由


<子供達が床に就く前に顔を見たいと思って彼は早く帰宅した。> は、


 子供達が眠る前に会う目的で彼は早く帰宅した。

 He came home early  in order to see the kids before they went to bed.

 He came home early  in order that he saw the kids before they went to bed.


 子供達が眠る前に会おうとの理由で彼は早く帰宅した。

 He came home early  so that he could see the kids before they went to bed.

 He came home early  because he wanted to see the kids before they went to  bed.


 上からお分かりと思いますが、意味的には重なるところがあります。目的とは心の中に思い描くそれに向かいたいとの意思の流れ、希望、要求であり、「〜するために」は「〜したいので」「〜できるように」と理由や動機に置き換えても意味は通ります。詰まり、目的であり理由でもありこの2つは厳密な区別は出来ませんね。

 と言う次第で初回として目的を表す表現を扱い、それ以降それに続けて理由を表す表現を扱います。

 目的や理由は、主たる文章に対してそれを補足説明する表現となりますので、従属的な立ち位置にあります。従ってそれ単独で文章を作りません。作るとすれば

 Why did he come  home early?

  In order to see  the kids before they went to bed.

  Because he  wanted  to  see  the kids before they went to bed.

   などの様に、前文内容との組み合わせとしての単独文となります。




目的表現



単純に目的をサラッと述べる表現は英語にはあまり多くはありません。


目的の意味を持つ単語としては、

 purpose, intention, aim, goal  などが挙げられます。




purpose

 実は purpose の語源ですが

https://www.etymonline.com/word/purpose

purpose (n.)

c. 1300, "intention, aim, goal," from Anglo-French purpos, Old French porpos "aim, intention" (12c.), from porposer "to  put forth," from por- "forth" (from Latin pro- "forth;" see pur-) + Old French poser "to put, place" (see pose (v. 1)). On purpose "by design" is attested from 1580s;earlier of purpose (early 15c.).


目の前に置く→目の的にする→「目的」 が原義であり、目の前になぜ置くのかの「理由」ではありません。


 しかしながら状況に応じて「目的」或いは「理由」として柔軟に和訳すると良いでしょう。


 For budgeting purposes, you really have to start estimating costs now.

 予算を立てる為に(立てたいので)、君は経費の見積もりを今すぐ本当に開始する必要がある。

 The delay really  served no good purpose and may have harmed the negotiation.

 その遅延はマジで全く目的に適わなかったし交渉に害をもたらした可能性がある。

=その遅延は我々の目指すところ(目的)とは全く違っていたし交渉に害をもたらした可能性がある。


 for the purpose of doing sth

 〜の目的で、〜のために、〜するべく、〜に向けて、〜したいので


 The user goes to that store  for the purpose of taking the articles for special  sale.

  その品を特別価格で入手する目的でユーザはその店舗に向かう。

=その品を特別価格で入手したいのでユーザはその店舗に向かう。


 The user goes to that store  in order to  take the articles for special sale.

  The user goes to that store because  they  want to take the articles for  special  sale.

これらはほぼ同じ意味です。








Mac とアイスランド



2020年3月10日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 新型肺炎の感染が拡大を続けており、学校が休みになったりテレワークでご自宅に籠もってられる方々も多いかと思います。この様な時に英語の勉強を積んで将来に目を向けるのも良いのではと思います。

 さて、ハンバーガーとアイスクリームの話題かと早合点した方も居られるやもしれません。食べ物の話ではなく、英語圏の姓に Mac やMc が付くものがありますが、これは一体何を表しているのかが今回のコラムテーマです。

 街中で見掛けるハンバーガー店も大々的にそれが冠された名前を TV でも時々連呼していますし、コンピュータやスマホで鼻息荒いリンゴマークの会社にも該当するブランドが存在します。古くは戦後、コーンパイプを咥えて厚木飛行場に降り立ったサングラスの米軍人、荒野の七人に出演した渋いアクション俳優 (塾長は大ファンでした!)にも、また60年代に世界的なブームを巻き起こした英国発4人組のポップスグループにも該当者がいます。日本人には世界 (=英語話者圏のことを英語話者達は「世界world 」と言うらしい) の一大勢力の様に見えますが実勢はどうなのでしょうか?



 実のところ、Mac 或いは Mc はゲール語 (アイルランド、スコットランド、マン島のケルト語、Qケルト語)で、〜の息子を意味します。元々は父親の、姓ではない名前、詰まりは first name の方に、Mac をつけて息子の姓にしていましたが、いつしかそれが固定化された苗字となったものです。例えばアーサー Arthur と言う名の男に息子が生まれると、息子の姓が  MacArthurとなります。その息子の名前 が 例えば Douglas MacArthur 即ちアーサーの息子ダグラスであれば、次の息子の姓が MacDouglas という具合です。これでは当人が何の一族の係累であるのかが分かりません。単に父親の名が分かるだけです。対外的には、当人がアイルランド or スコットランド系ケルト人の血を引くことだけははっきりしますが。

 古ノルド語 (北ゲルマン語 =スカンジナビア語の共通祖語) が古来より殆ど変化もせずに話されているアイスランドでは、現在でもこの様式で子供が命名されます。詰まりはいわゆる日本人のような苗字の概念がありません。〜の息子、〜の娘が形式的に姓に該当します。

 日本人に顔が似ていると指摘されるアイスランド人歌手のビョークの名前は ビョーク・グドゥムンズドッティル (Bjork  Gudmundsdottirですが、<父親の first name のGudmund +属格(〜の)s + dottir  娘>が姓に相当します。詰まりは Gudmund の娘ビョーク、です。ちょっと違いますが更級日記の作者、菅原孝標女 すがわらのたかすえのむすめ を連想してしまいました。Gudmund さんに息子が生まれれば、息子の<姓もどき>は Gudmundson となります。ビョークに仮に兄弟がいれば男女の子供の間で姓が異なる訳です。通常は父親の名前から姓を付けますが、母親の名やミドルネームを利用する場合もあるとのことです。

 人口が少ない狭い社会(アイスランドは全人口35万人程度)ではこの様な命名法でも混乱は起きませんが、人口が増えると血統、家系が明確に辿りにくくなる事に加え、似たような<氏名>の者が重なり不都合でしょう。言うなればムラの命名法ですね。日本も明治に入るまで武士などを除いて苗字を持たず、例えば八丁堀の三吉、馬喰町の伝兵衛の様に、適当な符号 (屋号) を添えて呼び合っていました。これでは対外的に血筋も不明ですが、逆に言えばそれが問題にされない階層であったと言えます。まぁ、てめぇみてぇな馬のホネは引っ込んでいやがれ、ですね。



 苗字が変わらなければ家系が明確に辿れます。詰まり、家系を辿られることが有用である上層の階級ほど 「まともな」 姓を保持します。仮りに姓に息子、娘などに相当する語が入っていれば、現在は固定された姓を親から引き継いでいるにしても、嘗ては親の名前から「その場しのぎの苗字」を作っていた家系であることが分かりますので、<そこらの只の人> だと見なされもします。デンマークの童話作家アンデルセン Andersen は <Ander の息子>が起源の名字ですから、上流の出ではないと一時は鼻であしらわれたりもしたようです。童話と違って現実世界は世知辛いですね。

 〜の息子、〜の娘の命名法はケルト系以外にも古ノルド語圏、即ち、北ゲルマン語 (アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク) で一般的です。アイスランド以外は既に固定された姓になっています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/マック_(ゲール語)

 ここを見ると、英国の姓の"O'Sullivan"や"O'Hana の Oは Ui (孫息子) の変化したものとの記述があります。Sullivan と言う祖父の名前に対して、その息子はMacSullivan 、孫息子は O'Sullivan としたのかと思いますが、それに関しての記述はありません。おじいさんがムラの有力者でそれを誇りに思って伝えたのでしょうか。



 マーガレット・ミッチェルの長編小説 『風と共に去りぬ』 に登場する架空の人物スカーレット・オハラは、1844 或いは1845年、ジョージア州タラの自家のプランテーションで出生、父方はアイルランド系カトリックの家系、母方はフランス人であるが、有名な貴族サバンナ家の子孫、ロビヤール家の出である、とありますのでアイルランドの血が入っているとの設定です。塾長は子供の時はオハラの響きから日本人に関係があるのかなどど思っていましたが全然違いますね。余談ですが、塾長が高校の時にお世話になった体育の先生はオバラ先生、数学はオオハラ先生でした・・・。ジョージア州には 1733 年に移民が入りますが父方はこれ絡みの設定でしょう。ジョージア州の西方にフランスの植民地だったルイジアナがありますので、母方はそちら由来かもと想像します。

 苗字1つ取っても奥が深くて面白いですね。ヨーロッパの貴族の姓の命名法については後日機会があればまた触れたいと思います。

 自宅待機の方々も多いと考え、今回は娯楽的要素を強めてみました。楽しみがてら知識を得るのも悪くはなさそうです。

 途中6回分の入試英語の話を差し挟みましたが、これまで全19回に亘り、言語としての英語の背景を探るコラムを書いて来ました。英語史、英国史について興味を抱かれた方は、専門の書籍も数多世に出ていますのでそれらを紐解いて更に勉学を進めて戴ければと思います。次回からは英語の個々の表現法に話を戻しますね。








ケルト人とウェールズ語



2020年3月5日

皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 ノルマン・コンクエストの項で、大陸側のブルターニュ半島へとブリテン島からウェールズ人が植民した (ブルトン人と呼称) とチラと触れました。これに絡めてお話ししましょう。

 ローマ人がブリテン島に拠点を構える(1〜5世紀)以前には、先にヨーロッパ大陸から渡ってきていたケルト系民族がブリテン島、アイルランド島及び周辺の島嶼に居住していました。但し、紀元前3000〜2000年にストーンヘンジを作ったのがケルト系民族であるかは不明です。ケルト人は先住民であるからと言って文化に乏しい原始民族であったと言う事は無く、青銅器の製造技術や鉄器の武器も持っていましたし、独特の宗教(ドルイド教)も信仰していました。

 それがローマ撤退後に、ゲルマン系がブリテン島に、寄せる波の様に何度も侵攻を開始して以降(基本は海賊形態の植民です)、ケルト系民族は次第に辺境の地−ヨーロッパ大陸からは遠い、言わば裏日本ならぬ裏ブリテンに追いやられて行ったのです。尤も、ローマ人からすれば、北海に面したフランス北部、ゲルマン系民族が居住する北ヨーロッパやスカンジナビア自体が辺境そのものであったのですが。ブリテン島のケルト人はほぼ駆逐或いはアングロサクソン人人(ゲルマン系)に吸収されましたが、ウェールズのケルト人は抵抗烈しく、結局最後まで彼らを支配下に置くことが出来ませんでした。

 その様な次第で、現在でもウェールズにはケルト系住民のウェールズ人が生活し、ケルト語の一種ウェールズ語を話す者がまだ相当数居ます。

 ブリテン島の南西端にコーンウォール州が位置していますが、この場所もケルト系住民の場所でした。残念なことに、ウェールズ語とも近い関係にあるコーンウォール語の最後の native speaker は 1914 年に亡くなりました。


 他方、アイルランド島のアイルランド共和国側の住民もほぼ純粋なケルト人の子孫と考えて間違いないと思いますが、こちらの方は過去150年ほどの間に英語化が著しく進み、ごく一部の地区(貧しい漁労民の生活区)にてケルト語の一派ゲール語が細々と利用されるだけとなっています。英語が話せないと経済的また社会的地位を上げる事が出来ない現実から、アイルランド人自体が学校で形だけ祖語を勉強するものの実際には利用もしない現況にあります。逆にゲール語を話すものは衒学趣味の嫌味な奴だと思われがちとのことですが、魂を完全に相手側に売り渡したようにも塾長は感じてしまいます。まぁ、文化的に優勢な言語下に組み込まれ、祖語そして固有の文化も失ってしまう例はこれ以外にも普遍的に見られることではありますが、優勢な言語が文化とセットになって入る以前に、失っては困る、他に置き換え出来ない高度な文化、或いは武力を持っていなかったから呑み込まれたのだとも言えそうです。この様な言語に拠る文化支配を言語帝国主義と呼称する者もいます。

 生き残っているケルト語には、ウェールズ地方と植民先のブルターニュ半島で話されるウェールズ語とブリトン語(Pケルト語と呼ぶ)、それとアイルランド及びアイルランドからの植民先であるスコットランドで話されるゲール語(Qケルト語)の2派があります。地理的には遠く離れてはいませんが、2つの言語は分離して既に数千年が経過していると考えられ、同じケルト語であっても互いの意思疎通が困難です。

 ウェールズ語はまだ話者も多く、ウェールズの北方では小学校に入るまで英語を知らない子供達も居るとのことで、日本人の感覚としては同じブリテン島に全く異なる言語体系の者が相当数住んでいることが驚きですね。

 ウェールズ語の文法は大変複雑に見え、他国語の話者が習得するのは難しそうに見えます。言語学的に分析はし得たにしても実際の話者となるのに道は遠い様に感じますが、これは塾長の偏見かもしれません。またケルト語から英語への借用語なども少なく、これは英語話者側はケルト語を文化的に相手にしなかったと言うことでしょう。



 イングランドの800年に及ぶ支配下にあり迫害されていたアイルランドのケルト系住民が、1800年代のジャガイモ飢饉で生活に困窮、逼迫し、再起を図って新大陸にこぞって移民しました。そこで成功を収めてケネディの様に大統領になった者も出現します。古くはヨーロッパ大陸に広く居を構えていましたが、他民族に呑み込まれ、或いは追い立ててられ、辺境の地の中の辺境で生き残ったケルト人が、新大陸で花開いた訳ですが、その歴史にはケルト人の底力を感じると同時に落涙を禁じ得ません。








フランス語の勧めU



2020年2月20日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 続編のフランス語の勧めUです。




 ラテン語についてここで軽く触れておきますね。

 ラテン語起源の言語は動詞1つを取っても格変化を起こします。私が、君が、彼が、あなたたちが、彼らが、などで末尾がまた変化します。それゆえ、動詞1個だけで<主語+行為、動作>が表現でき文が成立します。但しフランス語では他の俗ラテン語と異なり主語も付けます。

デカルトの 『方法序説』 (Discours de la methode)にある、

 「我思う、故に我在り」は


 仏: Je pense, donc je suis. ジュポンス ドンク ジュスゥイ

 羅: Cogito ergo sum. コーギトー エルゴ スム

 英 I think, therefore I  am..

 和 私は考える、それゆえに私は存在する。


  となります。




デカルト 方法序説

DESCARTES DISCOURS DE LA METHODE (1637)

POUR BIEN CONDUIRE SA RAISON ET CHERCHER LA VERITE DANS LES SCIENCES


『理性を正しく導き、学問において真理を探究するための方法の話(方法序説)


第4部の冒頭の章に以下の文が含まれます:


    Et  remarquant  que  cette  verite  :je pense, donc je suis, etait si ferme et si assuree, que toutes les plus  extravagantes suppositions des sceptiques n'etaient pas capables de l'ebranler, je jugeai que je pouvais la recevoir, sans  scrupule, pour le premier principe de la philosophie que je cherchais.


 この真実、即ち我思うゆえに我あり、は大変堅固で確実なものであるが故に、懐疑論者達に拠る最大限に華やかな仮定をも揺るがす事が出来なかったのだと私は気づき、自分が探し求めていた哲学の第一原理として疑念無く受け入れることが出来る、と私は判断したのである。

(塾長訳)


 『方法序説』は元々フランス語で執筆されましたが、<Je pense, donc je suis> を、デカルトと親交のあったメルセンヌが <Cogito ergo sum> とラテン語訳しました。余談ですが400年近く前のフランス語ですが現代フランス語の文章の様に普通に和訳出来てしまいます。言語として大変安定していて揺るぎがありません。言語としての曖昧性が無く、この様な理由から外交文書にフランス語が採用される訳ですね。




 ラテン語の cogito は cogitare (考える)の直説法一人称単数現在形、詰まり、「私は」の意味がこの動詞活用形に含まれています。cogito だけで I think です。同様にsum はラテン語の be 動詞相当 esseの直説法一人称単数現在形で I  am 私は存在する、に相当します。迷子になった時に英語で Where am I? と聞きますが、今私はどこにいるの、どこに存在するの、ですね。英語でも be 動詞は主語が何であるかで ある程度は変化しますので am  happy で、私は幸せだ、と判りますが、主語 I は省きませんね。 donc, ergo, therefore の3つは「それゆえに、そう言う訳で」の同じ意味です。

 因みに「我思う、故に我在り」の対偶命題は「我居らず故に我思わず」ですが、I am not present therefore I  do not think at all. となります。映画『ターミネーター2』の最後で、使命を果たしたアンドロイドが自分を消滅させるべく溶鉱炉に沈むのですが、彼が見ていた世界の画面がプツンと切れて全ては終わります。これを見て、自分が存在しての世界の認識であって、自分が消えてしまえば世界など失せてしまうと、このデカルトの言葉を塾長は感じました。認識論的世界観?とも言うべきなのかと思いますが、今も死ぬとはこう言うことなのか、その人の世界観が失せることなのか、なるほどと勝手に納得しています。


 ラテン語には名詞、形容詞などにも格変化が有り、名詞は例えば主呼属与対奪 しゅこぞくよたいだつなどと覚えるのですが、主格(〜は)、呼格(〜よ、呼び掛け)、属格(〜の)、与格(〜に)、対格(〜を)、奪格(〜から)と利用されるシーンに応じて単語の末尾が変化します。言わば英語での動詞+前置詞の状態ですが、経文の様に覚える他はありません。塾長は第3外国語にギリシア語とラテン語を選択し、辞書まで買い込みましたが、ギリシャ語の方は途中で挫折しましたがラテン語の方はそこそこ進みました。何通りかのパターンを<つべこべ言わずに>口唱するのみです。

 フランス語ではラテン語の活用の仕方を基本は遺していますが、変化しているところや消滅したものもあります。しかしラテン語の格変化とはこんなものなのかと、英語学習のみ行って来た者には新鮮に映るのではと思います。まぁ。これは実はドイツ語などを学習しても同じ事ですが。




 話を元に戻します。

 国内の web 上の英語のサイト、より正確には語学としての英語のサイトに幾つかアクセスしてみたのですが、執筆者がフランス語が出来ないが故に、英語に関する考察が途中で止まってしまい、考察が今一だなぁと感じさせられるものがそこそこ見られました。或る特定の単語の英語での用法が揺れている、どうしてその様な意味、用法が派生したのかを探るに当たり、語源 etymology を探るのですが、それがラテン語起源でフランス語からの借用語であるとまでは判っても、フランス語からラテン語へと自分で直に遡る事が出来ず、そこに第三者のフィルター、詰まり他人の見解が介在することになります。

 動物クリニックの院長コラムで星の王さまの話題を採り上げましたが、フランス語を知らないのに、日本語の「飼いならされた」の言葉についてあれこれ語る者が多く、大変びっくりしました。原文に当たる事が出来ない様では論考としては門前払いに等しく、町内会のご隠居話や只の雑感以上の意味を持ちません。日本語に翻訳された用語であれこれ考えを巡らせてもサン=テグジュペリの思想には到達出来ません。同様に、フランス語起源の英単語をフランス語を知らずにあれこれ論じても、的の外れた、独りよがりの奇妙な考察に陥る危険性があります。

 英語にはフランス語やラテン語からの借用語が非常に沢山あることを考えると、英語学的なことを追求したい、或いは英語の教養を真に高めたいのであれば、フランス語の習得は寧ろ必須と言えるぐらいではと考えます。勿論、ドイツ語などの他のゲルマン語もその基本を習得出来れば最高ですが。







フランス語の勧めT



2020年2月15日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

入試英文のコラムを6回差し挟みましたが、また元に戻しますね。

 フランス語の勧め、とのタイトルですが、当塾は英語塾ですので、勿論のことですが、英語学習を止めてフランス語に乗り換えなさいと言っているのでありません!英語学習と併せてフランス語を勉強しなさいとの主張です。

 大学では第2外国語を選択することになる筈ですが、もし講座が開設されているのであればフランス語を選択することをお勧めします。

 多くの方はドイツ語を選択するのだろうと思いますが、少し前にコラムで採り上げましたが、英語は他のゲルマン系の言語からはだいぶ姿を変えてはいる −語順も異なり、動詞の格変化などが簡略化はされている− ものの、矢張り基本はゲルマン語の体を保っています。


 同じゲルマン語ではなく系統の離れたヨーロッパ語から英語を見つめ直すと英語の特性が一段と深く理解できる様になると思います。候補としては、ラテン語系、ケルト語系、少し地理的距離は離れますがギリシャ語或いはスラブ語系の言語などが浮かびますが、後ろの3つの系統は教えてくれるところが少なく、ラテン語系の言語に絞り込むことになろうと思います。フランス語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、はたまたルーマニア語が俗ラテン語ですが、大学で実際に選べるのはフランス語にほぼ限定されるのではと思います。こんな按配で非ゲルマン系の言語で第2外国語を選ぶとなるとフランス語に絞られる、これが第1の理由です。

 余談ですが、フランス語は国際条約文に使用されるなど有力言語でもありますが、何よりも日本では学習者が少なく、フランス語の学術論文はじめちょっとしたワインの瓶の能書きを読むにも優位な位置に立てます。塾長の場合、霊長類の筋骨格系の形態進化を研究テーマとしていますので、マダガスカル島 (1960年までフランスの植民地) の原猿(キツネザル)について掛かれた論文、またキュビエの比較解剖の書物など読むのに大変有益でした。


 第2の理由としては、ノルマン・コンクエストに伴い、フランス語から大量の語彙の借用が起こり、それらの単語の原義を知り、英語での意味変化、また英語自体への影響・変化などを探る上でフランス語の知識があると大変役に立つ点を挙げたいと思います。これは勿論、ラテン語から直接入った言葉或いはラテン語から合成された言葉に対しても同様です。

(つづく)








入試英文を添削するE



2020年2月10日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 普段一般的な英語の文章を多読している塾長からすると、大学入試の英語文に触れてギョッとなることがそこそこあります。入試英文も一つの英語の文章として、公平な観点から見てみようとのコラムの第6回目です。

 以下、過去問とはなりますが具体例を挙げながら入試英文を<添削>して参りましょう。最終的には改訂した英文を掲載しますが、そこに至る塾長の考え方、迷い?など思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。

以下参考辞書サイト:

https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/




Manual labor was highly valued. Later  it  was  the  man who worked with his head to achieve success in business and  industry who was looked up to. Now  there  is  in  America a curious combination of pride in having risen to a position    where  it is no longer necessary to  depend  upon  manual  labor for a living and genuine delight in what one is able to    accomplish with his hand.

(大阪府立大)


 「単純労働は非常に価値があった。のちに、実業や産業で成功せんと頭を使って働くものこそが尊敬された。今や米国では、生きていく為に最早単純労働に頼る必要が無い地位に昇り得たプライドと、自分の手を汚して成し遂げられることの純粋な喜びとの奇妙な組み合わせが見られる。」


 だらだらと切りどころの無い長い記述が続く悪文です。息継ぎが出来ずに健康面でも良くありません! who が二度繰り返し現れ、塾長はギョッとするのを通り越して笑ってしまいました。look up  to  (= respect) なる句動詞 phrasal verb が登場しますが、formal な文章では句動詞は控えますので、カシコまらずに気軽に書かれた文章であることが分かります。その割には言う事が鹿爪なのですがどうなっているのでしょうか?最後の文章ですが、1個の文章にあれこれ押し込んで述べるとの良くない書き方の典型を示しており、奇怪さを覚える程です。出題者の質が高く無い様にも感じてしまいます・・・。


 内容の対照的な語句(対句)に着目するとカッコ付けがまだラクかもしれません。これは現在過去未来の時間の推移と肉体労働 vs. 頭脳労働の対比に注意を払えば容易でしょう。


cf. manual from Latin manus 手の、手に関する。 manual l abor を手仕事と訳すと、頭を使う仕事とは対照性が明確に出ません。頭脳労働に対し、頭を使わない仕事、単純労働、肉体労働と訳して下さい。


cf. manual

https://www.etymonline.com/word/manual

"of or pertaining to the hand; done, made, or used  by  hand;" c. 1400, from Latin manualis "of or belonging to the hand; that can be thrown by  hand, " from manus "hand,

 手に関する、手を使って作られたの意味。ラテン語のmanus 即ち hand 手から。



カッコを付ける(カッコ付ける?)と


Manual labor was highly valued. Later  it  was  (the  man who worked with his head to achieve success in buisiness and  industry) who was looked  up to. Now  there  is  in  America a curious combination of (pride in having  risen to a position  where it is no longer necessary to depend  upon  manual  labor for a living) and (genuine delight in what one is able to  accomplish  with his hand).


 a combination of A and B の用法を見抜きます。curious 珍しい、奇妙な、珍妙な、と形容されていますので、珍妙な組み合わせ、即ち A と B は対立的な内容だろうと察しを付けながら身構えて読解すると良いでしょう。AとBとが対立的概念ですので、単に「AとBとの珍妙な組み合わせ」とするより、「Aである一方Bであるとの珍妙な組み合わせ」と和訳するとピッタリ来ると思います。


 Later 以下は強調構文風ですが、元の文章を考えてみましょう。


The man who worked with his head to  achieve  success  in  business and industry was looked up to.

 頭を使って事業や産業で成功を収めんと働く者が尊敬された。


 頭でっかちの文章ですので、強調構文と言うよりはそのまま倒置させたとも考えられます。倒置した場合 who  who となると奇妙ですので、後ろの who を thatにした方が混乱が起きません。


Later it was the man working with his  head  to  achieve  success in business and industry that was looked up to.

或いは受け身形は止め、


Later people came to respect such a man working  with his  head for success in business  or  industry.

「のちに、人々は実業や産業での成功を頭脳を使って求める様な者を尊敬する様になった。」


と書き換え、これを強調構文すなわち、


Later it was such a man working with his  head  for  success  in business or industry whom  (=  that)  people came to respect.


 「のちに、人々が尊敬する様になったのは、実業や産業での成功を、頭脳を使って求める様な者である。」

としても良いでしょう。


cf. come to do 〜するようになる



後半の文章

Now there is in America a curious  combination  of  (pride in having risen to a position where it is no longer necessary to  depend upon manual labor for a living)  and  (genuine delight in what one is able to accomplish with  his  hand).

 

 読解のキモは a combination of pride and  delight の構造が掴めればそれで終わりますが、pride と delight  以下おのおのが長すぎて読むのが苦しくなります。


*人間を主語に建てて書き換えましょう。


*pride in having risen to a position where it  is  no  longer  necessary to depend upon   manual  labor for  a living

生きる為に manual labor をせずとも過ごせる地位に上ったとの自尊心

→ manual labor をせずとも生活できることの自尊心


*genuine delight in what one is able to  accomplish  with  his  hand

 単純労働を通じて成し遂げられる事への純粋な喜び

→単純労働をしている間に感じることの出来る純粋な喜び


*later, now と時間の経過を示す言葉が続きますので、最初の文にも適当な時間の語句を加えます。




以上から全文を以下に書き換えます。

Rewrite:

In old times manual labor was highly  valued.  Later  it was such a man working with his head for success in business or  industry that people came to  respect. Today  general Americans have a curious combination of the pride in living a life  without manual labor and the pure  delight  they  can feel with it.


 「単純労働は昔は非常に価値があった。のちに、人々が尊敬するようになったのは頭脳を用いて実業や産業に成功せんと働く様な者である。今日、アメリカ人は一般に、単純労働せずに生活を送ることにプライドを覚える一方、単純労働に触れて純粋な喜びを感じ得るとの珍妙な組み合わせに生きている。」



*和訳に際しては、名詞→動詞化等の、<品詞変換の術>を使っています。


 大金持ちが使用人に料理、洗濯、掃除を任せ切りにする一方、陶芸で泥をこねて喜んでいる光景を思い浮かべてしまいました。




 これまで6題の入試英文をじっくり見ていきましたが、採り上げた出題例は塾長の目からしてどうなのかと感じるものばかりであり、一般的な入試英文がこれらの様に常に奇矯な様相を示している訳でもありません。

 繰り返しますが<簡潔平易で高度な概念を述べる>ことが意思伝達の道具としての語学に一番大切なことであり、文章構造が簡単に理解出来なかったりするようでは、何をか況(いわ)んや、です。1つの文章に多くのことを詰め込まずに適宜細かく分けて述べるなども必要なことです。世の中が忙しくなり合理精神が進んで居ますので、勿体を付けた修辞だらけの英文だと、歌舞伎役者が街に出て来たようになります。皆さんも<簡潔平易で高度>な内容であるか、を英文の価値を見抜く規準の1つにして戴ければと思います。









入試英文を添削するD



2020年2月5日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 普段一般的な英語の文章を多読している塾長からすると、大学入試の英語文に触れてギョッとなることがそこそこあります。入試英文も一つの英語の文章として、公平な観点から見てみようとのコラムの第5回目です。

 以下、過去問とはなりますが具体例を挙げながら入試英文を<添削>して参りましょう。最終的には改訂した英文を掲載しますが、そこに至る塾長の考え方、迷い?など思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。

以下参考辞書サイト:

https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/




There is general apathy to if not positive  distrust  of  science  itself as a search for truth; for, to the ordinary American,  science is identified with mechanical  inventions.

(早稲田大)

「積極的な不信とまでは行かないが、真理を探究するものとしての科学に対する冷淡さが社会一般にある。と言うのは、普通のアメリカ人にとっては科学とは器械の発明と同一のものだからだ。」


早速カッコで括れば、

There is general apathy to (if not positive  distrust  of)  (science  itself as a search for truth); for, to the ordinary  American,  science is identified with mechanical  inventions.


 最初の括弧内の前後を最初からカンマで括るべきですが、意図的に外して受験生を混乱させようとしている様に見えます。非常にタチの悪い英文です。文章を読み進めていても混乱してしまい意味が取れなくなります。


 if 以下の括弧内は従属節扱いの文が短縮省略されたものですので、science の語に対して、主節と従属節がそれぞれ前から掛かる構文はどうなのかと言うところで、塾長は幾らかギョッとしました。主節と従属節が1つの単語を兼用せず、if (これは本来文章を従える接続詞)以下を別個の独立した文として分けた上で短縮化する必要がある筈でが、一体どうなっているのでしょうか?


尤も、

He decided to go, although I  begged him not to.

 彼は行く事に決めた。私が行かないでくれと乞うたにも拘わらず。

 この文章では最後の  do so, 或いは go が省略されています。 do  so 或いは go を直接兼用しているのとは話が違います。ここで無理遣り従属節を主節に挿入すると


He decided to (although I  begged him not to) go.

 となりますが、矢張り珍妙な文章です。


if not

 勿論、もし〜で無いなら、の単純な仮定の文を短縮する用例も普通に見られますが、

even if, even though たとい〜であっても、の意味の文章を短縮したケースもあります。この場合、実質副詞的に用い、基本的に同類の意味を持つ語を<弱 +強>の順に並べ、前者がより蓋然性が高い事を示します。後ろには極端な例を持ってくることが通例です。


<〜とは言わないまでも>と訳すとピッタリ来ます。


A, if not B  (here A is  semantically weaker than B)

 B 程までに(程度が強くは)ないが A である

= A, not to say B


 A とB は等位の関係(同じ品詞、同じ語数)であって、しかも簡略な表現が挿入句としては求められるでしょう。


cf. semantically 意味的に


It's highly desirable, if not essential, for you to  go  on  a  diet.

 君がダイエットをするのは, 絶対必要だとは言わないが, きわめて望ましい。

= It's highly desirable, not to say essential, for  you  to  go on a diet.

= It's highly desirable for you to go on a diet,  even  if  it's  not essential for you to do so.


平易な書き換えの要点


*A と B は等位にした方がバランスが良さそうです。

 そこでまずは、不要な  positive  を削除し、

There is general apathy to, if not distrust of,  science  itself  as  a search for truth.

 とします。


*しかし、主節と従属節が名詞 science に共通に掛かる構文にはやはり疑問符が拭えず、


There is general apathy to science as  a  search  for  truth, even if  (there is)  not distrust of it.


 と分離させ、従属節にて science  as a search for truth を it で代用します。これが一番安全でしょう。但し、対照を表す2つの表現、apathy to と distrust  of が離れてしまいます。この対照的修辞表現を接近させつつ、文法的にも疑義を抱かせないだろう記述に改めます。


*there is なる記述は、主体が不明確であり、物理的に存在するのか、誰かが保有しているのかの明確性がありません。


There is no air in space.

→ Air is not present in  space.

 宇宙に空気は無い。

→  Space has no air.

 宇宙は空気を持たない。


There is apathy to science.

 科学に対する冷淡さがある。

 apathy は物質として存在せず人間の精神にありますので、 We  have apathy to science. としたいところですが用例が見付かりませんでした。


 ちなみに、以下の表現は取り得ます。

have (feel) sympathy for

 同情する、心を寄せる

People often have no  sympathy for the homeless.

 ホームレスに同情心を持たない人が多い。


cf. apathy: Greek apatheia, from a: without + pathos:  feeling

 感情を持たない、何とも思わない

apathy = being without  feeling


 そこで

There is apathy to science. を

→ We are indifferent to  science.

 我々は科学には冷淡だ。

 と書き換えます。


*ここで省略的な挿入表現を使いたいなら、接続詞 if を使わない単なる副詞句を採用します。


*scientific inquiry <科学的探求>の用法から a  serch  for を  an  inquiry  into に換えます。


*itself は無くてもOKでしょう。




 以上から全文を平易に書き換えると


Rewrite


Generally, we are indifferent to, not to  say  suspicious  of,  science as an inquiry into truth. That is because ordinary  Americans regard science to be equal  to  mechanical  inventions.


 「一般に我々は、真理を探求する1つのものとしての科学に対し、疑念を持つ程では無いが冷淡である。それはなぜなら、米国人は科学イコール器械の発明と普通見倣すからである。」


→ 「世間一般は真理探求のための科学に対し、疑念を持つ程では無いが冷淡である。なぜなら、米国人は科学イコール器械の発明だ、と普通見倣すからである。」


 まぁ、短兵急に実用性に直結するもの、すべきものとして科学を捉えているのでしょう。これは日本も同様で、「科学技術」なる言葉がありますが、以前から科学と工業技術、産業技術を同列に並べるのは奇妙だとの指摘は為されています。科学技術庁の名も正しくは産業技術庁と変更すべきでしょう。


*この様に簡潔に書き換えました。意味するところは同じです。比較すると上記入試出題文が無駄な鎧で身を固めた表現であることが浮かび上がるでしょう。この様に、入試英文は大した内容を述べるまでもないのに、わざわざ肩肘張った意味の取りにくい英文としてしまい、「結晶度」が高くない、形が歪んだものが散見されます。同一の思考内容を理路整然と平易且つ簡潔に述べるのが学術論文とすれば、感性・詩情豊かに簡潔に述べるのが文学と言えそうです。評論であっても平易簡潔が望ましいでしょう。当然、(平易簡潔で高度な概念を述べる)>>(難解な形式で詰まらぬ事を述べる)、ですね。


形式的に難解な英文をカッコで括ったりひっくり返して読解せんとの姿勢には、漢文を相手に苦闘した古い時代の<悪癖>或いは<因習>が大学入試の世界に別の姿形として遺残していることを示すのではと思います。これが、入試が片付いたら入試英語とはさっさと縁を切りなさいと塾長が主張する1つの論拠です。受験産業に関わってメシの種とする者は別として(塾長もその一人?!)。


* apathy の前の general を引っ張り出して文章全体に掛かる副詞 generally にさせました。Generally speaking, In general <一般的には、普通には、通常>と同じ意味ですが、皆が普通にそうだ、そう考えるのが少数者では無く大多数だ、との意味です。


cf. regard A to be B  A を B とみなす

= regard A as B


cf. be identified with = be  equal to 〜に等しい


cf. ordinary 普通の、ordinary  people 普通の人々


→和訳時に、副詞的に扱い、<見倣す>に掛けると自然になります。<普通の人々は見倣す>を<人々は普通に見倣す>とする方法です。この様に和訳時に英語の品詞を別の品詞扱いにして適宜再配置すると自然な日本語になります。逆に日本語を英訳する際にこの方法を用いて英語らしい英文とすることも出来ます。<品詞変換 + 配置転換の術>との塩梅です。この<品詞変換 + 配置転換の術>については後日まとめてコラム化しようと考えています。




 これまで5題の入試英文をじっくり見ていきましたが、塾長が展開したのと同じ遣り方で、入試英文を「解読」し、用いられている語句の用法を辞書で(出来れば英英辞典で)調べて知識とする習慣を身につければ、英文の読解力は格段に上がる筈です。更には自分だったらこう書き換えるのだが、と英英翻訳を行うと完璧に近づきます。この様な訓練を重ねると、脳内での和訳変換無しに、最初から目に入る英文の意味のままに読み進められるようになります。平易な英文であれば一晩で数十〜百頁程度は読みこなせる様にはなるでしょう。その様なレベルに到達してのちに、ギョッと感じる英文に出会った場合には英文の方がおかしいとの疑義を自信を持って抱いて良いと思います。まぁ、精読と多読をインターバルで行うと良いと思います。









入試英文を添削するC



2020年1月20日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 普段一般的な英語の文章を多読している塾長からすると、大学入試の英語文に触れてギョッとなることがそこそこあります。入試英文も一つの英語の文章として、公平な観点から見てみようとのコラムの第4回目です。

 以下、過去問とはなりますが具体例を挙げながら入試英文を<添削>して参りましょう。最終的には改訂した英文を掲載しますが、そこに至る塾長の考え方、迷い?など思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。


以下参考辞書サイト:


https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/




However, I feel that the teacher's role is  more  fundamental  than the critic's. It comes down ultimately, I think, to the  fact  that his first obligation is  to the truth  of t he  subject he is teaching, and that for the reading of  literature ever to  become  a  habit and a pleasure, it must first be a  discipline.

(慶応大)


 やや堅い内容の会話風の文章でしょうか。一見遠慮がちな様でいながら力強く述べる気持もあるとの文章であり、ゴテゴテしたところも有りますが知性と香気の感じられる文章です。全く問題無く、塾長がギョッとなる箇所はありません。意味が取りにくい箇所は適宜動詞を脳内追加(名詞を動詞化)しながら読み下すしかありません。この辺の力量を問う点に於いて、この入試英文は文章それ自体は別として良く出来た問題と感じます。


 カッコで文章の構成要素を適宜括れば、

However, I feel that the teacher's role  is  more  fundamental than the critic's. It comes down ultimately, I think, to the  fact  {  (that his  first obligation  is to the  truth  of the  subject he is teaching), and  (that for the reading of  literature  ever to  become a habit and a pleasure, it must  first  be  a   discipline).}


 となります。構文的には難易度は高くはありません。クールな視線でさっさかカッコで括ると良いでしょう。


 省略や倒置無しでさっと書き換えて粗訳すれば、

However, I feel that the teacher's  role  is  more  fundamental than the critic's role.

 しかしながら、教師の役目は批評家の役目よりはもっと根本的なところがあると感じます。


I think it comes down  ultimately to  the  fact

 〜と言う事実にまで究極的に落ちると思います(詰まるところ〜と思います)


that his first obligation is to the truth  of  the  subject  he is teaching,

 最初の義務は自分が教える教科の真実に向けてのものであり


and that it must first be a discipline  for  the  reading  of literature ever to become a habit and a pleasure.

 文章を読むことがしかと習慣となり喜びとなること、それこそが最初の躾けであるべきです。



 カッコで括ることが出来たなら、次は文章を読み下しながら字面通りにこの様な粗訳まで頭の中でさっと組み立てます。こなれた日本語まで持って行くのは最後で結構です。主張の対句表現、全体の文意を捉えた上で語句そのものにとらわれずに自然な日本語を当てます。上の程度の粗訳まで行ければ良い配点を貰えるかもしれません。ここまで数分で到達出来れば軽く合格も出来そうです。


 「しかしながら、私は教師の役割は批評家のそれよりはもっと根本的なものを抱えていると感じています。役割は詰まるところ次の様な事実に帰結すると思うのです。教師の第一の義務は自分が教える教科を正しく教えることであり、文章を読むことがいずれ習慣となり喜びとなるように最初に生徒達にしつけるとの役割です。」

 これで満点でしょう。



come down to noun (名詞)

obligation to noun

discipline for someone to do

 と、用法は異なりますが動詞や名詞のあとにto を頻用しています。to は〜への方向性、未来性を示す品詞であり、<〜しむける>や<自ずとそうなる>の気持を添えます。最初の come down to noun の表現は、述べる側に「言うなれば」との自然にそうなる、詰まり、婉曲なモノの言い方の気持が含まれていることが判ります。これは I feel, I think と自分の感じたこと、考えですよと重ねて言葉を加えていることからもうかがえます。まぁ、だから控えめ風な体裁を取る文章になっている訳ですね。教師らしい?責任を上手く回避して逃げの手を打ちながら意見を述べる物言いの仕方が良く出ているとも感じますが如何でしょうか?


come down to sth/ do

〜に帰結する、結局〜になる、落着する、責任が回ってくる

It came down to a single choice between to  be  or  not  to  be.

 最後は生か死かのどちらかを選ばなければならなくなった。

With my father's death, it has come down  to  me  to  support  my brothers.

 父が亡くなったので弟達を養う責任が私にまわってきた。


obligation to  sth

〜に対する義務

I have no legal obligation to  that  child.

 私はあの子どもに対して何の法的責任もない。

= I have no  legal obligation  to raise that  child.

 あの子を育てる法的な義務はない。


obligation is to the truth

→義務は真実に向けてのものです、では日本語として意味が不明ですので動詞を補って理解します。真実を「守る」 「教える」「沿う」義務がある、と考えれば良いでしょう。義務とはもともと履行されるべきものですから基本は「遂行する」ですが、文脈に合わせそれの派生語を考え当てはめます。教科に関する義務ですから、〜の真実に沿って教える義務がある、としてもよいでしょう。

have an obligation to  teach  the truth 

真実を教える義務がある、嘘を教えてはならない

must teach the truth


cf. obligation to do 〜する義務がある

We have a legal obligation to  pay our taxes.

 私たちには税金を払う法的義務がある。


cf. be obliged to do 〜するのを余儀なくされる、せざるをえなくなる

We felt obliged to obey his orders. 彼の命令に従わなければならないと思った。


be obliged to someone for 〜のことで感謝致します (丁寧な表現)

I'm deeply obliged to you for your kindness. ご親切のほど深く感謝いたします.



最後の

for the reading of literature ever to become a  habit  and  a  pleasure

 これは

reading of literature surely becomes a habit and a pleasure

 文章を読むことがしっかりと習慣となり喜びとなる、の意味を、名詞句化したもので、to 不定詞の主語を for 以下で添える形式です。ever は強めの意味、<しかと>と捉えると良いでしょう。ここでは、first 真っ先に、に強めの意味が込められていますので省略しても良いと思います。


It was my great pleasure for him to have passed  the  entrance examination.

 彼が入試に受かったのが私の大きな喜びでした。

= For him to have passed the entrance  examination  was  my  great pleasure.

= I was very pleased to know that he (had)  passed  the  entrance examination.

 これは He passed the entrance examination. 全体を名詞にして It で受けたものですが、for + 意味上の主語 + to不定詞の形に分解しています


 <for 〜to不定詞>は意味的には、〜が〜すること(名詞用法)、〜が〜するべき(形容詞、限定用法)、〜が〜する様に(副詞用法)、の3つの意味を持ち得ますが、ここでは<for 〜to不定詞>= discipline ですので最初の用法である名詞用法としました。to不定詞は本来的に〜する方向にある、の意味を含みますので、読書することが楽しい習慣となる様に躾ける、と、名詞である  discipline を<躾をする>との動詞と見なし、動詞を修飾する目的の意味の不定詞風に訳しても寧ろ日本語としてはしっくり来るでしょう。<品詞変換の術>との塩梅です。しかし文法的には名詞である discipline に対し、to不定詞は副詞的な修飾はできません。名詞の言い換え、同格としての用法、或いは、This   is the  apple for me  to  eat これは僕が食べるリンゴ、の様な用法に限られます。


 the fact that のthat 節に文章を押し込んでいる関係から更にその内部でthat 節を利用するのを避ける為に<for 〜to不定詞>構文にしたのだろうと思います。


単独であれば、


It must first be a discipline that the reading  of  literature  should  ever become a habit   and a pleasure.

 文章を読むことがしっかりと習慣となり喜びとなること、それを最初の躾けとすべきです。

 とし得たでしょう。



literature

文献、文学、文章、書物

 the reading of literature は、本を読むこと、としました。<文学を読むこと>を躾ける、ではちぐはぐです。文学を読む、とは躾けられて本を読む段階を超えての行為ですので。ここでは躾けの語が登場しますので、小学生相手の教育の話と考えます。因みに学術論文の最後に必ず添えられる Literature Cited  は論文本文内に引用された文献のリストのことです。




書き換えの要点


*遠慮がちでいる様で強い主張を行う二律背反的な口幅ったい文章を、明確な主張をより堂々と述べるものとします。まぁ、平易な文章にする訳です。

*yet は複数の意味を持ちますが、会話文では  however  は大仰ですので yet を採用します。

*the fact that の中身が2つ続いて重いので、中身を一続きの文にします。

*<dicipline 鍛錬、躾けの名詞>と、<for to 名詞句、この中にも名詞が多用される>を is で繋ぐ硬い表現を、動詞を用いて平易に書き換えます。

*become a habit and a pleasure を別の表現にします。



以上から、

Rewriteその@:

Yet I think the teacher's role is more  fundamental  than  the critic's.  It comes down eventually to the fact that he must  teach the truth of his subject and thus  train  first  children to get used to reading books with pleasure.


 「それでも教師の役割は批評家に比べるともっと深いものがあると思うんですよね。煎じ詰めれば、教師は教科を正しく教えねばなりませんし、斯くして子供達が楽しく読書する習慣を持つ様にまず最初に躾けねばなりません。」


 批評家は個人の思想で思うところを述べて良いが教師はそうはいかない、本を批評的に読むのではく、まず読書するそのものの楽しみを子供達に習慣づけねばならない、教師はもっと深いことを考えているのですよ、と言う話ですね。


train someone to do

〜するように教え込む; 鍛える.

It is important to train  children to obey.

 言うことを聞くように子供たちを教育することが大切です。


get used to〜に慣れる



It comes down eventually to the fact that

 この表現が回りくどくて大仰ですので、スッキリした表現に換えます。


RewriteそのA:

Yet I think the teacher's role is  more  fundamental  than the critic's. In other words, he has primarily an obligation to  teach  the truth of his subject and train  first  children  to form the habit of reading books with pleasure as well.

 「それでも、教師は批評家と比べるとより根本的な役割を持っていると思うんです。換言すれば、教師は第一に、教科を正しく教えねばならない義務がありますし、子供達が楽しく読書する習慣を身に付ける様に最初に躾けねばならない義務もあります。」


 修辞上の鎧を削ぎ落とし裸にさせたら簡潔明快な英文になりました!意味内容的には最初の英文とほぼ同じです。


cf.

form (get, acquire, contract, pick up) the habit of

〜の習慣がつく









入試英文を添削するB



2020年1月15日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 普段一般的な英語の文章を多読している塾長からすると、大学入試の英語文に触れてギョッとなることがそこそこあります。入試英文も一つの英語の文章として、公平な観点から見てみようとのコラムの第3回目です。

 以下、過去問となりますが具体例を挙げながら入試英文を<添削>して参りましょう。最終的には改訂した英文を掲載しますが、そこに至る塾長の考え方、迷い?など思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。


以下参考辞書サイト:

https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/




Yet, somehow, historians or political  scientists  studying  our  own age must  try to identify the landmarks that lead to  the  present. They must select  from the  countless  events  of  recent history those which seem the most  important and  which  provide some clue to the mysteries of  modern  history.  For only some understanding of the past enables us to  know   where we are and  provides some paths  through  the  forests in the future.

(青山学院大、問題文の後半部分)


 「それにも関わらず、我々自身の時代を研究している歴史家或いは政治学者は、現在に通じる道しるべが何かを何とかして見い出そうと努めねばならない。近世史の数え切れない事象の中から、最も重要であり且つ近代史の秘密解明に何らかの手掛かりを備えるそれらを選び取らねばならないのだ。なぜなら、過去の何らかの理解のみが我々が何処に立っているのかを知らしめて呉れ、未来の森を抜ける幾本の小道を備えるからである。」



 構文的には大した難解性は無く、基本的に伸びやかな英文です。所々をカッコで括って読解を進めるのみです。しかしながら、当たり前すぎる様な内容を、もって回ったような表現でごてごてと述べ立ててあり、その意味に於いては悪文の類いと感じます。文意は、<現在を知るには過去を理解するキーとなる事象を探し出す必要があり、それはまた未来を理解する手掛かりにもなろう>、との最後の一文に全て集約されています。まぁ、文意を4文字で要約せよと言われれば只の<温故知新>ですね。



 カッコで文章の構成要素を適宜括れば、

Yet, somehow, (historians or political  scientists  studying  our own age)  must try to identify the landmarks that lead to  the  present. They must  select (from the  countless  events  of recent history) those { (which seem  the most important)  and  (which provide some  clue to the mysteries  of  modern  history)}. For (only some  understanding of the  past) {  (enables us   to know where we are)  and  (provides  some  paths  through the forests in  the future).}


 となります。出題文を読みながらさっさかカッコで括り、頭の中の思考を視覚化すると英文解釈がとてもラクになります。これが出来れば問題は7割方解けた様なものです。


ざっと手直しすると、


Yet, historians or political scientists  studying  our  age  must try somehow to identify the landmarks that lead to the  present. They must select from the countless  events  of  recent history those which seem the most important and  provide some clue to the mysteries of modern history.  Just  understanding  the past enables us to know where we are  and  give any paths through the forests in the  future.


 とでもしましょうか。



identify

To establish the identity of.  独自性、唯一性、主体性を確立する、他に、同一視する、の意味もありますがここでは以下の意味になります。

To ascertain the origin, nature, or definitive,  characteristics  of

 〜の起源、性質、定義、特徴を(誰だと)確認する、(見分けて本質を)突き止める、見分ける


cf. be identified with = be equal to 〜と一致する、同一視される、等しい


 上記では、現在へと通じる道しるべとなるものを様々な事象の中から見分けて突き止める、即ち<見つけ出して他とは区別する>の意味ですが、<見つけ出す>こととは他のモノとは違うとレッテルを貼る意味も含んでいますので単に<見つけ出す>で良いと思います。identify の意味が不明でも、次の文で select  from  <〜の中から選択する>、と言い換えが為されています。



 最初の somehow  (なんとかして)、以外に some が3個次々と出現しますが、最初の2つは単数形名詞を修飾しますので certain 詰まりは<或る、何らかの>の意味であり、最後は複数形名詞に係りますので、<幾つかの>の意味ですね。英語は同じ単語が続く冗語性を嫌いますので、感心した記述ではありません。誰でも文章を書くときは頭の中に前の文章で使用した語句が残り、どうしても同じ語句を繰り返し使いがちになります。これを推敲して別の表現に体裁を整えるのが肝要です。



 最後の文の初頭に For が立ちますが、for は前置詞として多様な意味を持ち、詰まりは意味が曖昧性を抱えます。接続詞としての for は理由を表す用法があり、理由を示す従属節の先頭に貼り付けて用います。例えば、as, since, because などと同様に。但し、従属節ですから、疑問文で理由を尋ねられた時の答えに、Since ----. 〜の理由からだ、との用法では単独で利用する事は出来ますが、上記文の場合は単に従属節を独立文としているので適当ではありません。経験しない表現でギョッとしました。文章の流れとしては  For   only 〜で、只〜の者に対しては、と文が展開すると思いきやそうではないので、なんだこれはとなった訳です。文章の最後でキモとなる理由を述べる大切な箇所ですので、曖昧性を含んだ用法ではなく、というのは〜だからであると、どうせなら明確な表現に改めるべきです。




書き換えの要点


*yet は複数の意味を持ちますので、despite that の意味を明確に示すために however, nevertheless, nonetheless に置き換えます。

*somehow try to do 何とかして〜しようとする

→ manage to do 何とか実現する、の意味になります。try  to  do の表現だと、しようとする、ですが、それが実現し得たのかは不明です。


*for → This is because なぜなら、と続けるまでもなく、次の文を続ければ理由を述べることが分かりますので省いて良いでしょう。


*only some は only が some に掛かる様に誤解(ホンのちょっとだけの意味)を与えますので some は削除します。

*only は〜だけと心情的に訴える色が濃くなります。理性的な判断を述べたいのであれば solely か just に換えます。

*関係代名詞の多用は文がゴテゴテして重くなりますので数を減らします。日本語で言うと、〜するところの〜、となりますが、文章がごつごつしますね。



以上から

Rewrite:

Nonetheless, historians or political  scientists  studying  our age should manage to identify the landmarks leading to the  present. They must select from the  countless  events  of  recent history those which seem to be most important and  help  provide some clue to the mysteries of  modern  history.  Just understanding the past enables us to know where we  are and can give any paths through the forests  in  the  future.


 「それにも関わらず、我々自身の時代を研究している歴史家或いは政治学者は、現在に通じる道しるべが何かを何とかして見い出す必要がある。近世史の数え切れない事象の中から、最も重要であり且つ近代史の秘密の解明に何らかの手掛かりを与える助けとなる道しるべを選び取らねばならないのだ。過去への理解のみが我々が現在何処に立っているのかを知らしめて呉れ、未来の森を抜ける何らかの小道を与え得る。」



 ごてごてした表記を、意味内容を変えること無く、より簡潔明快に書き換えが出来ました。


cf.

countless

数え切れない、無数の

priceless  

きわめて貴重な、値段の付けられない、(口語)とてもおもしろい




 「以下の英文を院生に頼んで入試問題用に試作させたのだが、根拠を示しつつ適宜改訂せよ」 などの入試問題が登場したら傑作ですね。


 「文章は訳さなくて良いので適宜カッコで括り、文章の構造を明確にしなさい」 なども面白ろそうです。


 元々の英語が曖昧性を含んでいて優れた表記ではない文章に対し、それを英語を取り巻く情報、常識を元に上手く訳すまでに到達しないと入試英語への回答としては駄目だと宣う英語指導者も散見しますが、それは間違いです。native が書いた文章が、或いは入試問題が絶対である様な態度は良くありません。native であっても普段から明確な表現を心がけて英文をモノする修練をしている者もいれば、内輪でしか理解出来ない表記のままにしておく者も居ます。

 塾長も生物学徒として英文の論文を週に2本ずつは一通り目通しする習慣にしていますが、簡潔且つ見事な表現の論文もあれば、多義に取れる明確性の低い論文(非英語圏からの投稿が多い)も目にします。基本は書かれた文字の通りに解釈するのが論文の読解ですので、読み手側がウラまで斟酌して遣る必要はありませんし、行間を読むなどと悠長なことをする必要もありません。相手との明確な意思疎通を図る道具としての英語の語学学習と、英文学(もどき)の勉強とを混ぜてしまってはいけません

 入試の英文を見ても然りですが、評論文であれば、余計な修辞や冗長な表現を避け、読者に誤解の発生しないように明確なテキパキした表現を行うべきが、多義性を含んだ曖昧な語句を採用したり、突拍子も無い稚拙な構文を出してきたりで大変驚かされる時がそこそこあります。駄目な英文を受験生側が補ってまで解釈して遣る必要は全くありませんが、文意が通らないまでの非道い文章はさすがに入試には出題されないとは思います。

 まぁ、語句をカッコで括って倒置を理解するなどの解読技法を一定程度身に付け、あとは単語や熟語の用法を覚えていけば英文読解力自体は短期間でも相当の伸びが期待できます。英語とはなんと単純な学習方法で足りる科目なのでしょうか困っている方は当塾の指導を是非一度受けてみたら如何ですか?弱点を見抜きオーダーメードの徹底的な指導を行いますが、成績は指導を受けただけ確実に底上げが図れます。








入試英文を添削するA




2020年1月10日

 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 まともな英文だったものを入試判定の道具とすべく、あれこれ加工したものが入試の英文であると前回述べました。引き続き、この場では入試英文も一つの英語の文章として公平な観点から扱い、<添削>して参りましょう。最終的には改訂した英文を掲載しますが、そこに至る塾長の考え方、迷い?など思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。

以下参考にした辞書サイト:


https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/




To form a society individuals must  be  related  in  a  certain manner.  For  instance, if people do not communicate with  each   other, if they  are  perpetually in  aggressive  physical  combat, if they do not  cooperate with   each other, and do  so   routinely over a period of  time, then  their  interactions  are  not social and they don't  constitute a society.

(早稲田大学)


 「社会を形成するためには個々人はある特定の遣り方で関係せねばならない。例えば、仮に人々が互いに意思疎通せず、終わりの無い攻撃的な実戦状態に在り、互いに協力し合わず、或いは単に一定期間の決まり切った協力であれば、彼らの相互作用は社会的とは言えず、社会を構成しているとは言えない。」


早速、カッコで括ると、

(To form a society) individuals must  be  related  in  a certain manner.  For  instance, [(if people do not communicate  with   each other), (if they  are  perpetually  in  aggressive  physical combat), (if they do not cooperate with   each other,  and do   so  routinely over a period of time)],  then  [(their  interactions  are not social) and (they don't constitute a  society)].



 <例えば>以下に仮定の従属節を3個配列し、最後に言うべき結論を持ってくるとの構文(=文章の形式)ですね。文章自体は平易ではあるものの、如何にも日本の入試担当者が好みそうな英文となっています。内容的には当たり前のことが述べられているだけで、何ら面白みのある文章ではありませんが。判り切った馬鹿馬鹿しい次元のことに付き合わされる受験生が辟易する気持が塾長には良く理解出来ます。この様な精神的苦行の上に受験が成立しているのだとすれば何か問題の本質からは乖離している様に見えます。


 意味内容としては、社会を形成する為に必要な条件を挙げねばなりませんので、そうでは無い逆の条件を列挙するのがそもそも婉曲な力の弱い文章表現となっています。また実際のところ、従属節を複数個、しかも3個も列挙する構文が適当であるのかの疑問が出て来ます。塾長はこの様な英文はほとんど見ません。垢抜けしない三文小説を思わせる記述にも思えます。


*まぁ、大したことを語るまでも無いのに文章に勿体を付け過ぎており且つ冗長です。


 また、3つめの条件 if they do not cooperate with  each  other,  and do so  routinely  over a period of time では、<,and >でもう一つ追加の記述が入りますが、カンマの前で一旦3つのif 節が切れて、更に別の文がここに追加されるのかと身構えますがそうではありません。カンマは削除すると同時に、意味的には and で繋ぐのではなく、or  if they  do  so  (= cooperate  with  each  other)  just routinely over a period  of  time) <或いは単に一定期間、機械的に協力するだけであれば>、と or で繋ぐと明確になるでしょう。


 そこで堅苦しくなりますが以上から formal に書き換えの一例としては、


Rewrite その@

With a view to constituting a society,  individuals  must  be related in a certain manner. For instance, people should  communicate and cooperate with each  other,  without  being perpetually in aggressive physical combat or just routinely  social.


 「社会を構成するためには、個々人は一定の遣り方で関係する必要がある。例えば、絶え間なく攻撃し合う態度や或いは単に形式的に社交的であることを排除し、人々は互いに意思疎通し協力し合あうべきである。」


perpetually in aggressive  physical combat

just routinely social over a period of  time

 は軽い対句表現ですが、over a period of  time は不要と判断し削除しました。


 言うべき主張を間延びしてダラダラ記述すると小学生の作文のようになります。短くビシっとキメることが肝要です。これは英語に限らず日本語でもそうなのですが。


perpetual は

without end, eternal

continuing or enduring  forever; everlasting.

continuing or continued without intermission or  interruption

 永遠の、際限の無い、終わりの無い

 の意味ですが、perpetual friendship 貴女との友情は永遠よ、との気持は表明し得ても、perpetual combat と大上段に振りかぶるのもいささか奇妙に感じます。<絶え間の無い>ことを心情的に強調する表現となります。まぁ神様の視点でこいつら人間共はいつまでも永遠の争いを続けるものだ、との気持でしょうか。単に continuously 絶え間なく、の方が淡々として良い様にも感じます。


 そこで

Rewrite そのA

With a view to constituting a society,  individuals  must  be related in a certain manner. For instance, people should    communicate and cooperate with each  other,  without  being continuously in aggressive physical combat or just  routinely   social.


 「社会を構成することを視野に入れると、個々人は一定の遣り方で関係する必要がある。例えば、絶え間なく攻撃し合う態度や或いは単に形式的に社交的であることを排除し、人々は互いに意思疎通し協力し合あうべきである。」


 ここまで直してきてナンですが、最初の with a view  to (〜に視点を向けると、〜するためには)の重々しさと述べられている内容の軽さとがちょっとアンバランスな様な気もします。「社会を形作るには争っていないで互いに意思疎通して協力し合いなさい」などと、そもそもそれを述べるために一体誰がわざわざ文章をモノするのか、との疑問に立ち返ってしまいます。もっと気の利いたことをモノしないと評論家デビューは不可能です。小中学生相手に説教している状況でしょうか?


* without A or B (A でも B でもなく)の A とB を等位にします。



 そこで更に軽く、

Rewrite そのB

In constituting a society, individuals  must  have  a  relationship. For instance, people should mutually communicate and  cooperate without making combat or  pretending  social.


 「社会を形作る際には個々人は関係し合わねばなりません。例えば、争ったり仲良い振りをしたりせずに、互いに意思疎通を図ったり協力し合う必要があるのです。」


*relation の中身が次の文章で具体的に述べられますので、最初の文ではゴテゴテ述べずにあっさりと記述します。


 これと同じ事を述べるのに最初のゴテゴテした英文を作る事の奇怪さがお判り戴けるでしょうか?繰り返しますが勿体を付けすぎている様に見えます。塾長コラム 『フランス語の勧め』 にて後述しますが、同一内容を簡潔明快に述べることが大切であり、逆に言えば中身の主張に自信があるからそうなる訳です。主張が研ぎ澄まされるほど内容の結晶化が進み、透明に近づくとも言えるでしょう。世人、特に女性が宝石を好み高値で取引されるのは、それが分かり易いまでに美しいからです・・・。


cf.  physical (⇔ mental)

物質の、肉体の 

a physical impossibility 物理的不可能性

physical anthropology  形質人類学


physics  物理学

physician  医師、(特に) 内科医




 大学入試の長文読解では、判りきったもっもとらしい内容の評論もどきが多数登場し、その説教臭さに辟易させられる一面もありますが、逆に言えば多少判らない語句や単語が出て来てもそれにとらわれず(と言うか考え出すと余計な時間を喰う)、意味内容を類推して自然な日本語にパッと仕立てるのも良い様に思います。それで満点を狙わずともそこそこの配点を獲得する訳です。所詮、基本は18歳の若者が受ける様に作成された試験のレベルなのですから、常識的な論説のストーリー展開を予想して外れることはないと思います。

 ギョッとさせられる様な colloqual にはとても見えない英文表現を目にすると、大学入試英語界の特殊性を色濃くも感じますが、これはウラを返せば日本の高校英語教育の偏向を物語るものでもあるでしょう。

 まぁ、割り切ってしまって英語での得点を確実にし、希望とする大学に<取り敢えず>入ってしまうのが最善でもあります。その後に英語力が身に付いた段階で、自分だったらこの英文表現はこのように書き換えるのだが、の視点を持ちながら英文に触れると実力は格段に上がると思います。但し、通過儀礼めいた入試英文の類いとはさっさと手を切り、英語圏の優れた文章 (定評ある評論、一流の文芸など) にまずは浴びる様に触れることをお勧めします。









入試英文を添削する@




2020年1月5日

  皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 新年明けましておめでとうございます。本年も本コラムを利用してどうぞ勉強を進めて下さい!

 英語の成立に纏わる話題をあと数回述べる予定でいたのですが、入試も近づいて来ましたので、6回に亘り、入試英文に関する話題を押し込むことにしました。皆様のカンフル剤となれば幸いです。

 さて、普段一般的な英語の文章を多読している塾長からすると、大学入試の英語文に触れてギョッとなることがそこそこあります。意味は通るが木に竹を接いだ様な聞き慣れない表現であったり、鹿爪話を述べる評論文の筈が表現が非常に稚拙だったりもします。一つには、 native  speaker には通りの良い英文だと却って出題の意図に沿わず、敢えて入試問題のレベルに加工する(劣化させる?)過程でちぐはぐな表現、子供じみた間延びした英文になってしまう可能性もあるでしょう。出題する側も色々と大変ですね・・・。言い換えれば、試験用にあれこれ加工してある英文でもありますので、英文としてお手本とすべき文章とは別個のものと考えても良いでしょう。

 英文長文読解の参考書の内、定評あるものをアマゾン通販から購入して紐解いてみましたが、解説者はそれらの入試英文をカッコで要素を括って分解し、どの要素がどこに掛かるのだとまでは、恰もパズルを解くが如くに、親切丁寧には教えてくれますが、「一流大にも拘わらずこのような英文で出題するとはケシカラン」とはけして主張はしません。大手予備校の講師がその様な参考書を執筆している訳ですが、彼らは過去の出題傾向を把握、分析し、どの様な解法でアプローチすれば入試英語は突破出来るとの当然ながらのスタンスに立ちますので、日本の大学の入試問題以外の英文を浴びる経験が少ない可能性もあるでしょうし、また<貴大学の入試英語は良くない>とクレームを付ける訳にも行かない立場にもありましょう。

 内容的にはそこそこ優れていますので、一定以上の実力を既に備えて居る受験生はその手の参考書を購入してせっせと自己勉学に励めば、格安で大学合格の栄冠を勝ち取ることが出来るでしょうね。塾を開設している身ですが、勉学自体にはお金を掛けず、世に出ている資材を上手く利用するのがキモと考えます。時に自分の泳法を見て貰うためにプロの水泳指導者に助言を貰うのも有益ですが。最先端の資料と資材が必要な研究活動には勿論ゼニを惜しんではなりません。

 当塾は大学入試のみに特化したスタンスには無く、それを超えた英語読解力のレベルアップを目標にしていますので、その様な制約無く、入試英文も一つの英語の文章として、まだしも公平な観点から扱う事が出来ます。

 以下、過去問となりますが具体例を挙げながら入試英文を<添削>して参りましょう。最終的には改訂した英文を掲載しますが、そこに至る塾長の考え方、迷い?など思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。


利用した辞書サイト:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/




Frank talks between an adolescent and  his  parents  often  reveal that  the adolescent is basically willing to rely on his  parents for protection in  many  situations.

(日大)



 言いたい事は、

「若者と両親との間で歯に衣を着せない遣り取りをすると、基本的には若者が自分を様々な状況で守る様に両親に依頼する気持でいることがしばしば明るみにされる。」 


 まぁ、親には反抗的な態度を取っても、独立して自身の身を守る力量無く、基本は親に守って貰いたいと虫良く?依頼する積もりでいる、との訳ですね。若者は一丁前に巣立つ前の半独立的な状況に有る、とのもっともな論評です。大学入試に当たっても、受験に掛かる費用、大学の授業料、生活費などを全て自前で稼ぐ若者は皆無に近く、当然ながら誰でも親の経済的庇護下に入らざるをえませんね。塾長の場合は、都立高から国立大に進み(当時の授業料は格安だった)、大学の専門学部に進学してのちは授業料免除、大学院は入学金半額免除となり、更には日本育英会から奨学金を貰い(研究職に就いたので返済は免除)、自宅通学の上に家庭教師と塾講師で稼いでいましたので、親にはあまりゼニの負担を掛けずに来れたのが密かな矜持でもあります。只で獣医師になったようなものです。


 年明け早々からの塾長の自慢話はさておきまして!、この英文をまず目のままに読み進めると、Frank さんが何かについてこれから話すのかぁと頭の中で構えますが、<若者と両親との間で>の表現が入り混乱させられます。Frank さんが若者と両親の間に割って入って一体何を話すのかとなります。


 どうやら Frank さんではなく、形容詞の frank (相手が気分を害そうともお構いなしに本音を言う態度、率直)であることが判っても、更にtalk (about  something) between 〜について話を交わす、との表現も見た経験がなくギョッとさせられます。複数人の間で何かを話題にして言葉を交わすのであれば、それは<会話>ですのでそれに適した言葉を使うべきです。


 talk とは一方から他方に話をする動作ですので、talk between 〜の間で話を交わす、は意味は分かりますが真に colloquial (問題なく通用する表現)かどうかですね。同様に、speak  something  between, say  something  between, tell something between なども聞いたことがありません。意味は分かりますが。


 どう言う意図でこの様な入試英文が出題されたのかは不明ですが、日大流のおおらかさ、伸びやかさを逆に感じない訳でもありません。逆に、毎年この問題を出題するのも面白いでしょう。我が校の入試問題をきちんと勉強してくれているな、で得点をドカッと与えると言う次第です。


 実際に

have a frank talk with each  other 互いに打ち明け話しをする

 この様な真っ当な表現もあります。<互いに>とは、f rom  A  to  B  and from B to A の意味になります。


この表現を使えば、



Rewrite その@

When an adolescent and his parents  have  a  frank  talk with each other, it is often apparent that the adolescent is willing  to  rely on his parents for protection  in  many  situations.


 若者と両親が互いに本音を語り合う時には、若者が多くの状況のもとで自分を庇護して欲しい気持でいることがしばしば明らかである。



 これが平易且つ一番良い書き換えに思います。


Rewrite そのA

 受け身型にせずに、そのままの形で、Frank  が人名では無い事をまず明確に示すためには以下に取り敢えず書き換えます。


A frank talking between an adolescent  and  his  parents  often reveals that the adolescent is willing to rely on his parents  for  protection in many situations.


 意味は通じますが talk between の表現にまだ幾らか疑問が残ります。


 そこで

Rewrite そのB


An honest conversation between an  adolescent  and  his parents often reveals that the adolescent is willing to rely on his  parents for protection in many  situations.


 若者と両親との忌憚のない会話のなかで、若者が自分を様々な状況で守って呉れる様に両親に依頼しようとする態度がしばしば明るみにされる。


 としてみました。


* honest = frank です。誠実な、の意味では無く、率直な、自分に正直な、の意味になります。会話でも to be honest, honestly (ぶっちゃげた話だけど)が頻用されます。


 ちなみに 

be willing to do

= disposed or consenting, inclined, prepared

= willingly

 その気になっている、気持が傾いている、準備が出来ている


I am willing to overlook your mistakes.

 君の過ちを大目に見ようかとの気持になっている。


反対語

 be unwilling to do

 be reluctant to do

= unwillingly, reluctantly

〜しようとの気持になれない


 I am unwilling to help them.

 I am reluctant to help them.

 彼らを助けようとの気持になれない。