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その他の<構文>3 |
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2025年8月5日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 これまで、日本の文部科学省の学習要項に採りあげられている一通りの構文形式(特殊構文)について解説を加えて来ました。実は、言葉とは生き物ですので、新たな一定の勢力を持つ様式が世に広まれば、それが新たな構文形式として広く認知される筈ですし、実際、現況に於いてあまり注目されていない類いの構文形式も存在しています。これらは学校に於いて明確なカタチで学習指導を受けるものではないものの、実は日常的に頻用されるものがあり、或いは文学作品の中などにも散見されもします。学校英語としてまともに習うことが無い或いは少ないが故に、どうやって文法的に解釈すべきなのか、受験生などの頭を毎度悩まさせもすることでしょう。意味は分かるが文法的にどの様に理解すべきか判断に困る表現−破格ではないのかとの疑問を招く−も実際のところ少なくはありません。 これまで続けて来た構文ネタの1つの括りとして、このような、市井の日本人には明確にその名を知られていない<特殊の上を行く構文>−しかし一定量の英文に触れていれば必ずお目に掛かる筈の<構文>−について整理がてら触れていきましょう。尤も、文法面での解釈については研究者間で必ずしも見解の一致を見ているとは限らないものも含まれますし、その命名分類も恣意的な視点に立つものもあります。native 一般人がその用語、命名を知らず、英語学者が主だって分類命名している概念も存在します。これらの文章構造に対し、それはどの様なシーンや意味合いで使われるのかを分析・考察する類いの学術論文も多々あり、その考察や<新理論>を批判精神に乏しく丸ごと引き継いで日本の英語学者が仕事を始める展開−大学の英語の先生とはこんなことでメシ喰っているのか!−も垣間見ることも出来ます。ここで<構文>と括弧を付けているのは、実は構文そのものとは言えず、寧ろ動詞の機能に付いての分類、即ち動詞型の分類が先に立つものであるからです。・・・ざっとこの様な経緯もあり、学校英語では指導の骨幹としては明確には扱われないとも言えますが、試験(入試)に出して置いて生徒を悩ませるぐらいなら何故最初から定義を与え、簡略で構わないので教えないのかとの疑問も生じますね。まぁ、塾長のコラムをお読みのハイクラスの方々には耳に入れて置いて損なことは全くありません。その第3回目となります。 https://ja.wikipedia.org/wiki/能格言語https://ja.wikipedia.org/wiki/能格構文https://ja.wikipedia.org/wiki/能格動詞https://en.wikipedia.org/wiki/Labile_verbhttps://en.wikipedia.org/wiki/Labile_verbhttps://ja.wikipedia.org/wiki/中間構文https://ja.wikipedia.org/wiki/中間動詞Christopher Barnard 『日本人が知らない英文法』河出書房新社刊、2005大庭幸男 『英語構文を探求する』 開拓社 2011中村 捷、金子 義明 『英語の主要構文-構文から見た英文法』ISBN 9784327401290 研究社 2002Middle verbshttps://www.usingenglish.com/reference/middle-verb/英語の中間構文 : 先行分析とその問題点 English Middle Construction : Previous Analyses and the Problems柘植, 美波 Tsuge, Minami 金城学院大学大学院文学研究科金城学院大学大学院文学研究科論集 23 74-47, 2017-03-20CRID 1050282677802137472, NII論文ID 120005994600,ISSN 13417509Web Site https://kinjo.repo.nii.ac.jp/records/871https://kinjo.repo.nii.ac.jp/record/871/files/03_tsuge.pdfここから無料で全文ダウンロード出来ます。Middle Verb についての一考察 村山康雄、現代英米研究 1976年 10 巻 p. 33-39DOI https://doi.org/10.20802/geneiken.10.0_33https://www.jstage.jst.go.jp/article/geneiken/10/0/10_KJ00001916818/_article/-char/ja/https://www.jstage.jst.go.jp/article/geneiken/10/0/10_KJ00001916818/_pdf/-char/jaここから無料で全文ダウンロード出来ます。 |
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中間構文 Middle construction(中間結果構文 Middle Rusultive Construction)1中間構文とは何か?This cracker eats crisp. このクラッカーは食べるとパリパリする。(註: crisp は副詞です)= This cracker is crispy when eaten.*この構文は一見能格構文の様に見えますが、しかしこれはその食べ物の性質を述べるものであり、能格動詞のような状態の変化、出来事 event を述べるものではありません。*従って事象が進行中であることを示す進行形も取れませんし、命令文や呼び掛け文も取り得ません。*この言い方は元より、能動態と受動態の中間的なものという意味であり、広義の中間構文 (Middle construction)、またこのカタチが取れる動詞は広義の中間動詞に相当します。*更に、広義の中間構文は、事象の変化を表すもの(能格構文)と事象の状態を表すもの(狭義の中間構文)から構成されます。*ここでは、その狭義の中間構文を扱うことになります。------------------------------------------------*本コラムでの定義広義の中間構文: 他動詞が自動詞に変化可能= 能格構文(転じた自動詞は状態の変化を表す)+狭義の中間構文(転じた自動詞は状態を表す)------------------------------------------------*狭義の中間構文に利用される動詞は、原英語由来の基本動詞であり、能格動詞とオーバーラップします。*能格構文と中間構文との違いや、研究上での論争点などについては下記論文が非常に分かりやすく説明して呉れ、お勧めします。英語の中間構文 : 先行分析とその問題点 English Middle Construction : Previous Analyses and the Problems柘植, 美波 Tsuge, Minami 金城学院大学大学院文学研究科金城学院大学大学院文学研究科論集 23 74-47, 2017-03-20Web Site https://kinjo.repo.nii.ac.jp/records/871https://kinjo.repo.nii.ac.jp/record/871/files/03_tsuge.pdfここから無料で全文ダウンロード出来ます。単なる主語の性状記述表現と考えるだけで良いのか?*この定義の動詞は明らかに主語の状態の変化、動作、event を表すものではなく、主語の静的な性状、特性を表すものになります。*それ故、動詞の後ろには必ず副詞が添えられます。*お分かりの様に、上記クラッカー自体は、そのまま静かにこの世に存在しているだけです。*尤も、単なる状態を表す記述では無く、このクラッカーを口に<してみると〜>(経験を表す、時間の経過がそこに存在)し、その結果、<〜だ>の受け身の動作性を多少とも残しています。更に分かりやすく表記すれば、If/When this cracker is eaten, then you will know it is crispy.=If/When you eat this cracker, then you will know it is crispy.もしこのクラッカーを口にすれば、あなたはそれがバリバリであることを知ることになる。*受動態でも能動態でも同じ意味の文が記述可能であるが故に、確かに<中間>的なのですが、基本的に動作性(する、される)の帰結として、性状が判明するとの、時間的にワンクッションを置いた<結果性>に関する視点が抜け落ちた命名との批判は成立するでしょう。*従って、この様な意味合いを含意していることを踏まえ、塾長は<中間動詞>の名称は排除して、<中間結果動詞 Middle Rusultive Construction>と命名します(新説登場!!)。*同様に、<中間構文>とは呼ばずに<中間結果構文>と命名します。*更にややこしくなったとの批判は受けるかと思いますが、生物学、霊長類学、人類学メインでメシを喰っている英語学素人が妙なことを言い始めたとお笑い下さい。*実際のところは、各動詞に拠りニュアンスの違いが存在し、5文型の様な、学校英語で<まだしも正々堂々、明快>に記述出来る類いの、明確な確固たる構文であるとの定義はしずらいところがあります。*厳密な下位分類を言い出すと、次々に新概念、新理論に基づく用語−失礼乍ら、端からは細分思考の英語学者が自縄自縛で勝手に悶絶している様に見えなくもありません−がそれこそ<生起>してしまいます。能格動詞と中間動詞区分の曖昧性*例えば、前回までに能格動詞として扱った動詞 break に対し、These glass containers breaks easily.これらのガラス容器は割れやすい。=These glass containers can be broken easily.These glass containers are fragile.このガラス製の容器は壊れやすい。の表現も可能であり、この場合自動詞 break は性状を表す動詞、即ち狭義の中間動詞としても機能する、と言えます。しかしこれを過去形にするとThese glass containers broke easily.このガラス容器は簡単に割れてしまった。と、状態の変化を表す動詞、即ち狭義の能格動詞になります。*これから考えると、広義の中間動詞を、狭義の能格動詞と狭義の中間動詞に分類する自体が曖昧性を抱えていることを示します。*以上から、英語学者以外の一般人の方々は、<中間動詞>なる動詞型の考え方、分類も世にはなんだか存在するらしいね、程度の知識を身に付ければ十分かと思います。*実際のところ、ergative verbs 能格動詞の語はまだしも広く知られていますが、middle verb の語でweb に検索を掛けても極く僅かしか情報が得られず、しかも書き手によって定義が少しずつ違う有様!です。*斯かる状況ではとても学校英語にて一般生徒対象に教えられるものではないことが分かります。*と言いますか、上記の塾長の解説を見ても何を言わんとしているのか理解出来ない、とお感じの方々が大多数かと予想します。*一部の研究者が唱えている概念、用語ですね。 |
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他動詞として一般的に利用される動詞が自動詞(<結果受け身>)として機能する例sellWe sell this book a lot. 我々はこの本を沢山売っています。= This book is now being sold a lot in our bookstore. (単なる受動態)This book sells well. この本はよく売れている。= This book is bought well. (状態を表す受動態)*これは本を店先に並べたらその結果として沢山購入されている、との結果を表すとも言えます。cf. sell for = be priced at 〜の価格だUnmodernised property can sell for up to 40 per cent ofits modernised market value.近代化されていない不動産は、近代化された市場価格の最大40%で売却され得る。readIf you refer to how a piece of writing reads, you are referring to its style.ある文章がどのように読めるかを指す場合は、その文体について言及します。The book reads like a ballad.= The book is read like a ballad.この本はバラードのように読める。*その本を読んでみたところ、バラード風だった、との結果を表します。The book reads easily.その本はラクに読める・= This book can be read easily.peelThe orange peeled easily.そのオレンジの皮は簡単にむけた。wearMy coat wore out last winter.私のコートは、昨年の冬、着古されてよれよれになったMy coat wore well last winter.私のコートは、昨年の冬、よくもって呉れた。foldThese chairs fold up easily/quickly/in a jiffy.この椅子は簡単に/素早く/あっという間に折りたためる。washThis jumper washes well.このジャンパーはよく洗濯できる。transferMany of the techniques of scientific management have been developed in private industry and commerce. They do not always transfer easily to the public sector.科学的管理の手法の多くは、民間の産業や商業で開発されてきた。それらは必ずしも公共部門に容易に移行できるものではない。*bureaucratic language (役人の好む言葉)には中間動詞が観察されるとの指摘があります。*中間動詞は行為者、即ち責任者の存在をボカして事物がそうなる、そうなっていると示すのに役立つ用法でもありますので、頷けなくもありません。They do not always transfer easily to the public sector.= We cannot always transfer them easily to the public sector.それらの公共部門への移管は必ずしも簡単ではない。*英語原語が利用されるのが大半ですが、ラテン語由来のtranfer が中間的に利用される珍しい例ですね。cutThis dog food cuts and chews like meat.このドッグフードは、(飼い主が)肉のようにカットして(犬が)噛むことができる。しかるにThis knife cuts well.このナイフは良く切れる。= This knife is/ works well when used.この cut = to do cutting; work as a cutter*ナイフの性状を表しているとも考えられますし、このナイフを使ってみたけど良く切れるなぁ、との結果を表すとも言えます。*ここで紹介した他の動詞が同一内容を受動態で記述出来るのに対し、動詞 cut に関しては、This knife is cut well. (=このナイフは軟弱で他の刃物で切れるぐらいだ、の意味になってしまう) などの表現は取れません。*これを基に道具主語構文と呼称する者もいます。*厳密なことを言い始めると、各動詞毎に〜構文だと主張する細分化に行き着きますが、塾長はその姿勢には感心出来ません。註test= to achieve a specified result in a test検査で特定の結果を得るA quarter of the patients at the clinic tested positive for the AIDS virusその診療所の患者の4分の1がエイズウイルスに対して陽性であった。(この test の自動詞用法は医学部入試等には良く出題されます。)*test positive などの定型的表現として頻用されます。覚えておいて下さい!*ここに、 positive は副詞ではなく形容詞ですので、自動詞 test は中間動詞ではなく、動詞 turn/ prove/ find (〜だと判明する、分かる)の様な SVC 文型を作る linking verb とでも言うべきものです。*勿論、動詞 test には他動詞用法があり、通常は他動詞として利用される場合が殆どです。 |
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