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その他の<構文>10 |
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2025年9月10日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 これまで、日本の文部科学省の学習要項に採りあげられている一通りの構文形式(特殊構文)について解説を加えて来ました。実は、言葉とは生き物ですので、新たな一定の勢力を持つ様式が世に広まれば、それが新たな構文形式として広く認知される筈ですし、実際、現況に於いてあまり注目されていない類いの構文形式も存在しています。これらは学校に於いて明確なカタチで学習指導を受けるものではないものの、実は日常的に頻用されるものがあり、或いは文学作品の中などにも散見されもします。学校英語としてまともに習うことが無い或いは少ないが故に、どうやって文法的に解釈すべきなのか、受験生などの頭を毎度悩まさせもすることでしょう。意味は分かるが文法的にどの様に理解すべきか判断に困る表現−破格ではないのかとの疑問を招く−も実際のところ少なくはありません。 これまで続けて来た構文ネタの1つの括りとして、このような、市井の日本人には明確にその名を知られていない<特殊の上を行く構文>−しかし一定量の英文に触れていれば必ずお目に掛かる筈の<構文>−について整理がてら触れていきましょう。尤も、文法面での解釈については研究者間で必ずしも見解の一致を見ているとは限らないものも含まれますし、その命名分類も恣意的な視点に立つものもあります。native 一般人がその用語、命名を知らず、英語学者が主だって分類命名している概念も存在します。これらの文章構造に対し、それはどの様なシーンや意味合いで使われるのかを分析・考察する類いの学術論文も多々あり、その考察や<新理論>を批判精神に乏しく丸ごと引き継いで日本の英語学者が仕事を始める展開−大学の英語の先生とはこんなことでメシ喰っているのか!−も垣間見ることも出来ます。ここで<構文>と括弧を付けているのは、実は構文そのものとは言えず、寧ろ動詞の機能に付いての分類、即ち動詞型の分類が先に立つものであるからです。・・・ざっとこの様な経緯もあり、学校英語では指導の骨幹としては明確には扱われないとも言えますが、試験(入試)に出して置いて生徒を悩ませるぐらいなら何故最初から定義を与え、簡略で構わないので教えないのかとの疑問も生じますね。まぁ、塾長のコラムをお読みのハイクラスの方々には耳に入れて置いて損なことは全くありません。その第910回目となります。 https://en.wikipedia.org/wiki/Tough_movementhttps://ja.wikipedia.org/wiki/Tough構文The grammar of English predicate complement constructions.Rosenbaum, Peter StevenMassachusetts Institute of Technology. Dept. of Modern Languages. Thesis. 1965. Ph.D.http://dspace.mit.edu/handle/1721.1/7582https://dspace.mit.edu/bitstream/handle/1721.1/16391/03190468-MIT.pdfhttps://kobegakuin.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=256&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1Tough 構文における言語間の相違 服部 亮祐 RyosukeHattori 神戸学院大学人文学人間文化 H & S 50 号 2022. 1 pp.21-30(全文無料で入手出来ます)中村 捷、金子 義明 『英語の主要構文-構文から見た英文法』ISBN 9784327401290 研究社 2002https://www.jstage.jst.go.jp/article/elsjp/81/0/81_KJ00006944286/_article/-char/ja/https://www.jstage.jst.go.jp/article/elsjp/81/0/81_KJ00006944286/_pdf/-char/ja"Pretty構文"再考 : to不定詞句は「余剰」か? (日本英文学会第76回大会報告)南 佑亮 (大阪大学大学院) 英文学研究 81 巻 (2005) p. 254-DOI https://doi.org/10.20759/elsjp.81.0_254_1Lasnik, Howard; Fiengo, Robert (1974). "Complement Object Deletion". Linguistic Inquiry. 5 (4): 535-571. JSTOR 4177842https://www.jstor.org/stable/4177842?seq=1*JSTOR はメール登録すると月間100本まで無料で論文のweb閲覧が可能ですが、見るだけでダウンロードは出来ません・・・。Christopher Barnard 『日本人が知らない英文法』河出書房新社刊、2005大庭幸男 『英語構文を探求する』 開拓社 2011 |
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Tough 構文に類似するものにはどの様なものがあるのか? その4too...to 構文 2*下記の2つの否定表現はあまり利用されません。同じ意味のもっと分かりやすい表現を用いるのが普通です。not too...to do*not too...to do の表現で、<〜するには/出来ないほど〜な訳ではない>、<あまり〜ではない>の意味になります。=not very...to do 〜するにはあまり〜ではない、に簡易に言い換えられます。*Ain't Too Proud To Beg (オレを捨てないで呉れと)お前に願えないほどプライドがある訳じゃあ無い、のタイトルの楽曲は多いです。*too が悪いの意味のマイナス表現+否定の not →マイナスが打ち消し合って肯定の意味=ほどほど〜出来るAmericans are never too keen to leave their beloved country.アメリカ人は愛する国をあまり離れたがらない。=Americans are not very keen to leave the country theylove.I wasn't too happy with what I'd written so far.私はこれまで書いたことにあまり満足していなかった。= I was not very happy with what I had written so far.He won't be too pleased to see you.彼はあなたに会ってもあまり喜ばないでしょう。~ He will not be very pleased to see you.none too...to doAnd she was none too anxious to hear about the show.そして、彼女はショーのことをあまり聞きたがらなかった。= And she did not want to hear much about the show. と平易に書けばそれで済む内容なのですが・・・。too...not to do*too...not to do = too...to not do の表現で、<〜しないにしては〜過ぎる>→<とても〜なので〜しない訳がない>*<too が悪いの意味のマイナス表現+否定の not> →<マイナスが打ち消し合ってゼロ化> → <肯定の意味=とても〜だから出来ない訳がない>或いは、<〜するほど、出来る程に〜とてもだ>= so...as to do, enough to do の意味になります。*こちらの方は、一部の<難関校>の入試に登場し、予備校講師らが得意気に解説を加えるとの毎度の定番(茶番?)ネタになりますね。*一般用法としては目に触れない妙な表現を出して悦に入る、との、本邦英語教育の病理を見る思いです。He's too kind to not lend me $100.彼は親切だから僕に100ドル貸して呉れない訳が無い。= He's so kind that there's no way he wouldn't lend me $100.= He's so kind as to lend me $100.=He's kind enough to lend me $100.彼はとても親切で、私に100ドルを貸してくれるぐらいだ。*英語の他の否定表現と同じく、その場で字面から解釈しようとしても混乱するだけです。*定型的な書き換えパターンを知った上でそれをサッと機械的に実行するのが良い対処方です。*Cambridge, Collins, Longman にはこの用例の掲載はありません。一般的では無い表現とのことでしょう。最初からHe is very kind to show me the way.He is kind enough to show me the way.He is so kind as to show me the way.などと<素直>に、平易に表現するのが普通なのですが。*二重否定的なヒネた意味合いの表現は混乱を招きがちになります。*文法的に正しくは、to not show ではなく、not to show とすべきですが、これに関しては下で説明します。Too Good to Not Believe Guitar Tutorial素晴らしすぎて信じざるを得ない/信じるしか無いギター・チュートリアル= So Good as toBelieve Guitar Tutorial= Good enogh to Believe Guitar Tutorial良くて信じたくなる様なギター・チュートリアル*too...not to/ to not の表現は、too good to not believe の様な定型句(多くは宗教絡み)ばかり目にします。*一般的な表現としては使われないと言う事なのでしょう。cf. 分離不定詞とは*to 不定詞を分割して間に語 (副詞相当語) を挟むのは文法違反 (分離不定詞 split infinitive と言う) とされますが、実際には上の様に、not to do とすべきを to not do などと当たり前に表現されます。*直接に副詞が該当の動詞に掛かる事を明示出来るので文の意味が鮮明化する利点なども確実にあります。*formal な文でもこの意図の為に用いられることは普通に見ますね。*文法書に記述の英語文法が徐々に崩れ、口語での利用→やがては書き言葉での正書法となる、との、いずれの言語にも観察される現象の1つかと思います。 |
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to 不定詞の他動詞の後ろに代名詞を置くのは正しいのか?*tough 構文、too..to 構文、enough...to 構文に於いて、to 不定詞の動詞が主語を目的語とする文で、to 不定詞の他動詞の後ろに代名詞を置いて良いのかの問題、を考察します。*下記論文に詳述されています:Lasnik, Howard; Fiengo, Robert (1974). "Complement Object Deletion". Linguistic Inquiry. 5 (4): 535-571. JSTOR 4177842https://www.jstor.org/stable/4177842?seq=1*tough 構文 This book must take a long time to read. に対して、This book must take a long time to read it. と、to 不定詞の他動詞の後ろに代名詞を添える用法についてですが、気分的に添えたくなるのは理解出来るものの、一種の冗語とも言え、文法的には間違いです。*しかしこの表現に違和感を覚えない native は少なくはありませんし、実際、後ろに代名詞を添える英文は良く目にもします。*日本語で、<この本は読むのに時間が掛かる>、を、<この本はそれを読むのに時間が掛かる>、と念押しするのにも似ていて、ダメ押し表現とも言えますね。*まぁ、頭の中で、後ろが別の文構造(SVからなる構造)として分離している、との扱いの結果でしょう。(This book must take a long time この本は時間が掛かるに違い無い) + (a long time to read it それを読むのに長い時間が).*一文が長く、後ろの to 不定詞以下の纏まりが、文の<前半>と距離的、時間的に離れる場合は、その to 不定詞の他動詞の後ろに代名詞を置く気持はまだ理解出来ますし、それが一般化すれば、<間違いでは無い>、いや<むしろそれが正しい>などと辞書や文法書も掲載し始めることになります。*時間表現 <in those days あの頃は、当時は>は正しいですが、一方、in these day と本来有るべき in を付けると今では8割方の native は不自然と感じるそうです。それと全く同じです。*文法を超越した慣用化の例ですね。それが新たな文法になる訳ですし、その言語現象を説明せんと新理論を振り出す学者も登場する、との繰り返される図式かと思います。*for...to... の場合* 然るに、Lasnik & Fiengo (1974) の上記論文では、以下の2文いずれも文法的に成立するとされています。◯ This problem is too abstract for Bill to solve.◯ This problem is too abstract for Bill to solve it.最初の文は、For Bill, this problem is too abstract to solve. 或いはThis problem is too abstract to solve, for Bill.<ビルにとって、この問題は抽象的すぎて解けない。>、に等しく、これに、it を添えて×For Bill, this problem is too abstract to solve it.×This problem is too abstract to solve it, for Bill.とすると不文になります。*後者の文の、for Bill to solve it に於いては、Bill は for-to 補語文の構文上の主語となり、for Bill が分離して移動することはあり得なません。つまり、書き換えが出来ないことになります。<ビルがそれを解決するには、その問題は抽象的過ぎる。>が和訳になります。*即ち、for...to の中で目的語が有る場合は、それ自体の中に主語(統語的主語)が存在する(=独立した文を形成する)が、一方、目的語が削除されると主語を失うとの解釈になります。*tough 構文では文の主語が to不定詞の目的語となる為、後ろに代名詞を添える事は必ず不文になりますが、too...to.構文、enough...to. 構文では、for...to..とする限りに於いては、後ろに代名詞を添える、添えないのいずれかが取り得る、と言う事ですね。*to 不定詞以下を、別仕立てにして、and (その他の等位接続詞)+動詞、或いは、if 節や when 節に脳内変換する意識の表れにも近いのではと考えますが、実際、塾長も長々と続く文については、to 不定詞以下を別文に仕立てて解釈する遣り方を生徒さんには頻繁に指導しています(to不定詞以下別文化法)。*これは for を伴わずしても、 to不定詞自体に主語の意味合い(統語的主語)を含んでいて独立可能である、との考え方に通じます。*まぁ、to不定詞は単なる添え物ではないとの扱いです。This book must take a long time when reading it. と、主節+従節(節ゆえ各々が完全文になる)に分ければ、正しい英文になりますし、逆にこの文にて it が無いと不文になります。*上でも触れましたが*tough 構文、enough...to 構文、too...to 構文では、虚辞 there を for の次に従えて意味上の主語として扱う事は一部の文法家からは不文とされます。*しかし実際には、時にその様な文を見ますし、また整序問題を扱う学習参考書などに掲載されることもあります。(尤も、塾長は矢張り感心出来ません)*因みに、It is....for there to be ...の構文は問題なく成立します。to 不定詞の自動詞の後ろの前置詞を省くのは正しいのか?The room was too noisy for her to study.部屋がうるさくて彼女は勉強どころではなかった。*主語の the room は to study in the room の関係に有り、正しくはThe room was too noisy for her to study in.と有るべきと考えますが、in なしで正しいとされます。*これは youtube に native が公開している too to 表現の解説サイトに掲載の文例です。*これは代名詞を添える添えないの問題とは異なり、前置詞を添える添えないの問題になります。*in が無くとも <その場所では勉強が出来ない>の意味である事は正しく通じます。*明らかに不文となる it 付けが正しいものとして通用することと同様、前置詞の有無の問題からも、一般の native 自体が結構いい加減な表現の上に英語を話していると言う実態が見て取れます。*予備校講師らが毎度したり顔で用例を出す、<This pond is dangerous to swim in. の例文で最後に in を入れないと間違いだ>、との指摘ですが、これも in 無しで実際には間違いとも思われないでしょう。*但し、教養を疑われるケースもあり得るでしょう。*日本語の受け身表現で、<ら抜き言葉>が頻用され、塾長自らも普段は頻用しますが、よそ行きの場では用いません。*本当はマズいと知っていて破格を使うのがまだしも宜しいようで・・・。-------------------------------注意:*tough 構文、また、 enough...to 構文、too...to 構文では、S+V+IO+DO 文型の間接目的語、即ち IO を抜き出して主語に据える事が出来ません。*この現象は It is...that の強調構文に於いて、IO を強調することが出来ないのと似ていますね。*まぁ、間接目的語の前方への抜き出しは一般的に避けられると考えて下さい。◯ John was tough to give criticism to.ジョンは批判を浴びせるにはタフだった◯ John was tough enough to give criticism to.ジョンは批判するのに十分タフだった。◯ John was too tough to give criticism to.ジョンは批判するには手ごわすぎた。以下は不文です。× John was tough to give [him 元はここに] criticism.× John was tough enough to give [him 元はここに] criticism.× John was too tough to give [him 元はここに] criticism*しかし実際のところは、正文の最後の前置詞を省略した形として、上記不文とされる構文に一致する例も多いです。*こうなると、上記不文の例文が間違っていると強く主張する事も出来ないわけです。 |
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