KVC Tokyo  やり直し硬派英語塾

英語長文読解 短期集中 個別指導 

                             




塾長コラム記事




英語塾開設のご挨拶

2019年4月1日















塾長の不定期コラム




*時系列でそのまま下に追記しています。 即ち上から掲載順に配列しています。







20211103  ハロウィーン四方山話



 渋谷周辺のハロウィーンも大した騒動に至る事もなく今回も終わった様ですね。ハロウィーンは魔法使いや怪物などに変装した米国の子供達が近所の家を訪ね、ドアを開けた者に対して trick or treat と叫び、半ば脅しながらお菓子を求めて回る行事です。お菓子を出さない渋ちんの家に対しては植木をトイレットペーパーでぐるぐる巻きになどして退散する場合もある様です。

 trick も treat も名詞ですが、treat は食べ物を奢る事の意味はあるものの、trick の方は前もって計画して人を騙す、転じて奇術を見せることなどの意味しか無く、子供がいたずらをするとの意味は有りません。


そこで web でこの呪文の起源を調べてみました:

https://www.dictionary.com/e/trick-or-treat/

Where does the phrase trick-or-treat come  from?


While some identify precursors to  trick-or-treating  in  ancient Celtic customs, modern trick-or-treating is thought to be a custom borrowedfrom  guising or mumming in England, Scotland,  and  Ireland. These involve dressing in costume and singing a rhyme, doing a card trick, or telling astory  in exchange for a sweet.


 <trick-or-treat の文句はどこに発するのですか?

 古代のケルト人の風習にその前段階のものを見つけたとする者も居るものの、近代の trick-or-treat ごっこはイングランド、スコットランド、アイルランドのguising や mumming (特に Halloweenに際し、お伽話風な変装やマスクをして他人の家を訪ね、寸劇を演じたりする風習)から取り入れられた習慣であると考えられています。guising や mumming では、甘いものと引き替えに、コスチュームに扮した者が詩を詠じたりトランプで奇術を見せたり、物語を語ったりもします。>


 と、あります。ここに、doing a card trick in exchange  for  a  sweet とありますので、トランプで手品を見せる代わりにお菓子を貰う、から転じて trick ortreat が発したのかもしれません。trick と treat のどっちにする? の二者択一にまだ救いがあり、強盗が your money or your life 金を出すのか命取られたいのか(金を出さなければ命を奪うぞ)と拳銃やナイフを突きつけるシーンとは異なりますが、実際には、treat or trick 化し、お菓子呉れないなら私たちが魔法掛けてやるわ、とトイレットペーパーの魔法を掛ける方向に攻撃性を増してきたのか、などと秋の柔らかな日差しを浴びながらふと考えてしまいました。








20211110  英語の辞書について − 英英辞書のすゝめ



 今回は英語の辞書についてざっとお話ししましょう。当塾は大学生と社会人を対象とするスタンスですが、高校生や受験生の方も少し先を見据えるのも悪くないと考え目通ししてみてください。


 私は紙媒体の定評ある各種の英語関連辞書、辞典の類いは片っ端から購入はして来ました−実は他の言語、医学生物学、動物学関連辞書・辞典類も大量に蔵書しています−が、流石に冊子体の Oxford  English  Dictionary (略称 OED)は買い求めてはいません。大学の図書館などでは古びた OED 全巻がレファレンスコーナーの書架の幅数メートルを陣取り鎮座ましましている場合もあります。これを購入するかと頭を掠めた頃に折良く CD 版の OED が世に出、場所を食わずになによりと、Oxford 大学出版局から早速それを購入しました。当時の価格は9万円弱だったと記憶しています。その後の改訂版も購入しましたが、これは掲載語数が少しずつは増大はするものの、OS のバージョンアップに合わせての改訂版と言えるものです。upgrade 版の価格は最終的には当初のものの1/3程度にまで下落しました。この電子版辞典の入手を契機として、各種の CD or DVD 版の辞書類を買い揃えるに至りましたが、現在ではこの様なディスク媒体の出版形式が消滅し始め、年間契約のサブスクリプション形式のものが増えて来ています。これはスタンドアローンでは利用出来ず、必ず PCを web に接続している必要がある為、自分としては使い難い様に感じますね。と言いますか、本当のところは web 上の情報に対してお金を支払う気持になれず・・・。


 この様な按配で、紙媒体辞書は一通り揃えてはいるものの、重い辞書を抱えて手首を捻りそうになったりするのもイヤだと、次いでディスク媒体の辞書利用がメインとなりましたが、現在はそれもあまり使用しなくなり、 web  上の無料辞書を活用する様になりました。尚、これまでの話は、英英辞典に関するものであり、基本的に英和辞典、和英辞典は利用しません。英語の事は英語で理解するのが最善で、1つの言葉を容易な言葉で言い換えて記述していますので、その単語の語感からして良く理解することが出来ます。


 因みに、ヨーロッパの言語はバスク語などの特殊な言語は除きインド−ヨーロッパ語族なる互いに親戚関係にある言葉ゆえ、日本語−ヨーロッパ語のシャトルで理解しようとするのではなく、ヨーロッパ語同士間で理解するのが合理的且つ容易です。その様な次第で仏和辞典なども利用せずに、web 上の仏英・英仏或いは仏仏で用を済ませています(これも無料版!)。


 英和辞書は、ドンピシャリと来る日本語の訳語が欲しい時に参考の為に検索することがありますが、適訳が見当たらない時もそこそこありますね。例えばorganize ですが、組織化する、企画など計画する、組合に加入させる(=オルグする)などの訳語が辞書で当てられています。しかるに、Cambridge Dictionaryの定義の1つでは to do or arrange things, plans,  ideas,  etc.,  according  to a particular system so that they can be used or understood easily 容易に利用したり理解出来る様に1つのシステムに従い物事、計画、考えなどを行う、配列する、即ち物事を筋道立ててスムーズに動かす、が原義ですので、<段取りを付ける>と訳すとピッタリ来る場合がありますが英和辞書には載っていません。また会合の organizer は組織者、計画立案実行人ではなく<世話人、世話役>の訳語が適当でしょう。


 話を戻しますが、高校2年生の頃から Longman  Dictionary  of  Contemporary  English を利用し始めました。この辞書は好き嫌いも出るかとは思いますが、初学者の英英辞典の入門には最適と今でも感じます。基本的な 2000語のみを用いての記述がなされています。現在、DVD 媒体付きの旧版冊子体がまだ入手可能ですので Amazon などで1部買い求めておくのも手です (5000円弱)。英英辞典を利用する事で、単語を別の言葉で言い換えていく訓練が出来、英語力の著しい強化が期待出来ると思います。これで一定程度の英語力を身に付けると、今度は web 上の無料の各種英英辞典等の利用が格段にラクになります。勿論、英文法の解説なども英語のまま理解出来る様になります。まぁ、繰り返しになりますが、英語のことは英語で考えろ、です。これに関しては、例えば web 上に英語関連コラムなどを書いている者がいて、当人が英和に頼り切り、英英辞書を使いこなせていない、或いはその様な作法自体を知らないと判れば、この人物は基礎の出来ていない英語の素人さんだ、と即座に知る事ができます。往々にして日本語の訳語にとらわれてああだこうだと論評し、或いは英語の歌の歌詞を誤訳して夢を語り始める!などもしてちょっと見てられないのですが、初学者は誤謬に導かれる危険性もありますのでご留意を。


 難関大学を目指す力量のある生徒さんは入学後のことも考え、余裕があればの話ですが英英にそろりと接近することをお勧めします。英英を使い慣れるに連れ、自然と脱英和、脱和英して行きます。大学在学中の前半ぐらいまでに英英の比重を高めておくと良いでしょう。


 OED −泣く子も黙る?−に関しては、或る言葉の根源的な意味合いや過去を含めてのその用法を探る時には最後に縋り付くべきご本尊的位置にあり、私は現在もCD媒体のものを利用しています。法律で言うところの判例集の様な位置づけの側面もあると思います。今は disk 媒体は見当たらず、online のサブスクリプションのみとなりました。個人で年間100ポンドですが月当たり1200円程度と考えれば妥協できる金額かもしれません。英語でメシを喰う者には必須の  reference とも言えますが、実際には自前で英語論文を執筆する、或いは第三者の英文を責任を持って校閲する立場にあるなど以外では契約する必要はほぼ無いでしょう。


− 手短に語るつもりが長々と書いてしまいました。









20211117  英語の二重構造 − 句動詞 phrasal verb の話 (その1)



 英語には句動詞 phrasal verb フレイザルバーブと呼称される、<頻用される易しい他動詞+副詞、自動詞(+副詞)+前置詞等>の組み合わせから成る語句があります。これはしばしば本来の字義そのままの意味を離れ、その言葉の組み合わせ、字面からは想像しにくい意味を併せ持ちます。


 例えば、look after は、〜の後ろを見る、が文字通りの意味ですが、〜の面倒を見る、世話をする to take care of, be in charge of or nurture の意味に使われるのは皆さん良くご存知でしょう。同じ様に、 look  into は、〜の中を覗き見る、が、調査する、to investigate, examine の意味にも使われます。


 だいぶ以前の話になりますが、私が高校生の頃に一橋大教授の岩田一男先生が数多くの英語受験参考書を世に出されていました。− 余談ですが、岩田先生は作家の中島敦と嘗ては某女学校時代に同僚教員だったとのことです。その中の1冊に、易しい幾つかの動詞を使えば英語が話せるとの趣旨のものがあり私も早速買い求めました。要は、句動詞を使えば意思表示は出来て英語も気構えずに話せるよ、との主張でしょう。


 実は句動詞とは、子供でも知っている動詞を用いて、より高度な或いは別の特定概念を表す為の便宜的利用法であり、その多義性に加え日常口語的且つぞんざいな英語表現ゆえに、硬い文書やスピーチには使う事は避けられます(極く一部例外があります)。しかしながら岩田先生のその本には、それに関する注意、即ち、句動詞は informal である旨は述べられて居なかったと記憶しています。また、当時私が在籍していた高校の英語授業に於いても、英語の formal, informal表現の区別について特に注意されたこともありませんでした。 web などをざっと眺めても phrasal verb が単なる英熟語として一括りに扱われ informal であるとの記述も見当たらない様に感じます。


 歴史の話になりますが、英語とは、主にユトランド半島周辺を根城にする文化的に高度ではない北方ゲルマン系が、先にブリテン島に進出していたケルト系をローマ撤退後の空白に乗じ、駆逐ながら植民し、その様な者達の話す言葉から派生した言語ゆえ、高度な概念を表す単語を持たない田舎言葉でした。これが、11世紀以降のノルマンコンクエスト(大陸のノルマンディー地方に領土を構えていたフランス語化した北方ゲルマン系に拠る英国支配)を通じ、高度な哲学、学問、法律関連の用語−多くはフランス語の祖語であるラテン語起源−が大量に英語にもたらされました。その数は1万語程度になるとも言われています。或る意味、この経緯は大和言葉しか持たなかった島国日本語に、高度な概念を表記出来る漢語を中国大陸から取り入れハイブリッド化が進められたのと良く似ています。


 ここに、<上流階級が使用する、すべき英語>と、<下の者が話す、限られた単語から工夫され派生した英語>の二重構造が起源すると考えてもあながち間違いでは無いでしょう。今では階級による違いは特に米国では薄れ、違いがあるとすれば教養レベルの差に拠るものとなっては来ましたが。

(次回に続く)









20211124  英語の二重構造 − 句動詞 phrasal verb の話 (その2)


(前回からの続き)

 英語の non-native speakers である我々日本人には、字面からは理解出来ない意味を併せ持つ多義的な句動詞よりは、明確で限定的な意味を持つラテン語起源等の用語を使って貰う方が遙かに理解が容易です。私などガチガチの学術論文を読む − 句動詞は完全に排除されます− のは得意ですが、米国人の小学校低学年の喋る句動詞に満ちた英語は正直なところ理解しずらい場合もありますね。


Cambridge Dictionary の下記例文の意味がわかりますか?


What discussion? You weren't talking to  me, you  were  talking  at  me!

 議論しただと?君は私と遣り取りせずにまくし立てただけじゃないか!


 talk at (someone) は phrasal verb ですが、この句動詞を目にする事は実際少なく入試には覚える必要も特にはないと思いますが、to speak to someonewithout listening to that person or  allowing  them  to  speak 相手の言葉に耳を傾けず或いはモノを言わせずに話す、一方的にまくし立てる、の意味です。talk + at の字面の組み合わせではこの意味は想像出来ないでしょう。そもそもが字面通りでは native 自身が意味が取れないゆえに、 phrasal verb として扱われている訳です。慣用的用法として覚える他はありません。


 しかし、OED では talk at の意味としては

to make remarks intended for some one but  not  directly  addressed to him.

<本人には直接向けずに、(実は)その者に意図された話をする、当てこする>、の意味しか掲載されておらず、1899年 の用例(これが最新のもの!)として、He had had no intention..of..talking at her,  but  the  words  had  struck home. 彼は彼女への当てこすりを言ったつもりは全く無かったが、その言葉は彼女をぐさりと突き刺していたのだ、が出ています。talk  at  の意味用法がどうやら時間の経過に伴い大きく変わって来ているわけです。この前置詞 at の意味の違いを、最近 web などでしばしば目にする様になった<図式法>で説明することも出来ません。因みに home は<核心へ>の意味の副詞です。(短期間の内に、或いはひょっとして地域に拠り)意味の変動する様な類いの会話表現を学術論文、ましてや条約締結文などには使えない事がお判り戴けるでしょう。


 youtube 上で、帰国子女の方などが英語表現についての切り売り動画をアップし、そこそこの視聴者数を得ている例を見る様になりました。それらの表現は phrasal verb 以外にも殆ど口語に関する表現、つまりは  informal な表現ですので、咄嗟の一言的な英会話習得−北米で老若男女3億人近くが毎日喋っています−には確実に役立つものの、それらを幾ら覚えても、ハイレベルの英文の読み書きには役立ちませんし、informal な表現を迂闊にも硬い文章やスピーチ中に混ぜて利用するのも良くありません。その区別を心得た上で有効活用することをお勧めします。


 雑駁な内容になりましたが、英語の使用に当たっては、 formal  vs.  informal を常に意識する事が大切−残念ながら日本人はこれを意識しないしその指導もほとんど行われない−であり、また、いわゆる熟語に加え、そこそこの数の句動詞 (web 上にリストがあります)を知っておくことは日常会話的コミュニケーションには役立ちまた必須ですが、それをラテン語起源等の意味の明確な、<コンパクト>な言葉に常に置き換える脳内訓練をしておくのが英語力の幅を持たせるのに非常に有効である、これを最後に再び強調しておきましょう。










202111201  接頭語 sub は、〜の下に、と解釈して良いのか? (その1)



英単語の語源を解説した市販本がベストセラーとなっており、昨年私も 1冊アマゾンから取り寄せた次第です。その中で接頭語 sub について扱った項があり、sub は、〜の下に、下から上に、を表すとの解説が行われ、複数の単語が掲載されていました。


 米国アマゾンのサイトに飛び、<english etymology 英語 語源(学)>で検索すると多数の英語語源辞典の類いが検索されますが、その手の本を(おそらく内緒の!)ネタ本として日本語の本も繰り返し企図されるのでしょうね。


 実は、英単語、更にそれを遡ってのフランス語、ラテン語では、接頭語や接尾語を語幹の前後に加え、或いは語幹自体も適宜組み合わせての合理的な造語が行われて来ました。即ち、その様な造語のあり方 − 後にゲルマン語起源の英語にも応用されて来ました − を知れば、単語の大まかな意味も分かり記憶の助けとなるだろうとの発想は誰でも思いつくのが自然です。明治の文豪森鴎外(本名 森林太郎)も、学生時代に回りの級友が単語を頭ごなしに只ひたすらに記憶しようとしていたが、造語の背景を知れば容易に覚えられるのだがと語っています。


 例えば医学生物学では初期に学習する vasopressin  バソプレッシンですが、vaso + press + in = 血管+圧力+語呂合わせの?の接尾語 in、ですので、血圧を上げる物質だろうとすぐに判ります。vasopressin は脳下垂体後葉から分泌されるホルモン(別名:抗利尿ホルモン antidiuretic hormone, ADH)なのですが、腎臓のボウマン嚢 Bowman's capsule で最初に作られる原尿と呼ばれる薄い尿から水分を再吸収して尿を濃縮し、血液の浸透圧(水分量)を一定に保つ重要な機能を持ちます。この様な理解で vasopressin の名を覚えることが出来るでしょう。因みに何らかの原因に拠り vasopressin の血中濃度が低下する、或いはその標的器官である腎臓の(遠位)尿細管が機能不全となると尿崩症(にょうほうしょう)が起き、大量の薄い尿が出ます(前者は中枢性尿崩症、後者は腎性尿崩症)。まぁ、喉がカラカラになり、血液は濃縮されて大変なことになります。


 しかしながら、この方法で簡単に図式的に解釈可能な語 −医学含めて学術用語は近世の造語ゆえに大方がこれに該当します− は実は限定されており、スンナリとは行かない単語も存在します。その手の<語源から英単語を覚えよう>本や動画サイトを見ても結局判ったような判らない様な説明が多いですし、説明の困難な<都合の悪い単語>はさりげなく排除されることになります。その種の語の成立を解釈するには、後世の特殊な意味の派生を知るか、或いは更に年代を遡り、その根源に近づき知る必要があります。まぁ、造語されてから時間が経過していますので言語の宿命としての新たな意味の派生や揺れ動きが起きている訳です。


 接頭語 sub の話に戻りますが、例えば単語 subversion は動詞 subvert の名詞形で、vert = turn ですので、sub + vert で、下に転ずる、の意味から転覆する、させる、の意味であると推測するのはまだ容易です。 The  rebel  army is attempting to subvert the government. 反乱軍は国家転覆を目論んでいる、の例文があります (Cambridge Dictionary から)。

(次回に続く)









20211208   接頭語 sub は、〜の下に、と解釈して良いのか? (その2)



(前回からの続き)

 では、afterwards (<後に、後ほど>、米国  spelling は  afterward) を意味する副詞 subsequently (第一音節 sub にアクセントがありますので注意して下さい)の sub はどう解釈したら良いのでしょうか?この単語の形容詞形は subsequent 、また名詞形は subsequency です。sequence は遺伝学などで日常的に登場する用語シーケンス(遺伝子分子の連続)から生物学を囓った者には<連続>を意味することは推測可能でしょう。実際、形容詞 sequential は一連の、引き続きの、の意味があります。では、<ははぁん、オレは合点した、名詞  subsequency は何か連続するものの下にある何かを意味するんだろう>と言うと実はそれは全くの見当違いになります。


 時間関連用語としての subsequently であることから気づかれた方も居るかも知れませんが、この場合の sub は<時間的に後の>の意味になります。


In 1982 he was arrested and subsequently  convicted  on  drug trafficking charges..

(Cambridge dictionary の用例)

 1982年に彼は逮捕されたが、その後違法薬物取引の罪に関して有罪となった。


https://www.etymonline.com/word/subsequent

 ここの記述に拠れば、実は、subsequent はラテン語の  subsequi = sub "closely, up to" + sequi "follow" = "come after in time, follow closely," 時間的に後に来る、時間的にすぐ後に従う、の意味になります。subsequi  の現在分詞型 subsequentem に直に由来する古フランス語 subsequent をそのまま英語に移入した言葉になります。


 sub 自体は印欧祖語の upo = under, up  from  under の1変異型 s(up) に由来すると考えられていますが、ラテン語に於いては、既に多義に派生しており、


1.〜の下の、〜の足下の、(の位置関係を)表す "under,  below,  beneath,  at the foot of,"、

2.〜に近い、〜に向けて、(の時間を)表す "clos e to,  up  to,  towards;" of time、

3.〜の内に、〜している間に、(の位置時間関係を)表す "within, during; の意味から、比喩的に、勢力に取り込まれた、勢力の内にある、 figuratively  "subject to, in the power of;"

4.ちょっと小さい "a little, somewhat",


の多様な意味を持ちます。


 英文法用語の main clause 主節に対する  subordinate  clause 従(属)節、の  subordinate  (= having a lower or less important position) の意味も、これで鮮明に理解出来るのではと思いますが如何でしょうか?まぁ、文部省唱歌の <運転手は君だ、車掌は僕だ> の関係ですね。


 位置関係を示す前置詞が時間の意味を兼ね備えるのは、英語の  after, before, in, on, at, overなど幅広く見られますし、日本語でも同様です。sub も然りであり、〜の下、だけでは無い派生の意味を併せ持つ接頭語と言う訳です。実はおなじみの、just, close, immediate などの語も時間と空間の両方の意味を持つ言葉です。どの様な意味で使われているのか正確に見極めることが大切です。


 この様な訳で、前置詞起源の接頭語を持つ単語に関しては、<場所、時間、またそれらに発する比喩的表現>の3通りの意味を探る様にすると、<より正しくスッキリと理解出来るだろう>、いや、より正確には<スッキリと理解出来る場合もあるかも>、とのお話でした。









20211224  まだるっこしい英語表現



 Cambridge dictionary に以下の用例が掲載されていました:

 The high cost of legal representation can  influence  a  person's  decision  about whether to abandon a claim.

 法的代理人(=弁護士)の高コストは、申し立てを中止すべきかどうかについての人々の決定に影響する可能性がある。

 influence, decision (from decide),  abandon と動詞関連語が3つ並び、和訳しても頭の中が上下左右に翻弄されて意味がスンナリとは入って来にくい文章です。


 文としては、<弁護士費用が高いので顧客が訴訟を起こすのを止める場合がある>との意味であり、<決定に影響する>などと曖昧な文言で表現せずに、ズバリと表現すれば良いだけの話になります。まぁ、オブラートに包んでマイルド或いは文意としての公平性を担保した積もりの文章が実は只の悪文だった、との評価になるでしょう。


 実のところ、<人が〜しようかどうかを決定するのに影響する can  influence  a  person's decision about>との英文は、しばしば見られる英語特有のもって回った典型的表現の1つとも言え、明確な意味での記述を求める科学論文等の校閲に関与して来た私としては全く感心出来ません。何が言いたいのかもっと明確に主張せよ、と書き直させるでしょう。似非インテリ表現とでも呼称すべきではと考えます。


和訳文を一度作成して、

<法的代理人(=弁護士)の高コストは、申し立てを中止すべきかどうかについての人々の決定に影響する可能性がある。>


→<法的代理人(=弁護士)の高コストは、申し立てを中止した方が良いだろうと人々を決定させる場合がある。>


→<弁護士費用が高額なので、人は法的申し立てを中止しようとする場合もありえる。>


と、スッキリした日本語に脳内整理するのも良いと思います。


 最初の<influence 影響する>なる動詞は排除して文意を明確に把握すると

→ Because of the high cost of legal  representation,  a  person  can decide to abandon a claim.


= It's possible that a person decides to  abandon  a  claim  because the cost of legal representation is expensive

弁護士費用が高額なので、人は法的申し立てを中止しようとする場合もありえる。

 これでスッキリした英文並びに日本語になりました。


*名詞化された動詞が羅列する様な文章が英語らしい表現だなどと考える者も居ますが、必ずしもそれが優れた英語表現であるとも言えず、元々の明確な意味、言いたいことを、名詞化された動詞を用いることで意味が却って不明確化される場合もあります。勿体を付けた表現に私には見えることが多いですね。


*一例として influence 等の意味の曖昧さを含む語を削除して考えるのも文意を得るのに有効です。


 最初の用例の様な含みを持たせた英文に触れるがゆえに、英語に対する苦手意識、嫌悪感を抱かれる生徒さんもいるのではと推測しますが、influence を使った様な文章に接したら、ははぁ〜ん、また出て来やがったぜ、とばっさり切り捨てて、文章の真意−本当はコイツは何が言いたいのか−をさっと把握するなどの場数を(大学入学以降に)踏むと良いと思います。









20220227  be to do の意味と用法 その1



 正月明けに1月 January の名の由来を年越し蕎麦に掛けて話そうかと思って居ましたが、時間が取れず、早2ヶ月が過ぎようとしています・・・。何か別の話題を、と。


 大学入試に頻発する受験生泣かせ?のものに be to do の表現がありますが、これを3回に分けてざっと(長々と!?)解説してみましょう。果たして巷の参考書に記述される様に、5通り、6通りの意味を覚えなければいけないのでしょうか?


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https://linguapress.com/grammar/to-be.htm

この web サイトに以下の記述があります:



3. The verb to be as a modal verb 法助動詞としての be

(modal verb 法助動詞とは、can, could, will, would,  shall,  should,  may, might, must の9種類の助動詞を指します)



<The verb to be is occasionally used as a  modal  auxiliary;  but in this it is a strange verb, as it can have either a value of futurity, or a value of  obligation, or something between the two,  supposition.

In the first and third persons, it is a modal  whose  most  common value is futurity: in the second person, its main value is one of obligation.  However, this distinction is not always true.>

(以上引用)


「be 動詞は法助動詞として時に利用され、未来や義務、或いは両者の中間の意味、仮定を表す場合もあります。一人称と三人称主語には最も普通に未来を表し、二人称主語に対しては主として義務を意味しますが、この様な区別は常に正しいとは限りません。」



と、あり、幾つかの用例が掲載されていますので一部を引用します:。



The train was to leave at 8 (meaning: The  train  was  supposed to leave at 8)

その列車は8時に発つことになっていた。


I'm to work in London next year (I'm going  to  /  have to work in London.....)

私は来年はロンドンで働きます(働かねばなりません)。



He's to stand as candidate for the  presidency  (  He  is going to stand.....)

彼は大統領選に立候補します。


The children were to stay at home  that  afternoon  (The  children were meant to / were going to .....)

子供達はその日の午後は家に居ることになっていた。



After that, they were to get lost. (After that,  they  were  going to get lost).

そののち、彼らは道に迷うことになっていた。(道に迷う運命だった)



After that, they were to go home (After that,  they  were  supposed to go home).

そののち、彼らは家に帰るべきことになっていた。



You're to get better marks next time. (You  must  get  better marks ....)

君は次回はもっと良い点数を取らないとね。



When you get home, you're to go straight  to  bed.  (When  you get home, you must go straight to bed).

家に着いたらまっすぐベッドに向かうんだよ。



簡単に纏めれば、

一人称と三人称主語+ be to do :

未来 (futurity) を表わす、

be going to do に置き換え可能



二人称+ be to do:

(マイルドな)義務 (mild) obligation を表わす、

be supposed to do, be meant to do, should,  must  に置き換え可能


ですが、未来 futurity が義務 obligation に変わる場合もある訳です。この辺は前後の関係(context 文脈)から判断する必要がありますね。この点、日本語は便利なもので、be to do を、〜することになっている、と取り敢えず訳せば意味が大きく外れる事はありません。



*modal verb 扱いされますので、適宜他の法助動詞 (should, must) に置換すると意味が取りやすくなる場合があります。

*未来表現としての be going to do (根拠を元に確かに起こり得る事、期待される事 a probable situation を予告する近未来用法、〜になる、〜する)に置換可能ですが、主語の意志が入る will (未来に〜して遣る)、或いは根拠の無い未来を語る will (〜するだろう)には正しくは置換出来ません。


* be about to do, be supposed to do, be  meant  to  do などを引っくるめて簡略に表現する用法と考えても良さそうです。be to do 用例の意味が取りにくい場合は、間に about, going, supposed,  meant などを適宜挟むと理解し易いかもしれません。


cf. be about to do = be arranged to do in  near  future,  soon,  

  = be going to do or happen very soon

すぐに〜する手筈になっている、すぐに〜する、始まるところだ 

  (註:be about to do は時間表現の語句と共には利用出来ません)


be supposed to do

〜することになっている(主に命令、規定を表す)


be meant to do = be intended to do, be  expected  to do

〜する様に意図されている、期待されている


(つづく)









20220303  be to do の意味と用法 その2



(前回からの続き)

<本家の> Oxford English Dictionary, 2nd edition の be の項の解説では、

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be

16. With the dative infinitive, making a  future  of  appointment  or arrangement; hence of necessity, obligation, or duty; in which sense have is  now commonly substituted.

 間接目的の意味(〜に対して)の to 不定詞を伴い、未来の約束や手はずを表す。斯くして未来の必要性、義務或いは職務を示すが、この意味で現在では一般的に have に代用される。



a. 能動の to 不定詞を伴って


1742年 Richardson Pamela III. 264,

I am to thank you, my dear Miss, for  your  kind  Letter.

 親愛なるお譲さん、あなたの親切なお手紙に私は有り難うと言うべきですな。

= I have to thank you, my dear Miss, for  your  kind  Letter.



1814年 Scott Wav. I. v. 55

Had he been to chuse between any  punishment.. and  the  necessity?

 彼は何か罰を選ばねばならなくなったのですか?

= Had he been obliged to choose between  any  punishment ..and  the  necessity?



b. Hence, to be to seek: to have to seek, to  be  obliged  to seek, to be in want or at a l oss.

 斯くして、下記文例の to be to seek は to  have  to  seek,  to be obliged to seek, to be in want or to be at a loss に置き換えられる。



1832年 Fair of May Fair III. ii. 278

It was excusable that a man having passed so  large  a  portion  of those sixty years in a compting house, could  be somewhat to seek in the  economy of his social system.

 その60年間の大半を小ぎれいな家で過ごして来た男が、生活に幾らか倹約を追い求めねばならなかったろうことは納得が行く話だった。


= Taking into account that a man have passed  so  large  a  portion of those sixty years in a compting house, it was excusable that he could be  somewhat obliged to seek in the  economy of  his  social  system.

 一人の男がその60年間の大半を小ぎれいな家で過ごして来たことを考慮すれば、彼が生活に幾らか倹約せねばならなかったろうことは納得が行く話だった。(家の維持にゼニが掛かるので他の出費はほどほどにする必要があった)



( cf. could be to seek in economy of his  social  system

= could be obliged to seek in economy of  his  social  system

= could be obliged to save money for his  social  system 

cf. could は〜することがあり得たの意、即ち、〜だったろう、と訳すと良いでしょう



c. 受動の to 不定詞を伴って


1869年 Freeman Norm. Conq. III. xii. 145

Normandy was to be invaded on each side.

 ノルマンディは各方面から侵略される運命にあった。

以上の様に解説されていました。

(次回につづく)









20220306  be to do の意味と用法 その3


(前回からの続き)


 前々回、前回の繰り返しにもなりますが、これまでの内容を纏めると、



A is to do sth. (sth = something) で、

@ Aは〜する約束になっている、〜する手筈となっている、することになっている、未来がそれに向けられている、手配されている、定まっている−これらは皆広義の未来表現です−ことを表現します。



The next meeting is to be held in  Wednesday.

= The next meeting has been arranged  for  Wednesday.

次の会議は水曜日の手筈になっています。



また、

*be + 受け身の to 不定詞 = 運命

Normandy was to be invaded on each  side.

≒ Normandy was fated to be invaded  on  each  side

≒ Normandy was destined to be invated  on  each  side

ノルマンディは各方面から侵略される運命にあった。



A それから派生して、

〜する必要がある need to do

〜すべきである、せねばならない have to do,  be  obliged  to  do

〜する役務・役目がある have a duty to do


の意味が出ました。このAの意味の場合、be  to  do の  be 動詞を単純には need, have, have a duty などに置き換えれば良い訳です。



be to do は基本的にこの2つの意味 (@未来の定事 さだまりごと、A必要・役目)だと覚えてください。素朴に字面通りに、〜に向かうものだ、〜に向かうものだった (be toward doing) と訳せば0点にはならない筈ですが、〜することになっている、の一点張りでも問題有りません。



ところで受験参考書を見ると、be to do の訳語として、予定・運命、義務・命令、に加え、可能 (〜出来る) や意図 (〜したい) を当てる記述がありました。



例えば、


The book was not to be found. <その本は見付けられなかった>


の説明ですが、これはその本が見つけられない運命、そう言う事になっていた、の意味ですので、 見つけようとする人間の側に立てば can を用いて

We couldn't find the book. となります。しかし、より正しくは人間の側の営為、意図を柔らかくして和訳表現すべきで、<その本はどうしても見付からなかった>の方がマシでしょう。



意図の説明としては、


If you are to pass the entrance  examination,  study  harder.

もし入試に受かりたいならもっと勉強しなさい、とありますが、



こちらは主語 you の直接的な希望、意図<〜したい>として訳すのではなく、上記Aの説明のように be を need, have などに置き換えて考えるべきです。何となれば、be to do は主語の意志、意図を表す表現では無いからです。そう言う状況に置かれている、定まっている、の他律的な意味合いが入ります。



従って書き換えると、

= If you need to pass the entrance  examination,  study  harder.

もし入試に受かる必要があるなら、もっと勉強しなさい



或いは、

= If you have to pass the entrance examination, study harder.

もし入試に受からねばならないのであれば、もっと勉強しなさい

と解釈するのがより正しいでしょう。



最後に北大の入試問題(一部抜粋)を挙げましょう。


The positioning over the porch of statue  and  good  luck  symbols has been specifically to keep out bad elements either human or supernatural.



これの has been specifically to keep out が引っ掛かりますが、まず落ち着いて現在形 is specifically to keep out の意味を考えます。これは、特別に〜をkeep out することになっている、の意味ですが、より明確に未来か義務・役務の意味かと考えると、後者と判断出来ます。まぁ、完了形の意味を加味してずっと〜を排除する役務だった、仕事だった、と捉えれば答えは出たも同然です。



そこで、例えば以下の様に意味を明確に捉えます:


= The positioning of statue and good luck  symbols  over  the  porch has been playing a specific role in keeping out bad elements even if they are  human or supernatural.



或いは、

= The positioning of statue and good luck  symbols  over  the porch has been having a specific duty to keep out bad elements even if they are  human or supernatural.



「ポーチ(屋根付きの張り出し玄関)の上に像や幸運のシンポルを配置することは、人間であれ超自然的なものであれ、悪い要素を遠ざけておく特別の役割があった(それは現在も続いている)。」



これは勿論、be to do = 〜することになっている、の訳語をそのまま当てて、



ポーチ(屋根付きの張り出し玄関)の上に像や幸運のシンポルを配置することは、人間であれ超自然的なものであれ、特別に、悪い要素を遠ざけておくことになって来ている。



この和訳で減点はほとんどされないでしょう。



*沖縄のシーサーの様な役目でしょうか?



毎度の長広舌でしたが、特に be to do の表現に他の法助動詞や完了表現が加わる場合には、慌てずにまず深呼吸してから!現在形の単純な文章に置き換え、次いでクールに意味を考えて下さい。この様な対処で入試突破はよりラクになります。



(この項おわり)








20220315  if + were to do の意味と用法



 条件節を導く接続詞の用法として if +  were  to  do の表現があります。

これは、ひょっとして起こるかもしれないが実際には起こりそうに無いと話し手が考える場合に formal な表現として使われるものです。いわゆる仮定法の表現の1つですが仮定の状態を強調する表現になります。


もし仮に〜だとしたら、仮に〜だとすると、ひょっとして〜の場合、などと適宜訳せば良いのですが、前回までのブログにて説明してきた <be to do 〜することになっている> が if 節に転用され、


<if + were to do 仮に〜することになったとすると>、


の意味になったと考えるのも面白いでしょう。

If the Prime Minister were to resign, there  would  have  to be a general election within 30 days.

(そうならないとは思うが)仮に首相が辞任した場合、30日以内に総選挙が有らねばならない(総選挙にしないといけない)。(Cambridge dictionary に掲載の例文)


≒ If the Prime Minister should resign, there  would  have  to be a general election within 30 days.

(あり得なさそうなことを仮定する場合の現在形→過去形への変換です!)



*更により formal なスタイルとしては、were + 主語+ to 不定詞の語順に倒置します。

Were the Prime Minister to resign, there  would h ave  to  be a general election within 30 days.



*if + were to は formal でやや硬い表現ですが、会話でも利用されます。if + were to 節の内容は、現実世界の蓋然性の非常に低いことから完全に想像の域の話、思いつきまで広範囲に利用出来る表現です。太陽がこの世から無くなったら、などの荒唐無稽なことにのみ限定されて使われるものではありませんのでその点にご注意を。



 OED (Oxford English Dictionary) の用例に、If  I  were  to propose, would you accept? もし僕が仮にプロポーズしたら受けてくれますか?とありました。



 この文例から想起しましたが、アイルランドのフォークシンガー Christie Hennessy 氏が娘とデュエットしてヒットを飛ばした If You Were to Fall (And I Wasto Fall in Love with You) なる曲があります(youtube に複数アップされています)。この曲の出だしのフレーズが、



if you were to fall and I were to fall in love  with  you, oh oh oh baby

and you say I'd be crazy to love you baby

but I would if I could be sure that you'd  love  me



(女声)もしかしてあなたと私が恋に落ちたら

(男声)でも僕が君に恋するなんて変じゃないかと君は言ってるけど

(男声)君が僕を確かに愛してくれると判ったら僕も君を愛せるよ


 とあります。仮定法過去(実現性の低い現在のことを述べる)オンパレードの随分控えめな二人の愛情表現ですが、俗な表現で和訳すれば、<もしかして君が僕のことを好きになっちゃって呉れたりして>風な表現となるでしょうか。アイルランド人らしい奥ゆかしさが表れているのかもしれませんね。









20220421  主語 subject は本当に<主語>なのか?




 意味不明のタイトルと思われた方も多いかと思います。英語の主語とは動作の主体であって、常に、誰々が〜をする、〜の状態である、と主語、意思主体を強く意識するのが英語の特徴であり、日本語の様に主語を頻繁に省略して曖昧性に生きるケシカラン言語とは全く異なるのだ、と、我々は英語学習の最初から強調されて来ました。まぁ、私も初めて英語に触れた中1の時に感じましたが、初学者にしてみれば、英語はいちいちI だのYou などを頭に立てる七面倒臭くてしつこい言葉だぜ、ともなりますね。


 しかしながら、sub の話に戻しますが、主節  main  clause に対する従節 subordinate clauseの関係から見ると、subject は実は<主語ではなくて従語>と訳すべきではないか、との素朴な疑問を覚える生徒さんもひょっとして居るのかも知れないと、今回のタイトルに据えた次第です。


https://www.etymonline.com/word/subject

ここに拠れば、

 subject = sub  "under"  + ject  "throw" で、〜の下に投げかける、〜の下に据える、投げかけられたもの、との分かり易い意味であり、何かテーマとして考察や議論される、或いは研究されるもの、the  thing  that  is  being  discussed,  considered,  or  studied 詰まりは日本語で言う<主題、題目、テーマ>ですが、意味的には受け身のものとなります。

 実際のところ、受験にも頻出する表現ですが、be subject  to  sth (sth: something)で、〜の下にある、熨(の)される、の意味から、特に何か好ましくないものを経験する、被る、の意味になります。下記の例文が成立します。

 In recent years, she has been subject to  attacks  of  depression. (Cambridga  Dictionary から)

≒ In recent years, she has been experiencing  (or  suffering  from)  attacks  of  depression.

 近年、彼女は鬱の発作に悩まされて来ている。(註:副詞  recently や副詞句 in  recent  +  years,  days, etc. は、副詞 lately と同様に完了形と共に用いられるのが一般的です)


 文法用語の subject (SVO などのSです)も、"person  or  thing  regarded as recipient of action, one that may be acted upon 動作の受け手と見做される、或いは動作がその上に為される人や物事、と、同じく、受け身の意味になります。


 これはどう言うことかと言うと、まず<主題>即ち、これから〜について話します、と subject を最初に出し、次いでそれがどの様な加工を受けるのかを付け加えて文章を完成させる話になります。日本語に於いて主語とされるものは、実は話題提供の題目を示す言葉 (これから〜について話します、〜に関しては)であるとの説も有力ですが、英語 (とおそらく他の印欧語) もそれに近い起源を持って居るのか、と、ここに私は改めて思い直しました。


 Cambridge Dictionary の定義の1つは、文法用語としての意味として、subject (GRAMMAR) :the person or thing that performs the action of a verb, oris joined to a description by a verb: 動詞の動作を遂行する或いは動詞が描写するものに結び付けられる人や事物、と定義しています。要するに動作や叙述の主体者としての定義です。この定義は我々が英語教育の現場で強調される主語  subject  の定義そのものですが、これはいつのまにか、本来受け身の対象であるものが逆転して能動側に転じたと考える事も出来ます。


 以上の様な、英語 (そしておそらくは他の印欧語の) 表現或いは概念上の、受動と能動の逆転 or 交替現象、或いは同値、は他にも見られることなのですが、機会があればまた触れたいと思います。


 − ここまで書いて来て、鎌倉時代頃の日本語表現、お前、減気か?(へばっているのか?)が、後世、お前、元気か?の意味に180度転じたことが頭に浮かびました。言いたいことは実は同じなままです。


vice versa (ウィケ・ウェルサ) 逆もまた真なり、の様で。