英文長文読解 短期集中 個別指導 

KVC Tokyo  英語塾

                               




























































































































































































































































































































































































































































































































































































































































塾長のコラム 2020年5月20日  入試和文英訳D 2020東北大学







入試和文英訳D 2020東北大学




2020年5月20日  (動詞 claim について 20200923 に加筆)


 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。

 和文英訳の問題を<解読>してみよう、のコラムの第5回目です。

 入試英文添削の時と同じく、完成形?に至る塾長の考え、迷いなど思考のプロセスをご覧ください。他ではちょっと見られない企画だろうと思います。

以下参考サイト:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/







旧東北帝国大学附属図書館閲覧室(東北大学史料館)

http://www.sendai-c.ed.jp/~bunkazai/shiteidb/image/3036.jpg

http://www.sendai-c.ed.jp/~bunkazai/shiteidb/c03036.html


大正15年の鉄筋コンクリート造建築





誰もまだ到達したことのない未知の世界を究めてみたい、美術、音楽などの芸術の世界から芸能の世界まで、そんな純粋な要求が文化を支えている。サイエンティストと呼ばれる一群の人々は、この知の限界に挑戦することを楽しむ人々である。その成果だけではなく、知の限界への挑戦のプロセスそのものを含めて、それが「文化」なのだ。「文化」には役に立つ、立たないの区別は意味を持たない。

 (東北大2020年前期 )




和訳の基本戦略】


*サラリと書かれた感じの一見伸びやかに見える日本語であり、平易な表記ながらも知性が感じられます。但し、各々の文章内容の連続性が悪く、次の文章に行く度に思考の相転移が起き、ぶっきらぼうな雰囲気も多少覚えます。これはのちに触れますが、階調 gradation の伴わない、悉無的表現、断定が続く硬い文章だからです。


*美術などの「世界」に於いて誰も到達したことの無い「世界」を究めるならば、それは自分たちが所属する「世界」とは別の「世界」となります。ここでは自分たちが属する世界の中で到達したことのない領域に踏み込みたい、到達したいとのことでしょう。この様に、煮詰まっていない記述が含まれています。まぁ、感覚的には言いたいことが分かるものの、細部を詰めるとほころびが出る文章ですね。推敲の不足するエッセーですが、この様な思いつくままに述べる内容でしたら1日に原稿用紙数十枚はサラリと書けるだうと想像もします。但し、この程度では後世の人達からは忘れ去られるでしょう。


*エッセー風の和文によく見られる事象ですが、日本語固有の通りの良いエエカッコシ文化人用語が配列され、持論が展開されるのですが、吟味すると正確には何を表現したいのかの曖昧性を含み、雰囲気で他人を引きずって行こうとのレベルのものが多いと感じます。この意味で<解読>に難儀するゆえ、この様なレベルのエッセー或いは評論もどきが、和文英訳の問題に好んで多用されるのでは、と思います。


*主張する内容は月並みで新奇性novelty は有りません。逆に言えば、その様な月並みな主張のパターンを、英文解釈であれ和文英訳であれ一定程度頭の中にインプットすれば受験はスイスイ行けそうです。

 塾長のコラム 2019年9月15日  『lost in translation 』  

 https://www.kensvetblog.net/column/201909/20190915/

で触れましたが、上田敏の訳詩に際しての覚悟の様な高度な技能は求められません。所詮は入試問題なのですから。実力のある方はセンスの良い受験参考書を入手して自己演習に励めば相当の実力は涵養出来ると想います。基本、勉学にはゼニを掛けずに頭そのものを使え、です。


*和訳出来る箇所からさっさか直訳風に作成し、仕上がった荒削りな文章に、試験の時間配分を考えながらせっせと鉋掛けし語句の断片を糊付けする方針で行きましょうか。得点/時間のコストパーフォーマンスを考える事が入試では大切です。




【和文の大意】


*<芸術、芸能、科学の分野を問わず、非功利主義的に自分が興味を抱く未知の分野を究めたいとの欲求が文化を形作る。





【英語化し易い和文への変換】


*英語風な表現に変換すると


「美術、音楽などの芸術や芸事の世界に於いて、誰もまだ到達したことのない領域を追い求めたいとの純粋な欲求がそれらの文化を支えている。実は科学者と呼ばれる一群の人々も知の世界の限界を追及することを楽しむ人々である。科学的成果を得ることだけでなく、知の限界を追い求める過程そのものが科学の文化を形作る。そこでは実用的かそうでないかは問題にならない。」





【英文化の要点】


 おさらいとなりますが、


*大意を掴んだ平易な英文をまず作り、今度は日本語の文意に正確に近づけるべく、英語の表現を練っていきます。


流れとしては、


 @和文の修辞、日本語固有の表現をはぎ取り論理的且つ平易な文章に直す

 A自分の知っている平易な英語にさっとひとまず英訳(これでそこそこの配点は得られる)

 B和文原文のもつ意味合いに修整、推敲(時間的余裕があれば)


 となります。








Bob  Dylan  - Hurricane (Lyrics Video) Full  Original  Version

2019/07/27  Marshall's Studio   https://youtu.be/b_SUNDJT9DY


LP Desire 収録。当時の米軍極東放送にて毎週土曜の午後から放送されていた All American

Top 40 ではこの曲の一部が望ましくないとしてピーと言う音で消されていました。確かに下品な

表現は含まれていますが、ディランの、英語に強弱を置く発音から大変聞き取り易く感じます。塾

長はこのLPを50回は聞いていますが、この Hurricane に登場する英語表現−極めて普通の英

語表現−が楽に理解出来るレベルであれば入試の英作文も軽く突破出来るでしょう。当英語コラ

ムを通じそれが可能になる筈です。





【塾長の解答1】


In the worlds of fine art, music, and  performing  arts,  the pure desire to explore the area where no one has ever reached  helps maintain their culture.  A group  of  people  called  scientists also enjoy pursuing the limit of the world of  knowledge.   The  scientific results they obtained  and  the  process  of pursuing this limit itself constitute the culture ofscience.  Whether  to be useful or not can be out  of  the  question.


「芸術、音楽、芸事の世界に於いて、誰も到達していない領域を探索したいとの純粋な欲求がそれらの文化を支える。科学者と呼ばれる一群の者達もまた、知の世界の限界を追及することを楽しむ。彼らが得た科学的成果と、この限界を追い求める過程そのものが、科学の文化を構成する。役に立つ立たないは問題外となり得る。」




*日本語の言葉通りに和訳してみました。ややごてごてした英文になりました!


*from A to B で、AをスタートとしてBに至る場所、時間の範囲等を表す副詞句(動詞を修飾する句)として機能し得ます。

 例えば、The train runs from Tokyo to Osaka. その列車は東京から大阪まで走る。


しかし上記表現のケースでは、時間要素 A から B まで、from  cradle  to grave 揺りかごから墓場まで、或いは場所要素 from Tokyo to Kyoto を扱うのではなく、芸術、芸事などの対等な種目(本質的に序列は無く、どこが始まりでどこが終わりかもない)について述べる訳ですから、 日本語そのままを受けて from toで括るのもどうかと言うところです。芸術関係の分野を網羅したいとの意味と思いますが、単に科目を並べるだけで良い様に思います。勿論、純粋芸術から大衆芸能まで、との序列を強調したいのであれば、In the  worlds  of  from  fine art, music and to  performing arts と表現出来ます。


*In the world of art including fine art, music,  and  performing arts  美術、音楽、芸事を含めた芸術の世界では、としても良いでしょう。including を  such   as 〜と言った、に置き換えてもOKです。



*<誰も到達した者のいない未知の世界を追い求める>、ですが、到達して居なければ未知ですので冗語表現です。そこで<未知>を削り、<誰も到達していない領域を探索する>とします。


*日本語で頻用される<世界を追い求める>、の表現は意味不明です。<私は日本在住ですが日本を追い求めたい>とは言わず<私は日本在住ですがまだ行っていない日本の地方を探訪したい>の正確な表現から考えて下さい。そこで、その世界の中の未知の領域を探索する、に置き換えます。限界を追い求める、との表現はまぁ OKでしょう。


*<限界に挑戦する、挑む>も頻用される日本語表現ですが、オレの方が強い、正しいはずだと敵に挑んで相手を制圧しなぎ倒そうとするのが<挑戦>ですので、限界を相手に戦うとの用法は適当ではありませんし、to  challenge  the limit と英語に直訳すると、限界をなぎ倒したい、となり意味不明となります。日本語では雰囲気的に多用される言葉 challenge ですが、典型的な<躍る日本語>表現と感じます。challenge  を利用する時にはその前に<対象がなぎ倒すべき相手かどうか>一度考えて下さい。この相手は勿論既成概念でも自分の心の殻でも構いません。それを打ち破りたいとの気持があれば challenge は使えます。




cf. challenge:  n 挑戦、挑戦すべき課題、挑戦したくなる課題、やり甲斐

a challege to humankind  人類に向けた挑戦すべき課題 (人類に対する挑戦ではありません!) 


cf. to challenge   vt.

・なぎ倒そうとする(実際になぎ倒したのか、なぎ倒されたのかは不明)、

 敵、課題にそれを凌駕すべく挑戦する、


・疑義を挟む、異議を唱える

= to call in question, dispute

We disputed the death sentence passed on  his  case.

 我々は彼の裁判に下された死刑判決に疑義を提起した。


・(法律用語) to take formal objection to (a  prospective juror)

 (陪審員候補者が不適切だと)公的に意義を唱える、反対する

 

・(反対意見がある中で)〜と主張する to claim




cf. to claim この動詞も challenge と同様、日本人には理解しにくいですね。

・to state to be true, especially when open to question;  assert or maintain:

 (特に反対、反論がある中で)自分は正しい、〜だと主張する、〜だと自説を維持する


*名詞 claim の意味は、A demand for something  as  due;  an  assertion of a  right to something. 

〜が自分に当然の権利があるとの主張、要求、の意味です。


to lay claim to

= to assert one right to, claim

自分に権利があると主張する、〜が有って(持って、得て)当たり前だと主張する


He claimed he had won the race.

(反対にも拘わらず)彼は自分が競争に勝ったのだと主張した。


 a candidate claiming many supporters.

 自分には多くの支援者が居て当然だと主張する(=選挙運動員を沢山寄越せと要求する)候補者

= a candidate who are asserting that he has  many  supporters as due

  (as due = 当然のものとして)

≒ a candidate who reqires many supporters as due

 立候補するんだから当然運動員を付けてくれと要求する候補者



・to deserve or call for; require

 There are many problems that claim her  attention.

 彼女の注意を必要とする問題が沢山ある。

 (動詞 claim には他にも用法がありますが、後日、<日本人には分かり難い意味の動詞>でコラムを立てたいと考えて居ます)




cf. maintain their cultute  

 support their culture とすると、他の culture ではなくそれらの culture を応援するとの意味にもなります。この場合の<支える>は、凹まないように維持させる、ですので、より明確に maintain としました。他に、raise  their  culture,  develop their cultute 文化を育てる、発展させる、なども可能ですが  maintain     or sustain でよいでしょう。



cf. desire to do  〜したいとの欲求、希望、欲望  ここでは「要求」ではなく「欲求」ですね。

demand は、金銭を要求するなどのシーンで使います。



in fact  それどころか本当は  

≒ as a matter of fact  本当のことを言うと、ぶっちゃげた話

 

similarly は、全く同様に (文全体を修飾する用法)の意味ですので、これは使わない方が良いでしょう。



cf as well:   also  〜もまた 

芸術家連中が誰も到達していない領域を探検したがる、科学者<もまた>知識の限界を追い求める



cf. constitute:  to compose, form 構成する、形作る

B, C and D constitue A          B, C, 及び D は A を構成する

A consists of B, C, and D        A はB, C, 及び D から成る

A is composed of B, C,and D    A はB, C, 及び D から成る (やや硬い表現)



cf. out of the question 問題外だ、問題の外にある、問題として扱われない、相手にされない

 科学者自身が役に立つ立たないかは問題では無いと考えても、資金を出す世間側は何か現実世界に役に立つのかの視線で見ますので、can be として、その様な(=有用性を問題にされない)場合もあり得る、としました。或いは<科学者>を明確に主語に据えて

 where scientists regard it to be  unimportant  whether  to  be  useful or not とする手もあります。


beyond question 疑いなく、確かに、は誤用になります。

be open to  question 疑問へのドアが開かれている→誰でも質問して良い→未解決の問題だ

= the question is not yet solved



cf. whether A or B   A か Bか (ここでは名詞句扱い) 

   whether to do A (or not)      Aすべきか否か  

  whether to do A or to do B   AすべきかBすべきか


To be or not to be: that is the question.

生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ(ハムレットの台詞)  that は前文内容を示します。

=  whether to be or not to be: that is the question.

→ It is a question whether to be or not to be.


cf. https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/f_00076.html

<43種類も存在する「ハムレット」の有名な台詞“To be, or not to be, that is the question.”の日本語訳><訳文を調べ上げ、42種に及ぶパターンを検討した後、翻訳者・劇作家として教授が到達したのが、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」(『新訳ハムレット』角川文庫・2003年)でした。いまではこれが定番となっていますが、実は教授以前にこの表現を使った翻訳は存在しませんでした。>とあります。河合教授以前に「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題か」の訳は無かったと強調していますがそれは果たして大げさに語るべきものなのでしょうか?塾長は2003年以前にも同様な訳は聞いたことが確かにあるのですが。また、カトリックとプロテスタントとの鋭い対立がこの様な精神的緊張を生む背景となっているとの考えですが、日本でも太平記などを目通しすると凄まじいまでの生き死にの場面の記述に圧倒されます(因みに塾長の母方の先祖に関する記述もありました)。英国に於いてもその様な戦乱或いは動乱に明け暮れた時代趨勢も確かにあったでしょう。しかしながら、塾長としては生物学徒として、主人公のハムレットを精神病理学的に捉える論考を矢張り支持します。これは1つには、動乱の世に在っては、carpe diem 今日を掴め、即ち、今が楽しきゃいいだろう、と享楽化する者も一方で現れるからです。







"To be, or not  to  be,  that is the question" 2018/04/12 Andrew Scott,  as  Hamlet,

performs the  opening  lines  of Shakespeare's most famous soliloquy. (via  BBC  Arts)

https://youtu.be/7iDds31CdNA


ハムレット開幕冒頭の最も有名な独白シーンです。





【塾長の解答2】


In each scene of fine art, music,  performing  arts,  and so on,  the pure desire to pursue novelty helps sustain its culture.  In  the academic world as well,  scientists  enjoy  exploring their intellectual horizons. Not only obtaining the scientific  results  but also pursuing the limit  itself  forms  the  culture of science.  Whether to be practical or not is unimportant  there.


「芸術、音楽、芸能その他のおのおののシーンで、新奇性を追い求めたいとの純粋な欲求がそれらの文化を支える。学問の世界でも同様に、科学者達は自分たちの知の限界を探求することを楽しむ。科学的成果を得ることのみならず限界を追い求めることそのものが、科学の文化を形作る。そこでは現実に役立つ役立たないかは重要では無い。」




*music scene ミュージックシーン、音楽界などと普通に表現されます。world はちょっと大仰かもしれないと考え、scene としてみました。


*<サイエンティストと呼ばれる一群の人々> 実は意味を持たない日本語の修辞です。一群の表現で pure science や medical science など広義の科学の世界に関与する科学者と言いたいのかと受け取れますが、そうすると医学などの応用科学分野では、役に立つことが大切な価値観ですので、あとの文章が矛盾して続かなくなります。単に<科学者たち>と表記すれば良いでしょう。


* enjoy doing 〜することを楽しむ


cf. intellectual horizons :  horizons 複数形で(思考・知識などの)範囲,限界; 視野(of,in)

 

*to enlarge the intellectual horizons 知の水平線を拡大する、と日本語で頻用されますが、<水平線>は拡大など不可能ですので<今見えている領域の限界線、境界線を更に先に押し進める>の意味から、知の<領域>を拡大する、の日本語表記を当てるのが適当でしょう。因みにもともと horizon は境界線の意味です。


https://www.etymonline.com/word/horizon

horizon (n.)

late 14c., orisoun, from Old French orizon (14c.,  Modern  French  horizon), earlier orizonte (13c.), from Latin horizontem (nominative horizon),  from   Greek horizon (kyklos) "bounding (circle),"  from  horizein "bound, limit, divide, separate," from horos "boundary, landmark, marking stones."  The h -  was restored in English 17c. in  imitation  of  Latin.  Old English used eaggemearc ("eye-mark") for "limit of view, horizon." Theapparent  horizon  is distinguished from the celestial or  astronomical  horizon.


 境界線、地面に置いた石の目印、円周、詰まりは自分の土地の限界、境界線から。目で見える限界の境界であれば地平線、水平線となりますね。to enlarge  the intellectual horizons とは知の領域の限界線を拡大して知の領域を拡大するとの意味に他ならず、知の水平線を拡大するとの意味不明の訳を当てては適当では無いでしょう。


cf. the process は不要と考え削除します。


*the limit = the intellectual horizons 知的限界



cf. practical 現実生活に役立つ、実用的だ 

 科学的成果の中には宇宙の進化が分かったとか、テナガザルがどのようにして<ぶら下がり移動>を開始したのか推測した(塾長の本業!)、などが含まれますが、これらは学問的には valuable だろうと思いますが、工業面での発明などと異なり、useful or practical とは世間は認めないでしょう。ここでは useful のままでもOKです。useful to our daly lives 我々の日々の暮らし、人生に役立つ、との意味です。


cf. utilitarianism 功利主義

the ethical doctrine that virtue is based on  utility,  and  that  conduct  should be directed  toward  promoting the greatest happiness of the    greatest number of persons.

役に立つことを美徳の基盤に置き、最大数の者が最大幸福を得られる様に指揮推進する倫理教義。

 (from Random House Webster's Unabridges Dictionary)

   it is beyond utilitarianism.功利主義を超越している、で正しいですが、この哲学用語は思いつかなくて当然です。


*beyond calculating  profit and loss 損得の計算を超えて、だと商行為の方に絞られすぎるでしょう。


cf. not important = umimportant 重要では無い 

 真の意味で実利性が問題とされない科学分野は理学 Science ですが、話が前後しますが、ここではその様な pure science の世界の話だと解釈するしかありません。なんとなれば、工学や医学では自分の研究テーマが如何に現実の役に立ち得るのか、科学研究費補助金を獲得しまた自己のポストを守る為には、常にアピールしなければならないからです。詰まりは人間生活に役に立つ(成果を挙げる)ことが常に鋭く問われる世界です。


*まぁ、儲かることや役に立つ事ばかりを考える(功利主義)のではなく、追い求めることそれ自体が学問芸術の根幹だとの主張です。勿論、得られた成果をアピールして軍資金(=対価ではなく飽くまで寄付金、協賛金の形)を沢山得るに越したことはありませんが。


* there = in the academic world  

  there を、 for them 彼らにとっては、としても良いでしょう。









 和文英訳の問題に接して感じますが、悉無的表現に階調 gradation を添えてまともな日本語をまずモノして欲しいと、注文したくなる様な日本語が多いですね。英文和訳の入試問題のコラムで書いたことですがこれまた見た事も無い奇矯な英文が出たりで、受験生を意図的に誤解に誘導する意地の悪さを含ませているのかと感じもします。こんな按配で塾長も入試英語に接すると正直疲れを覚えることが多いです。奇妙な出題文に対して、まず英−英変換、日−日変換に頭脳パワーを浪費させられるからです。何故低レベルの説教臭い三流評論もどきの内容を、塾長が過去30年一度も見たことも無い様な妙な文章で記述し、受験生側の迷いを生むような真似をするのかと甚だ残念に感じています。パズルを解かせる方針なのでしょうか?しかし語学がパズルであるとすれば哀しい話です。

 今回採り上げた和文英訳の問題で一番伸びやかでそれでいながら受験生の英語力を問う好出題が京都大学のものと感じました。敢えて分かり難い、言語表現として稚拙な問題文を掲げる大学は、出題する英語担当教員(英文科所属?)の精神が時代錯誤的 (anachronic) なのではと塾長は率直に考えます。戦前の旧制高校での教養科目の授業が非常に優れていたと聞きますが、この様な英語の出題傾向は、その中の、排除すべき悪しき因習部分をひょっとして引きずっているものかなどと想像もしています。

 この様な事を考えると、大学入試の英語科目は適宜廃止し、公平性と客観性が担保されればですが、他の英語資格の成績点数で代えるのも合理的かなと思います。

 受験生の方々は入試英語とはこんなものだと割り切って入試をくぐり抜けてしまい、早く大学生になって羽ばたくのが最善です。当塾としても大学生以上の方、社会人の方に対して英語指導を行うことを旨としており、入試英語指導を直接のターゲットにはしていません。



 入試の英作文は相手側が出した課題を上手く和訳する操作に過ぎず、受け身での英文作成ですが、自身がオリジナルな内容を和文で作成しそれを英語に変換しようとする過程で(勿論、最初から英語で執筆し始めるのも OK)、英語の実力が真に自分の血肉となる様に思います。自分が言いたいことが本当に英語で誤解無く十分に表現し得ているか、それが native に大きな違和感なく読んで貰える内容か、などと一語一句から推敲する必要がありますが、それを通じて力が付く訳です。最終的に rewrite  を依頼する native (勿論教養水準の高い相手)との間で、本当は斯く斯く然々のことをこの点で表現したいがより適切な表現はあるかなどと遣り取りすること自体が書き言葉としての英語力を高めてくれます。

 世には受験産業として医学部専門予備校などが沢山有り(学費は年間数百万はザラです)、そこでの英語担当は過去の予備校勤務にて合格実績が豊富な者がより集められているものと推測しますが、相手(大学)が出した問題を受け身的に対応し、入試動向に合わせた知識の切り売りをし、生徒の尻を叩き医学部に送り込むのが職責です。入試までの時間も限られ、また他の科目との兼ね合いもありますので、じっくり英語の本格的な指導を行いたくとも行う事は不可能です。入試動向に照準を合わせ、エッセンスを効率よく指導するのでしょうね。尤も、彼らの努力で希望する学部に押し込んで呉れ、人生への道を開いて呉れますので、明確性の低い授業をダラダラ続ける高校英語教師よりは予備校講師の方が遙かに感謝されるのは事実でしょう。但し、指導を受けて技術的に英語の得点は取れる様になり目出度く大学に入学を果たし得ても、英語に苦手意識を抱いたままの者が日本にごまんと存在するのが現実です。入試英語は一度忘れてしまい、最初から英語をじっくり学び直すべきですが、その様な場は大学にはありません。東大や医学部に入学しようが英語圏で  moderate  scientist と呼称される者 (教養として Nature や Science の内容が読み取れるクラス)が普通に読みこなす英語論文がスラスラ読めませんし、ましてや論文執筆など出来ません。これらは自前で経験を重ねて実力を身に付ける他はなく、例外は除き指導はされません。お困りの方は高度な教養レベルの指導者がコーチする当塾を是非活用戴ければと思います。

 これまで過去5回に亘り、英訳の問題を解き明かしましたが、これらは英文を作成するに際しての推敲過程そのものを例示します。詩歌の翻訳でもありませんので常にこの様な時間を掛けての検討は不必要ですが、塾長の遣り方を参考にじっくり改訂する<入試英語後の>プロセスを一度経験しておくと良いと思います。まぁ精読ならぬ精訳ですね。この様な自分なりの思考過程を身に付けておき、将来ご自身がオリジナルな中身を持った際には、それを世界に向けて意図が正しく伝わる様に発信して下さい。必要は成功の母と言いますが、脂汗、冷や汗を流し、赤っ恥をかきながらでも確実に英語力が身に付くはずです。

 全5回の 2020年入試和文英訳のコラムは今回で終わり、次回からまた、主に大学入学後の方々を対象とする英語表現のコラムに戻ります。