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その他の<構文>11 |
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2025年9月15日 皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。 これまで、日本の文部科学省の学習要項に採りあげられている一通りの構文形式(特殊構文)について解説を加えて来ました。実は、言葉とは生き物ですので、新たな一定の勢力を持つ様式が世に広まれば、それが新たな構文形式として広く認知される筈ですし、実際、現況に於いてあまり注目されていない類いの構文形式も存在しています。これらは学校に於いて明確なカタチで学習指導を受けるものではないものの、実は日常的に頻用されるものがあり、或いは文学作品の中などにも散見されもします。学校英語としてまともに習うことが無い或いは少ないが故に、どうやって文法的に解釈すべきなのか、受験生などの頭を毎度悩まさせもすることでしょう。意味は分かるが文法的にどの様に理解すべきか判断に困る表現−破格ではないのかとの疑問を招く−も実際のところ少なくはありません。 これまで続けて来た構文ネタの1つの括りとして、このような、市井の日本人には明確にその名を知られていない<特殊の上を行く構文>−しかし一定量の英文に触れていれば必ずお目に掛かる筈の<構文>−について整理がてら触れていきましょう。尤も、文法面での解釈については研究者間で必ずしも見解の一致を見ているとは限らないものも含まれますし、その命名分類も恣意的な視点に立つものもあります。native 一般人がその用語、命名を知らず、英語学者が主だって分類命名している概念も存在します。これらの文章構造に対し、それはどの様なシーンや意味合いで使われるのかを分析・考察する類いの学術論文も多々あり、その考察や<新理論>を批判精神に乏しく丸ごと引き継いで日本の英語学者が仕事を始める展開−大学の英語の先生とはこんなことでメシ喰っているのか!−も垣間見ることも出来ます。ここで<構文>と括弧を付けているのは、実は構文そのものとは言えず、寧ろ動詞の機能に付いての分類、即ち動詞型の分類が先に立つものであるからです。・・・ざっとこの様な経緯もあり、学校英語では指導の骨幹としては明確には扱われないとも言えますが、試験(入試)に出して置いて生徒を悩ませるぐらいなら何故最初から定義を与え、簡略で構わないので教えないのかとの疑問も生じますね。まぁ、塾長のコラムをお読みのハイクラスの方々には耳に入れて置いて損なことは全くありません。その第11回目となります。 https://ja.wikipedia.org/wiki/結果構文https://en.wikipedia.org/wiki/Resultativehttps://justpublishingadvice.com/resultative-adjectives/https://en.wikipedia.org/wiki/Absolute_constructionChristopher Barnard 『日本人が知らない英文法』河出書房新社刊、2005大庭幸男 『英語構文を探求する』 開拓社 2011中村 捷、金子 義明 『英語の主要構文-構文から見た英文法』ISBN 9784327401290 研究社 2002 |
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結果構文 Resultative constructions*塾長のコラムをお読み戴いている方々からは、また妙な名称の構文登場か、もういい加減にして呉れ、とのお叱りを受けそうですが、何分このコラムを執筆している塾長本人も辛いと言うことをお察し戴ければと切に願うところです。*あと数回で<なんとか構文>の話には一度ケリを付けますのでご容赦を!*さて、英語の特徴として、完成された文の最後に、同時発生的に付帯的に起きていること(同時性)、主文が成立する理由(前時性)、或いは時間的には逆にその結果としてもたらされた事(後時性)を示す語句を添えて、更に完全文をスーパー完全文とする言語現象が通常のこととして観察されます。*塾長コラムでも優れたものとして頻回採りあげている動画に、ニック式英会話がありますが、そこで主宰者のニックさんが「ちょい足し」英語と絶妙な命名を行って居る英語現象がそれに当たります。*分詞構文などもその一種で、基本は、主文 (=主節)に対しての、時間的な同時性(付帯状況)、その前(理由の開陳)、その後(帰結)を表す表現ですね。*これは、読み手側が文脈からいずれかを判断してくれとの、半ば責任を放棄した様な表現であり、明確な論理展開で書き手側の考えを開陳する表現法では無い為、学術論文では利用が控えられる事はこれまでに触れて来たところです。*同様に、文末に語句を追加で添える用法は、基本的に口語表現であり、意味の曖昧性を完全に排除出来るものではないことがお分かり戴けると思います。*この内の、後時性の意味合いを持つ表現の内の或るものを結果構文と名付けて解析が加えられている、その様にご理解戴ければと思います。*結果構文に関しては、大庭幸男氏が 『英語構文を探求する』 開拓社 2011 にて、60頁を割いて詳細な解析を行っていますので、興味のある方はご一読下さい。*それだけの頁を割いていると言う事は、<結果構文>が一筋縄では行かない多義性、構文作成上の揺らぎを多く抱えていることの裏返しであるとも言えましょう。*ここでは単文の表現のみを扱うこととし、例えば so...that の様な構造の文は扱いません。---------------------------------------------------結果構文とは何なのか?結果構文として毎度登場する例文、He painted the wall red.彼は壁を赤く塗った。*この文は、He painted the wall. なる完全文の後ろに、 red を<ちょい足し>した構造です。*文型としてはSVO + Cであり、OとCがSVの関係になります。*Cには形容詞、前置詞句を一般的に取りますが、名詞(句)も含めた文を結果構文として見倣す者もいます。*SVOCの文型を取るが、Vとして普通はそれを許さないVが利用されている場合、結果構文と判断するのも良いでしょう。*Cには現在分詞と過去分詞は取れません。*即ち、動作性を残す可能性のある語は使えず、飽くまで事象の静的な状態を描写出来る純形容詞、またそれに相当する前置詞句が利用出来るということですね。*<まずはペンキを塗る行為を行い、そうした結果として壁が赤くなった>と、時間の前後性が存在すると解釈は出来ますね。*しかし、淡々とした結果なのか、実は目的であったのか、意味の曖昧性は残りますしそれを語る文でもありません。*第三者の視点からは、彼は壁塗りをしていた、そして壁は赤く仕上がった、の事象のみが描写される表現です。=He painted the wall and anyhow it turned red.彼は壁にペンキを塗り、とにかくそれは赤くなった。*〜したらそうなっていた、ですね。*難しく言えば、<動詞によって示される出来事の完了によって生じる名詞の状態を示す>構文です。*なんと言う事は無い、要は<結果>です。即ち、He painted the wall and after some trial and error the wall turned red.彼は壁にペンキを塗ったが、試行錯誤している内に壁は赤くなった。(そうなってしまったとの偶発の結果、出来事の陳述)He painted the wall with the intention of making it red.彼は壁を赤くしようと最初から意図してペンキを塗った。(意図)のいずれなのかまでは何も語っていません。*文脈などから正しい解釈を行う必要が出て来ます。*更に無理遣り解釈すれば、以下の様にも解釈可能です。He painted the walls with a bright red face.彼は真っ赤な顔をして壁を塗った。(red は主語 he についての記述)*これから即座に分かりますが、<結果構文>なる用語は、確かに事象としての客観的な結果を表面的には意味するものの、それ以上の意味を持たず、意味内容に曖昧性を排除し得ないと言うことになるかと思います。*逆に言えば、文脈や文自体の意味合いから、偶然なのか、意図的即ち使役なのかのいずれかの意味を強める場合があり得るとの話です。*口語表現としては許容されるにしても、これでは学術論文などにはとても利用出来ません。*まぁ、単純で寸足らずなもの言いと言えましょう。*因みに、to paint the town red の表現で、(バーやクラブで)どんちゃん騒ぎをする、との idiom になります。*同様な結果の表現としてHe pounded the metal flat.彼はその金属を平らに叩いた。*これもHe pounded the metal and it turned into flat.なる意味の淡々とした描写に留まります。He tapped the metal, but after some trial and error itflattened out.彼はその金属を叩いたが、試行錯誤している内にそれは平らになった。或いはHe struck the metal with the intention of flattening it, andhe did so successfully彼はその金属を平らにしようと意図してそれを叩いたが首尾良くそうできた。までは語りません。無理遣り解釈すれば、以下にもなり得ます。He struck that metal with a floppy posture.彼はペタンコの姿勢でその金属を叩いた。*the wall is red, the metal is flat が成立しますので、上で述べたようにSVOC 文型であると理解出来ます。*強力で明確な意図を持つ使役動詞 make の域にまではとても到達しない、弱腰、半端な使役風表現であると考える事も出来ます。*まぁ、一種出来損ないの、曖昧性を抱えた使役表現との理解です。*SVO + and as a result O turns into C. にさっと書き換えて、取り敢えず!逃げるのも手かと思います。*好きな動作動詞を用いてSVOC を作り、結果構文に仕上げるのも面白そうです。*英作課題でこれを使うと採点者側は、おいちょっと待てよとばかりに用例集 corpus (コーパス)を鵜の目鷹の目で探ったりで焦るでしょうね!It's an ill wind that blows nobody good. (俚諺)= An ill wind blows nobody good.= There is an ill wind that blows nobody good.誰にも為にならない悪い風が吹くこともある。→(ウラを返して)悪い風でも誰かの為になることがある。Even the worst wind can be good for someone.=風が吹けば桶屋が儲かる。*風が吹いた結果、nobody is good の状態になるとの一種の結果構文です。*風は自然現象であり、意図を持ちませんので、これは偶然の方の結果だと判断出来ますね。*即ち、<ある1つの不吉な風が吹いた結果、たまたま全員の具合が悪くなることもある>、を意味します。*文型としては動詞 blow を用いて SVOC の形を取りますが、こちらも使役動詞 make などの超劣化版と考えると分かり易いでしょう。 |
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結果構文の他の例-----------------------------------------*補語 C に形容詞を使う例He cooked the meat rare.彼は肉を焼いたがレアだった。*意図してレアに焼いたとも解釈出来ます。She rinsed the glass clean.彼女はグラスを洗ったが、グラスは綺麗になった。*意図してグラスが綺麗になる様に洗ったとも解釈出来ます。John licked his plate clean.ジョンは皿をきれいに舐めた。(ジョンは皿を舐めたが、その結果皿は綺麗になった。)Mary painted the fence blue.メアリーはフェンスを青く塗った。(メアリーは塀を塗ったが、その結果塀は青くなった。)The cold weather froze the lake solid.寒波が湖を凍らせた。(寒波が湖を冷やしたが、その結果湖は凍った。)*自然現象ですので意図は存在しない筈です。He folded the carton flat.彼はダンボールを平らに折りたたんだ。-----------------------------------------*受動態にも出来ます:His plate was licked clean.彼の皿は舐められて綺麗になった。The fence was painted blue by Mary.その塀はメアリーに塗られて青くなった。The well was drained dry.井戸の水は抜かれて涸れた。A line of cars are all painted black車は一列皆ペンキで真っ黒だぜ。-----------------------------------------*自動詞表現も取れます:The door swung open.ドアが揺れて、その結果開いた。*この場合は非態格動詞(=事象を表す自動詞)が使われます。The water froze solid.水が固く凍った。*非能格動詞の主語を使い結果構文化出来ますが、この時には再帰代名詞が必要になります。Gordon laughed himself helpless.ゴードンは自身を笑ったが、その結果気が抜けた。The girl screamed herself hoarse.その少女は叫んだが、その結果声が嗄れた。-----------------------------------------*補語Cに前置詞句も使う事が出来ます:Mary cut her child’s birthday cake into eight pieces.メアリーは子供の誕生日ケーキを8つに切り分けた。*ケーキを切ったら8つになった、のではなく、ここでは8つに切り分けるとの明確な意思の結果であると<常識的判断から>解釈出来ますね。*この様に、結果構文には、事象として淡々とそうなったのか、意図が有ったのか、の解釈の余地、曖昧性を残している表現であることが改めて分かります。-----------------------------------------*補語 C に名詞(句)を据えることも出来ます:She dyed her hair a bright pink.彼女は髪を鮮やかなピンク色に染めた。*但しこの文で不定冠詞 a を除去すればそのまま形容詞扱いになりますので、名詞(句)を堂々と取れると主張できる程の強さは持たないと言えそうです。-----------------------------------------cf.to 不定詞を結果の形容詞代わりに使うこともできると主張する者も居ます。https://justpublishingadvice.com/resultative-adjectives/このブログの例文に拠ると、We used a larger font to make reading easier.読みやすいようにフォントを大きくした。(大きなフォントを使い、その結果読むのを容易にさせた)She gathered enough courage to speak in public.彼女は人前で話すのに十分な勇気を振り絞った。(彼女は勇気を振り絞り、その結果人前で話した。)*しかし、結果構文が補語として動作性とは無縁の純形容詞や前置詞句を当てることから考えると、動作性を色濃く残す to 不定詞をそれに当てたものを結果構文として考えるのはとの考えは間違いでしょう。*これらは普通は目的用法の to 不定詞、或いは結果用法のto不定詞として理解されるものです。*結果風に解釈可能ではあっても結果構文ではありません。 |
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