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日本語には未来形がない |
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2019年9月20日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 日本には未来がない、景気も良くならずに或る種の社会的閉塞状況にあり大変憂鬱だ、ではありませんので慌てないで下さいね。 これまでのコラムで英語学習に対する一般的な取るべき姿勢或いはすぐに役に立つ実践的な暗記事項などについて述べてきましたが、<英語とは、言葉とはそもそもなんぞや>の話を交えて進めて行こうとの第3段となります。英語の背景を知って貰うことは英語学習にも利するところが大きい筈です。 日本語の場合は、未来の日にちを付けても動詞は現在形のままですね。例えば、僕は明日は図書館に行く、で済まされます。僕は毎日ご飯を食べるけど明日はパンを食べるね、です。未来に行う事に関しては、現在形の動詞に未来であることを表す修飾句 (副詞句) を付随させて表すしかありません。誰かが、「僕はパンを食べるんだ」とボソっと言ったら、毎日食べてるのか或いはこれから食べるのか相手は状況を確認しなければならないのです。これが日本語には (明確な)未来形が無いと言われる所以です。日本人は意識せずに話していますのであまりピンと来ないかもしれませんが。現在形と未来形が一緒だと言うので、過去形に対して 現在形を非過去形と呼称もします。 |
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尤も、辞書に掲載されている動詞は実は未来形であるとの主張もあります。僕はご飯を食べる、とはこれからご飯を食べるの意で、現在形は、僕はご飯を食べている、との主張です。しかし、例えば、魚は泳ぐ、では、魚は泳ぐ習性にある、で、これから(=未来に)泳ごうとしている訳ではありません。と言うことで、それが未来形だとの主張には世間の賛同は得られないでしょう。 目の前の事象に対して、未来の時間に関する修飾句を伴わずに現在形で自己主張をすれば、相手側は、それはこれから何かをしようとしている、極く近い未来のことだな、と、どの国の人でも判断してくれるとは思います。しかしそれはその場に於いて現在形で未来形(or 未来表現)を代用しているに過ぎず、未来形やそれに相当する表現を別個に持つその言語に於いては本来の未来形ではありません。未来形を持たない日本語では 未来表現の基本は<未来を表す時間の副詞句+現在形の動詞>ですね。これは実は未来形を持たないフィンランド語やそれに近いエストニア語などでも同様です。 中国語には過去形や未来形がないことは漢文を習った方なら、ああ、そう言えば、とお気づきになるでしょう。磁石を並べる様に漢字をぴたりとくっつけて配列しているだけで漢字自体に何らの活用形は有りません。基本は時間そのものや動作の進行具合を示す別の漢字をくっつけて過去の事か、現在か、未来の事かを判別させます。詰まりは中国語では時制 tense を、(動詞無変化形) + [(時間表現 mood 例:昨日、今、明日) and/ or (動作の状況 aspect 例:既に、〜中だ、まだ)] で表現する構造ですね。 |
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それでは英語の場合はどうかと言うと、お分かりの様に英語には単語自体の未来形の活用は無く、動詞句 be going to (これから〜しに行くところだ) や助動詞 will (〜して遣ろうか)を使います。英語はゲルマン祖語から派生した言語の1つですが、実は近代ゲルマン諸語(英語、スカンジナビア語、デンマーク語、オランダ語、ドイツ語、アイスランド語等)では複雑な時制が簡略化し、動詞の時制は基本は過去形と現在形の2つから構成される共通性があります。動詞の未来形の活用はありません。時を示す副詞句が添えられていなくても <動詞句 or 助動詞+:現在形動詞>が未来を示すシステムです。 英語の未来表現には、主語の意志表明の濃淡も被さります。助動詞 shall を使うまでになると「(未来には) 必ずそうしてみせる」と最強の意志が盛り込まれます (但し英国英語ではshall は単なる未来を指す用法で使われます)。因みにたまたま塾長のメダル収集箱に収まっている米国の南北戦争代用貨 (愛国トークン) の一面に、 The Union Must and Shall Be Preserved との文字が刻まれているのですが、これはユニオン (リンカーン側を支持する北部 20州)は必ず守られるぞ、いやきっと守ってみせる、とのスローガンになります。そう言えばマッカーサー司令官がフィリピン (当時は米国が植民地化していた) のミンダナオ島からの脱出を余儀なくされ、到着したオーストラリアで I shall return. きっと戻ってみせる、と何度も口にしたのは有名です。日本軍に追い出され、悔しかったのでしょう。 それがラテン語系のフランス語になると、動詞語尾が活用する形で明確な未来形が存在します。簡単に言うと、現在形の活用形に対して活用語尾に r の発音が挟まるだけなのですが。 この様に、時制表現のあり方を考える事も、外国語そして日本語自体の理解を深めるのに役立ちますね。 |
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