2019年6月20日
皆様、KVC Tokyo 英語塾 塾長 藤野 健です。
前回に続きます。
日本語の文章構造:超初心者向けガイド(塾長和訳)
文章構造の英語 vs.日本語
殆どの方は、日本語は文章構造が難しくて頭がこんごらがるものだと知るようになるでしょう。日本語が他の言語とは根本的に違っていることを考えれば全くもって理解できることです。ですが、日本語の文法は正しい視点からみれば実際には信じられないほど論理的なのが真実なんです。
一般的には日本語の基本構造はSOV だと考えられていますね。主語−目的語−述語の順です(例:ワタシ−スシ−タベル)。この記述法は、SVO 構造に従う英語と比較するのを容易にします。しかし本当は、この2つの言語は全く異なる遣り方で機能するものゆえ、この様な比較は殆ど意味がありません。SOV のレッテルを貼るのも時には誤りで、と言うのは、主語Sの前に目的語Oが現れるのは日本語では全然稀では無いからです。うぅ〜ん、マジでますます混乱してきた・・・。
日本語の形をした杭を英語の形の穴に無理に当てはめようとするのは止めて、もう一度考えてみましょう。
最初に、英語では、文章の主要なカケラは決まった順序に置かれます。何か動作を行おうとする人(主語、例:I、ワタシ)が最初に来て、その動作を記述する言葉(述語、例:eat タベル)、更にその動作が為されるもの(目的語、例:スシ)が続きます。英語では誰が何をしたのかを述べるのは語順なのです。日本語の文章は助詞と呼ばれる文法マーカーが縁取って構成されます。各助詞は、その前に並ぶ単語が文中でどの単語−たいていは動詞−に対してどの様に関与するのかを示すのです。動詞は文末に現れますが、各単語の順序は、誰が何をしたのかを述べるのは、語順では無く助詞であるが故に、変動可能です。例えば、文章内容が話題を採り上げる場合(これはしばしば主語に等しい)は「は」が続き、目的語には「を」が、そして最後に動詞が続くのです。基本的な語順ゆえに日本語はSOV言語だとしばしば考えられますが、単語に適切に助詞を組み合われば単語の実際の順序は変えて構わないのです。
語順で言語を把握する方法論が、日本語では当てはまらない、別の概念で捉えれば、日本語は合理的な言語体系であって、基本構造はいとも簡単に理解ができる、との簡潔明快で優れた指摘です。
日本語が膠着語であることを考えると、動作主体や話題提示に関しても、それらが動詞(述語)を取り巻く修飾的概念の中の対等な要素に過ぎないことが理解できます。これは常に<動作主体+述語>の組み合わせを確たる配列のコアとして、物事を把握して世界認識を行う言語体系とは丸で違った認識で世界を捉えていることに他なりません。ある意味、「動作内容、物事の状態」を記述する概念がメインの言語とも言えそうです。「あぁ、静かだ」と言えば、何が静かなのかはさておいて、自分の周りが静かであることをまず感じ取り、第一に叙述する意識ですね。繰り返しますが、動作主体、即ち欧米語の主語相当語は、日本語では動詞(述語)を取り巻く要素の1つに過ぎない訳です。
日本人はどれが動作の主体主語或いは話題として採り上げる主題主語かを弁別する意識薄く (だから主語に関する論争が起きたまま!)、逆に欧米語に翻訳する過程でそれらが明確に浮かび上がるところもありますね。
例えば前々回の@にて例示した文章 「太郎には 才能がある。」 ですが、太郎と才能のいずれかを主体主語扱いにして英語、即ち動作の主体に「拘る」言語の1つにて表現すれば、
As to Taro, a great talent is noticiable/ recognized. 太郎に関しては、才能が認められる。
Taro is endowed with a great talent. 太郎は才能をもって生まれた。
と言うところでしょうか。全然別の言語体系に接し、その言語体系の元で元の概念を把握し直すと、元の概念を明確化させて捉えることも出来ます。これが日本人が欧米語を学習することの最大の利点かもしれません。
日本語が欧米語の様な主語・主体優勢言語とは明確に異なるものであることは確かであり、英語に苦手意識を持つ日本人が多いのも、この様な本質的な言語表現法、そしてそれを裏で支える発想法の大きな違いが作用していそうに見えます。ちょっと大仰に言えば脳機能の違いですね。脳内変換がその都度必要な訳です。単に語順が違っていて配列し直せば済むような問題ではありません。
だいぶ前の話になりますが、塾長が初めて英語に触れた中学1年生の時に、どうして英語はいちいち主語を明記する、なんと面倒臭くてくどい言葉なのだろうと感じていたことを思い出しました。教員が欧米語と日本語の主語概念の違いを説明してくれていたら、英語学習にまつわるこの様なもどかしさも幾ばくかは軽減されていたろうにと思います。
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