![]() |
![]() |
|
分詞構文2 |
||
2025年6月5日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 これまでのシリーズの中にてところどころ断片的に分詞構文についての説明を行って来てはいましたが、意外や纏めて解説した事は無く、本構文シリーズの1つに加えるのも悪くない、いや欠かす方が寧ろおかしいぐらいですね。学校英語の場でも入試に際しても、必ず解釈を問われるのが分詞構文ですので、その意味合い並びに成立をがっちりと把握しておくことは勿論大きな強み、得点源となります。長文読解などに於いて、文構造が把握出来ない、何を言っているのか不明で困る、などのシーンでは、分詞構文が使用されているかどうかをまず見抜くことがキモになりますし、その様な<ヒネた>文章ゆえ、−誰でも分かる英文を和訳させても点差が付かなくなる−和訳しなさいなどと設問が為されることになります。特に難関大学の入試では、with で始まる付帯状況を表す分詞構文の意味をどうやって日本語に好適に変換するのか、などに習熟しておく必要があるでしょう。この辺りは、扱い方、和訳の遣り方の型がありますので、知っておいて損な事は全くありません。余談ですが、これまで扱って来た、条件法、否定、比較、倒置、省略、挿入、強調表現などに加え、分詞構文、更には関係詞も我が懐中の物としておく− native の規定する英語習熟度のランキングで言うと C1 advanced level 以上に相当します−と、語彙の面は別として、大学入試のみならず英語圏での文章にはほぼ対応が出来ることになります。逆に言えば、英文読解の極意ここにあり、なのですが、英語とは或る意味単純明快な言語であるとも言えましょう。 いわゆる付帯状況や情報の追加説明を便利に表現出来る用法を除き、口語では利用されることは普通は見られませんが、基本的に non-fiction writing ではなく、fiction writing に利用される表現として、分詞構文は軽い記述の書き物、エッセイ、に始まり、重々しい文学作品に至るまでの幅広い範囲で頻用されます。non-fiction に於いては、例えば(少なくとも現行の)自然科学の学術雑誌では、編集部の方針で利用を禁じていることが殆どですし、分詞構文の或る特定の記述形式(文末に、カンマ+doing の形で文を延長する単純接続の分詞構文)のみOKを出す雑誌も存在します。何故かと言うと、本来的に明確な意味を持つ接続詞を用いて文を明確に記述すべきところ、論理結合子である肝心の接続詞、更には主語までを省略し、副詞句として主文に添える形が分詞構文だからです。詰まりは、文が簡潔になったのは良いが、意味合いに曖昧性を持ち込んでしまう大きな欠点を併せ持つのが分詞構文になります。別な見方をすれば、書き手側が本来的にどの接続詞を用いるべきかを意識することなく、<取り敢えず知的にも見えるしサラっとこの修辞法を用いて文を述べて繋いでしまおう>との意識の表れか、とも言えそうです。これでは、読者に対して揺るぎの無い明確性に立ち真実を伝えんとする学術論文の場では適当な表現法とは言えなくなるのは自明かと思います。言わば、口語では利用されず、文章中では formal などとされて頻用されるものの、厳密な意味合いを伝達する場では利用出来ない、との半端な性質を持つ表現になります。まぁ、文学的な修辞に近い立ち位置ですね−表現に曖昧性を含ませることが(少なくとも嘗ての)英語の文学性の1つの特徴だったのかと勘ぐりたくもなります・・・。この様な分詞構文の抱えるマイナス点を明確に説明する国内外の動画などは塾長は殆ど見たことがなく、鹿爪顔で分詞構文の一通りの説明を事務仕事のように加えて済ますだけで、分詞構文利用の実態やその精神にまで深く踏み込んだ例は数少ないです。塾長は理系研究者としての経験と立場から、この様な点に対しても第三者的な切り込みを入れつつそろりと、いや濃厚に!、説明を加えて行きます。本シリーズの第2回目です。 British Council Learn English Grammar C1 grammar Participle clauseshttps://learnenglish.britishcouncil.org/grammar/c1-grammar/participle-clauses『試験に出る英文法』 森一郎、青春出版社、1971年 第3章現在分詞・過去分詞 pp.48-53『チャート式 英文解釈』 鈴木進、数研出版、昭和51年、<第2編文の構造上よりの解釈 第2章句を中心として>ここの基本的構成並びに(難解な)例文を幾つか参考にしていますが、塾長なりの視点から批判的検討を加え、また一部、より現代的な、或いはより正しい明確な表現となる様、書き換えたものも併記しています。TRANSLATION AND LANGUAGE HISTORY PARTICIPIAL CONSTRUCTIONS FROM OLD TO EARLY MODERN ENGLISH翻訳と言語史 古英語から近世英語への分詞構文JA VIER E. DIAZ VERALengua y cultura: estudios en torno a la traduccion : volumen II de las actas de los VII Encuentros Complutenses en torno a latraduccion / Miguel Angel Vega Cernuda (aut.), Rafael Martin-Gaitero (aut.), 1999, ISBN 84-89784-89-2, pags. 323-328*下記から全文無料で入手出来ます。https://cvc.cervantes.es/lengua/iulmyt/pdf/lengua_cultura/38_diaz.pdfDative Absolute について 布施英憲藤女子大学・藤女子短期大学『紀要』 巻31, 19-29, 1993https://fujijoshi.repo.nii.ac.jp/record/1022/files/KJ00006968942.pdfhttps://researchmap.jp/read0021736/misc/15611958『イングランド国民のための第二弁護論』 ジョン・ミルトンJOANNIS MILTONIANGLI PRO POPULO ANGLICANO DEFENSIO SECUNDAContra infamem libellum anonymum, cui titulus,Regii sanguinis clamor ad coelum, adversus parricidas Anglicanos.LONDONI, Typis Neucomianis, 1654.http://www.milton-noro-lewis.com/pdf/DEFENSIOSECUNDA02.pdf*本電子ブック刊行のプロジェクト研究代表者 野呂有子氏に拠る、当時、ヨーロッパの共通語としてラテン語が利用されていたことの説明があります。*ミルトンも自国語の英語ではなく、ラテン語でこの論文を書いたことになります。*そこに<英語話者独自のラテン語表現法も生まれる余地は有った>訳です。*日本では前年の1653 年に近松門左衛門が誕生しています。 |
||
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|
分詞構文の曖昧性*以下、主に狭義の分詞構文に当てはまる話になります。書き手側のデメリット*省略を受けて文が短く締まり、知的な雰囲気を与えますので、formal なシーンで利用されます。しかし、接続詞を失うために同時に曖昧性を加え、厳密に明確な意味合いの文章が要求される学術論文−特に自然科学系のもの−などでは使用が避けられます。*昔日のものでも無いのに(狭義の)分詞構文を多用する読み物を目にした際には、書き手が時代遅れか、文学者気取りか、文を書くことの意味が分かっていない似非インテリ、の少なくともいずれかと見做して大方間違いでは無いでしょう。*そこそこに使う分には、端整な文となり、書き手側の知性をさりげなく示すと同時に、読み手側の眠気覚まし剤!ともなり、悪くは無いと思います。*しかしこの場合も、意味の曖昧性が生じるのを出来るだけ少なくするなどの書き手側の推敲が前提になりますね。*長い従属節を分詞化するのは避けるべきと言う事です。*意図的に、複数の文意に取れる様に−曖昧性を持つ事を目論んで−分詞構文を使う場合もあり得ますが、今となっては完全に時代錯誤でしょう。*分詞構文形式を持たない言語(非インド=ヨーロッバ語族圏)の人々の事を配慮して、徒に言葉を弄する様なことはもう止めて呉れないか、それだけですね。*まぁ、使い過ぎは良くないとの常識話です。*一方、情報追加の分詞構文(疑似分詞構文)は、意味の曖昧性が少なく、使用される頻度はずっと高いです。読み手側のデメリット*縮小された従属<句>の方は、文の様に見えつつも文を構成しない、一種の出来損ないの文構造を呈します。*単純な副詞句であればその認識は視覚的にも容易ですが、なまじっか文類似の構造を保持しているが為、読み手側は、その部分が実は分詞構文であると気付くのに手間を要します。*読み手側が<端折られている>接続詞が何であるのかを考えて、完全文に仕立てあげることが可能です。*しかし、それが書き手側の意図に沿うものである保証はありません。*書き手側が拵えた分詞構文に対して、なにゆえ読み手側が真意を考え解釈して遣らねばならぬのか、<最初から気取らずに略さずに記述せよ>、と塾長の意見に賛同して戴ける方々も少なくは無いのではと思います。*逆説的になりますが、その手の<訳の分からない>文章に対しては、読み手側も<解読>などをパスし、使用されているキーワードらしきものを繋げて前後の文脈から意味をサッと取り、それに従って和訳などを進めると、、寧ろ正解から外れないことも多いですね。*同じく、字面から考えると解釈に迷う否定表現なども、前後の文脈からの<常識的なセン>から文意を推測して進むと、その解釈が正しい場合が多いです。*受験指導している生徒に対しては、<ヒネて持って回った表現をする書き手が悪いのであって、時間に追われる側がそんなものをまともに相手にして時間を喰われるのも馬鹿馬鹿しいので、前後の文脈から意味をサッと類推・把握すれば十分、それでラクに得点出来るよ>、と塾長は指導しています。*出題者側も、<前後の文の流れから、分かり難い箇所の意味を汲み取る英文の読み方の力量があるのか>−即ち言語現象の本質を多少なりとも知っているのか−を受験生に問うている、とも言えます。*英語力と言うよりは国語力のテストですね。*勿論、<想定解>の設けられている入試英文−入試の数学も然りですが、最初から解けるように作られている、非学問的問題であり、或る意味似非英語、似非数学です−とは異なり、明確な解釈の必要な英文に対してはこの様な策を採るべきでは有りません。-----------------------------分詞構文の1つの訳し方*敢えて接続詞を落として記述する分詞構文の姿、精神に従い、何が略された接続詞であるのか、それに触れずに和訳するのが本来的に正しいとも言えます。*漢文で利用される、而して(しかして)−これは時を表したり、理由を表したり、時間的な接続を表したりの接続語ですが、従属接続詞と等位接続詞を兼ね備えたような言葉です−を利用して逃げるのも高等テクニックです。*理由、時、譲歩、条件などの記述は行わずに、〜して、〜し、と訳して繋げる訳し方です。*これは大学受験に頻出する be to do を、全て、<〜することになっている>の原義の訳を当てて逃げ切るのと同様です。*採点者側は基本的に減点が出来ません。*逆に採点者側が、be to do の<5つの意味用法>に即して明確に訳していないから減点だ、などとシレッと宣う場合、その採点者は英語の本質を知らない<学参馬鹿>だと判定が出来ます。 |
||
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|
分詞構文はどうやって成立したのか?*現状での英語に於ける分詞構文の意味用法を解説する動画やサイトは世に溢れていますが、その一方、分詞構文が英語なる言語の中で如何にして成立して行ったのかについて触れたものは殆ど見ません。*上にも触れて来ましたが、分詞構文は意味の曖昧性を持って居ますが、考えて見ると、1つの言語体系の中に斯かる<妙な>表現が存在する事は、個々人間の意思疎通を行うに際してデメリットを持ちますし、ではウラに返って、その様な曖昧性や含みを持つ表現の存在価値を許容する何か積極的な意図を当該言語が抱えているのか、と疑う事も出来ます。*日本語の、<結構です>の語もそうですが、曖昧性を抱える文言はいずれの言語にも存在する筈ですが、文法上の明確な<構文>として存在しているまでのレベルは日本語にはありません。*日本語の付帯状況−意味用法的には一種の分詞構文−を表す表現については、近年、その視点からの解析が始まっていますが、それについては<付帯状況>の回にてチラと触れます。*何故、英語(並びにその周囲の言語)が斯かる表現構造を抱えるに至ったのか、果たして成立途上の半端な表現なのか、衰退しつつある出来損ないの表現なのか、など、その成立を歴史的過程を通じて知っておくことは意味用法の奥底を考える際にも大きなメリットになる筈です。-----------------------------以下の論文に興味深い内容がありましたのでここにご紹介します:TRANSLATION AND LANGUAGE HISTORY PARTICIPIAL CONSTRUCTIONS FROM OLD TO EARLY MODERN ENGLISH翻訳と言語史 古英語から近世英語への分詞構文JA VIER E. DIAZ VERA カスティーリャ=ラ・マンチャ大学Lengua y cultura: estudios en torno a la traduccion : volumen II de las actas de los VII Encuentros Complutenses en torno a latraduccion / Miguel Angel Vega Cernuda (aut.), Rafael Martin-Gaitero (aut.), 1999, ISBN 84-89784-89-2, pags. 323-328言語と文化:翻訳研究:第7回コンプルテンセス会議議事録第 2巻/ミゲル・アンヘル・ベガ・セルヌダ(著)、ラファエル・マルティン=ガイテロ(著)、1999年、ISBN 84-89784-89-2, pp.323-328*peer review (査読)を受けた正式な論文では無く、、学術会議の場で発表されたものを文書に纏め挙げたものでしょう。*国際会議の後に発表されたもの、会議録などを纏めて成書として刊行する事例は良く有ります。*本人も最後に、これは preliminary 予備的な報告であると述べています。*下記から全文無料で入手出来ます。https://cvc.cervantes.es/lengua/iulmyt/pdf/lengua_cultura/38_diaz.pdf要旨: (塾長作成)「現代英語の起源とその語彙の多様性は、最初は福音書から、次に主要なラテン語とギリシャ語の古典から、数世紀にわたる丹念な翻訳移入によって可能になったとの主張があり、実際、英語において最もラテン語的な表現であると伝統的に考えられてきたものが分詞構文である。インド=ヨーロッパ語族に於いては、限定従属節をほとんど使わず、代わりに非定形構文を好んだと論じられているが、例えば位置格がサンスクリット語にのみ保存されて、ラテン語、ギリシア語を含め、それぞれの語族での試行錯誤の上に形態論的進化を成立させ、その形式的表現にさらなる差異を生み出して居る様に、分詞構文も各言語に於いて変異を受けている。英語史的に見ると、次の3つの時期区分で分詞構文の発達・推移が観察出来る。第一に、初期古英語では、口語に起源を見出すことができるネイティブな発達として、第二に、ラテン語からの大規模な翻訳の結果としての古英語後期、第三に、古典的な構文の引用としての近現代英語初期である。古英語の dative absolute 独立与格 (これはラテン語の ablative absolute 独立奪格に似ている)は、アングロサクソンの構文のネイティブな特徴である(口承の叙事詩に見られる)が、分詞は単独で、または副詞とともに現れる。一方、分詞構文の主語の役割を果たす名詞や或いは形容詞を伴う型がアングロサクソン文学に登場するのは9世紀になってからである。古英語が後者の型へと変化したのか、言語の自然な進化の結果なのか、それともラテン語の影響が拡大した結果なのかは、今後検討する必要がある。明らかなことは、これらの構文の口語的性格が徐々に失われて行ったことであり、その結果、分詞構文は書き言葉としての普及並びに構文形式の拡大が可能になった。古英語の散文における dative absoluteの頻度はかなり低い。このことは、散文に見られる分詞構文が、古英語の(口承)詩文に見られるような構文とは別に、ラテン語的な構文と結びついて生まれたことを示していると思われる。この(散文に見られる分詞)構文は 950年から1050年の間に相対的に減少している。口承詩に見られる dative absolute がイングランドの初期入植者の話し言葉に関連しているのに対し、9世紀以降のアングロ・サクソン語の散文に散見される新しい分詞構文は、むしろ外国からの借用語とみなされ、ラテン語からの翻訳が模範とされることになる。ラテン語やフランス語の構造を模倣して、近世英語の初期に一般的になったのは、伝統的に名詞主語独立分詞的構文として知られる構文である。さらに、エリザベス朝時代の作者は、ラテン語の post bellum confectum 型を手本に、前置詞l利用の分詞構文を開発した。興味深いことに、ラテン語では正式な意味を持たない have been said のような複雑な動詞の形は、近世英語のラテン語化されたテキストによく見られるようになった。これらの構文の多くは、例えば whichbeing understood (lat. quibus rebus cognitis)のように、書き言葉で語彙化された表現となった。以上纏めると、副詞的分詞節は口語体系の一部であり、アングロサクソンの口語詩で頻繁に使われた。古英語の散文において、新しいタイプの独立分詞構文がラテン語からの翻訳を経て発達したが、格の区別が崩壊するにつれて、その頻度は減少した。ラテン語やフランス語の影響を受けて、新しい分詞構文、いわゆる名詞主語の独立分詞構文が作られるようになったのは、中英語後期から近世英語にかけてのことである。」----------------------------------------------*インド=ヨーロッパ語族の native な特徴として、主文に対して<気軽>に、分詞、分詞+副詞で、副詞的な言葉を添える性質があったのですね。*書き言葉に於いては当時のラテン語の影響の元で、独立奪格形式の分詞構文が登場しますが、格の衰退に伴い、その形式も衰退しますが、後に再び当時のラテン語(当時ラテン語はヨーロッパの共通言語として利用されましたし、ラテン語自体も時代と共に進化している訳です)やフランス語の影響を受けて新タイプの独立分詞構文(名詞主語独立分詞構文)が成立したとの話です。*のちに扱う独立分詞構文の項にも、その成立について言及していますので併せてお目通し下さい。*歴史的成立過程とは逆になりますが、独立分詞構文として成立したものの内、主語が共通な場合には分詞構文側の主語を省いた、と考えてしまうのも理解の上では合理性があるでしょう。*分詞構文なる曖昧性を抱える文構造を許す点が、欧州語(インド=ヨーロッパ語族、サンスクリット語が祖語)の言語としての欠陥の1つの様にも塾長は考えます。*これが、言葉の大方の格を失った英語に於いては、更に<何を言いたいのか分からん非道い様>を呈しているのでしょう。*英語を世界語として半ば強制的に通用させんとするならば、分詞構文表現の存在しない文化圏の者達に配慮し、英語圏の政府など挙げて(狭義の)分詞構文を排除し英語の<改良>に乗り出すべきとも感じますね。*明確性を旨とする自然科学系学術論文が既に排除に乗りだしているのは流石のことであると言うべきでしょう。 |
||
![]() |
![]() |